1.医療メディエーターとは
話し合いの場を設定し、双方の意見を聞いたうえで状況を解決に導くために仲介することを「メディエーション」と言います。医療メディエーターは、医療の現場において、医療事故が発生した場合や患者と医療者側が意見の食い違いを起こした際に仲介役を担います。
2007年に創設された社団法人日本医療メディエーター協会が実施する養成教育プログラムを受講することで医療メディエーターと名乗ることが許されるようになります。
毎年1,000人近くが講習会に参加し、その知識を取得しており近年では人気の分野です。
2.医療メディエーターの仕事とは
医療メディエーターのみを仕事にしている人は現状ほとんどいません。
看護師、助産師、医師、薬剤師など医療スタッフとして働いていく中で、医療事故やトラブル、患者からのクレームが発生した場合に、当事者同士の良好な関係を作り直していく役割が医療メディエーターの務めなのです。
院内で働く立場でありながら、第三者の視点で話し合いの場を設けて両者の話に耳を傾けなければなりません。
あくまでも対話促進の役割なので、患者や医療側のどちらかを弁護する、解決策を提案するといったことはありません。裁判などの法的な解決に関わる事はなく、患者と医療側が直接対話するときの架け橋となる仕事です。
3.医療メディエーターになるには
【受講資格】・医療機関に従事していること・医師、看護師、助産師、薬剤師等の資格有無に関係なく受講可能【資格取得の流れ】(1) 養成教育プログラム申込み→ 協会ホームページに掲載されている中から希望の施設を選択のうえ申込み受講料:30,000~40,000円(受講内容により異なる)受験地:全国各地(詳細→ http://jahm.org/pg238.html)(2) 養成教育プログラム受講(3) 入会手続き年会費:6,000円《入会資格》・医療メディエーション研修基礎編を16時間受講済である者・基礎編受講※5年おきに更新手続きが必要《更新条件》・医療メディエーターとしての活動を実践していること・年会費を納入すること【資格団体】社団法人 日本医療メディエーター協会(HP→ http://jahm.org/) 4.医療メディエーターをとるのは難しい?
医療メディエーターになること自体はまったく難しいことではありません。
資格ではないので、受験は必要なく協会が指定する講習会を修了すれば医療メディエーターとして認定を受けることができるのです。
しかし5年おきの更新が必要で、その際には医療メディエーションの知識を活用、実践していなければ更新手続きはできません。
一度「認定を受けたから終わり」ではなく、継続して知識を構築していくことが重要になってくるでしょう。
養成教育プログラムを修了後、メディエーションの普及に繋がる研修会や行事を開催してみるなど、施設へ積極的に提案し出来る範囲で動いてみることが大切です。
認定証を受け取ってから、活動していく中で難しさを感じることはあるかもしれません。
5.医療メディエーターをとる事のメリット・デメリット
医療メディエーターになるメリットとしては、チャレンジのしやすさが挙げられます。
医療機関に従事し、養成教育プログラムを修了すればだれでも医療メディエーターになれるのです。その反面、給与面でのメリットはあまり見込めません。
もちろん施設によっては手当がもらえる場合もあるので一概には言えませんが、給与面をランクアップさせることが目的であれば、医療メディエーターへの挑戦は考え直した方が良いでしょう。
しかし医療メディエーターの知識を得ることは将来的に役立つこと間違いなしです。
紛争構造の分析手法や対話促進技法などを学ぶことによって患者の気持ちがよりわかるようになります。さらにクレームへの対応力やトラブルを肥大化させないための対話力、傾聴スキルが磨かれるなどスキルアップにつながることもメリットといえます。
6.医療メディエーターの現状と今後
日本の医療業界では、長年にわたり看護師をはじめとする医療の人員不足が課題となってきました。
しかし、医療スタッフが少ないにも関わらず病床数の多い日本は国民が医療へアクセスしやすい状況なのです。一方で国民皆保険制度や高額医療費控除制度によって、世界でもトップクラスの質の高い治療を受けられることが評価されています。
結果的に、医療スタッフは多忙で一人ひとりの患者へ十分は時間が割けないにも関わらず、患者の医療への期待値は高いというギャップが発生しています。
このような背景から、医療メディエーターの存在を求めている医療施設は増えてきています。
実際に医療メディエーターを設置した病院から「クレーム発生後から解決までの時間が短縮された」「クレーム数が圧倒的に減った」などのクチコミにより、認知度も高くなってきています。国家資格ではありませんが、これからさらに活躍の場が増えると予想されている医療メディエーターの知識を取得しておくことは、今後の看護師人生の中で大きく役立つことでしょう。