1.児童福祉司とは
児童福祉司とは、児童相談所に置かなければならない職員のことです。市町村などの自治体に所属する児童相談員です。児童福祉司は、児童福祉法で定められており、保護者や児童からの相談やサポートができます。
児童福祉司になるには、決められた試験などはなく『任用資格』に合格する必要があります。
児童福祉司の職に就いて初めて『児童福祉司』と名乗れることが任用資格といいます。
勤務先が、公的施設となるためまずは地方公務員試験に合格することが前提としてあります。その後、各施設の試験に合格する必要があります。
全国に200ヶ所以上の児童福祉施設があり現在は2,000人ほどの児童福祉司の職員がいます。
2.児童福祉司の仕事とは
児童福祉司の仕事は、福祉の手助けが必要な子どもや保護者から、心身の障がいや複雑な家庭環境、虐待などから対策を考え援助する仕事です。
相談者から話を聞き、置かれている状況を調査、専門家の手を借り立ち直れるよう適切な対応ができるようにします。
主に児童相談所で勤務します。子どもの目線に立ち、寄り添いながら同じ目線で話が出来る人が求められます。子どもたちが抱える問題が子ども自身で理解できていない場合もあり、それを察し思いやりをもって接する必要があるでしょう。
児童福祉司として接するのは、子どもたちだけではありません。保護者からも不安や悩みを聞くこともあります。慢性的な疾病や虚弱体質の児童に対してのケア方法などは看護師経験を活かしたアドバイスやサポートができることでしょう。中には講演会や巡回相談も行います。
3.児童福祉司になるには
児童福祉司になるには、《社会福祉主事》の資格を持ち、任命を受ける必要があります。
社会福祉主事は、都道府県・市に福祉事務所を設置する際に置く必要がある職のことです。
社会福祉主事任用資格ともいい、その任用要件を満たす必要があります。
求められる人物像に、“年齢が20歳以上の地方公共団体の事務吏員又は技術吏員であって、人格が高潔で、思慮が円熟し、社会福祉の増進に熱意があるもの”とされています。
【任用資格の要件】
○都道府県知事の指定する児童福祉司等養成校を卒業、又は都道府県知事の指定する講習会の課程を修了した者
○大学で心理学などを専修する学科等を卒業し、指定施設で相談援助業務を1年以上に従事した者
○看護師、保健師、教員、保育士、児童指導員(各必要実務経験年数あり)として指定施設における実務経験1年以上従事。講習会受講した者
○社会福祉士 又は 精神保健福祉士
○社会福祉主事として2年以上児童福祉事業に従事した者
○上記と同等以上の能力を有する者であって、厚生労働省令で定めるもの
任用資格の要件を満たし、地方公共団体の公務員が児童福祉司に任されてはじめて名乗れるようになります。
※自体により地方上級福祉職の年齢制限が入る場合があります。
■地方上級福祉職を受ける
◎各地自治体によって異なる場合があるため、詳しくは地方自治体へ問い合わせが必要です。
(1)申込日程
(申込受付期間)4月下旬~6月上旬
(受験案内配布)4月下旬
(2)1次試験
日程:6月下旬
・教養試験40題(選択型)
・専門試験40題(択一型/※全問必答)
または
・課題式論文
◎1次試験合格者発表:7月上旬~中旬
(3) 2次試験
日程:7月下旬~8月上旬
・個別面接
・集団面接/集団討論(自治体による)
・適性検査
・健康診断(自治体による)
※地方によっては3次試験まであり。
(4) 最終合格発表
・8月上旬
(5) 更新と資格の交付と登録
なし
(6) その他
・地方公務員に合格し、その職務に就くときのみ効力を発揮します。
【資格団体】厚生労働省
4.児童福祉司をとるのは難しい?
児童福祉司は他の試験のような資格がありませんが、難易度は高いと言えます。
まず児童福祉司になるための地方上級福祉職の試験が難関です。
1次試験である筆記試験は、出題が、『一般教養』『専門試験』に分けられます。その中でも『専門試験』試験40問は全問必答が課せられています。
うち、20~25問は「社会福祉概論」がほとんど占められています。
<出題分野>
社会福祉概論、社会保障、社会学概論、心理学概論、社会心理学、社会調査 等
原則として問題が非公開とする自治体が多く出題内容を予測することが困難を極めます。多くは、社会福祉士の国家試験問題と出題範囲が重複している部分もあり、試験勉強には社会福祉士の内容を勉強することが近道だといえます。
その為、任用資格の要件を満たすことと地方公務員『福祉職』の試験に受かることが必須条件です。両方を働きながら取得することはかなり難関だといえます。
ですが、今後児童福祉に関わりたいという看護師さんにとっては挑戦した方がいい分野だといえます。
5.児童福祉司をとる事のメリット・デメリット
正看護師、准看護師に隔てなく得られる資格のひとつです。看護師の資格の中では正看護師のみと指定がある資格も多いので、准看護師であっても受けられる資格大きなメリットといえます。長い時間をかけて任用資格を受ける価値はあるといえます。
児童福祉司で求められることは、専門的な知識と知識を活かし実践する能力です。児童と保護者に携わることから、コミュニケーション能力も必須ともいえるでしょう。それらを活かすことができる看護師さんは十分活躍が見込めることでしょう。
デメリットと挙げるとすれば、地方上級福祉職を受けるために年齢制限が設けられていることです。早くの決断が必要となり、地方自治体によって異なりますが、“30歳が上限“と認識しておいたほうがいいでしょう。ただ自治体によっては『社会人経験者枠』を設けている場合もあるため一概には言えないところがあります。
児童福祉施設で働くということは看護師としての仕事もありますが、多くは児童に関わることで“保育士業務”も携わってくるということです。児童の健康管理だけに専念できるわけではありませんので、覚悟が必要といえます。
ただ、児童福祉施設に看護師がいるという安心感は、そこに通う児童や保護者にとって大きな安心感につながりますので歓迎されているといえます。
6.児童福祉司の現状と今後
とくに小児科勤務をしてきた看護師さんは、保護者からの慢性的な疾病や病院に連れていくかどうかなどの判断などを相談されることがあります。その点は現状の仕事が十分に生かせ、今まで培った経験が活かせることもあわせ満足度の高い仕事ができることでしょう。
「児童福祉司」を続けていくと、「児童福祉司(スーパーバイザー)」を目指すことができます。平成31年には『子ども家庭専門相談員(仮称)』という国家資格が新設される予定です。今後、児童福祉を手厚くするには児童福祉司という経験は欠かせないものとなるでしょう。
少子高齢化が進むなか、子どもへの福祉に注目が集まっています。その中で児童福祉という役割は年々ニーズが高まってきています。少子化が進む中、児童相談所への相談件数は増加しつつあるため、今後の児童福祉司としての役割は高まっていくことでしょう。