看護専門学校卒は看護大学卒よりも就職に不利になる?それぞれのメリット・デメリットを解説!

看護師の道に進むときに、「看護大学に進むべきか、それとも看護学校の方がいいか?」と悩む人は、多いかもしれません。看護専門学校卒は、看護大学よりも就職に不利と言う人もいますが、その一方で「看護専門学校でも十分に看護師としてやっていける」という話を聞くこともあります。看護専門学校と看護大学は、いったいどこがどう違うのでしょうか?看護大学、看護短期大学、看護専門学校それぞれのメリット・デメリットについても解説します。
看護専門学校と看護大学の違い
学費が違う
卒業までの学費は100万円~700万円と幅広い
看護大学と看護専門学校との大きな違いは、まず学費が違うことです。学費の負担を考えて、看護専門学校を選ぶ人は少なくありません。
看護大学の学費は、国公立か私立かによってかなり違います。私立の看護大学の学費は、4年間で500万円~700万円ほどかかります。「普通の私立大学の学費よりも高い」と思うかもしれませんが、看護の場合は病院や大学内で使う機器が高額で、設備や施設にお金がかかるため、どうしても学費が高くなってしまいます。
それに対して国公立の看護大学の学費は、4年間で200万円~300万円ほどと、私立に比べてだいぶ安くなります。しかし、私立の看護大学は設備やカリキュラムが充実しているため、あえて私立大学を選択する人もいます。
一方、看護専門学校の学費は、3年間で100万円~300万円ほどかかります。学校のカリキュラムの内容によっても、金額にだいぶ差があります。
看護奨学金などを利用して、実質的に安い学費で学ぶこともできる
看護大学や看護専門学校の学費の高さに、思わず頭をかかえてしまった人も、いるかもしれません。しかし、看護学生には「看護奨学金」という、強い味方もあります。これは、学生が卒業後にその病院に勤務することを条件に、病院が学費の援助をしてくれるというものです。3年間で180万円ほどのサポートが受けられる場合もあり、学費の面で大きな助けになります。
また、地域によってはさまざまな奨励制度もあります。たとえば神戸市立看護大学には「市内就職奨励金制度」があり、市内入学生が市内医療機関などに就職した場合は、入学金が実質無料になります。
卒業するまでの年数が違う
看護大学は卒業するまでに4年かかりますが、看護専門学校は3年で卒業となります。たった1年の違いですが、「3年間と4年間ではだいぶ違う」と考える人もいます。
勉強する内容が違う
看護大学は4年制なので、看護の専門科目以外に一般教養もしっかりと学び、幅広い教養を身につけるカリキュラムになっています。それに対して看護専門学校は実習が多く、実践重視のカリキュラムが組まれています。
取得できる資格が違う
看護大学では看護師・保健師・助産師の資格を取得できますが、看護専門学校で取得できるのは看護師の資格のみです。
就職後の給料が違う
就職後の給料は、やはり看護大学の卒業生の方が少し高くなっています。2022年日本看護協会の「2022年病院看護・助産実態調査」によると、新卒の看護師の初任給は大卒が27万1,730円、専門学校卒が26万3,771円で、約8,000円の差があります。
ただし、看護師の給与の差は大卒か否かというよりも、どの病院に勤めるかで大きく変わってきます。
看護専門学校生は看護大学生よりも就職に不利?
就職後の出世や待遇に差が出る
看護師さんが経験を積んで看護師長・看護部長へと出世していくにあたって、規模の大きな病院の場合は、看護大学を卒業した人を優先させる傾向があります。
待遇については、大卒の方が専門学校卒より基本給で月6,000円~7,000円ほど高くなります。たった数千円の違いですが、10年・20年とその給与差が続くことを考えると、長い目で見て大きな違いになってきます。
有名な病院に就職したいなら看護大学卒の方が有利
病院によっては、看護大学を卒業した看護師さんを優先的に採用する場合があります。たとえば聖路加国際病院や順天堂大学病院などのように、大学系列の有名病院への就職は、看護大学を出ていないと厳しいのが現実です。
専門看護師を目指すなら看護大学卒の方が有利
専門看護師の資格を取得するには、大学院に進学する必要があるため、基本的には大学卒の看護師を対象とした資格です。専門学校卒でも放送大学などの通信制大学で看護学士の学位を取るか、大学院独自の審査に通れば受験資格を得られますが、看護大学を出ている方がスムーズに大学院に進学できます。
看護師としてやっていく上では看護専門学校卒でもまったく問題ない
看護大学卒と看護専門学校卒の違いをいろいろとお伝えしましたが、実際のところごく普通に看護師としてやっていく分には、看護専門学校卒でも何ら問題はありません。
看護の現場では、むしろ実践に強い看護専門学校の卒業生の方が、活躍できるケースもあります。「大学病院に勤めたい」「看護部長になって出世したい」といった希望がなければ、看護専門学校でも十分にプロフェッショナルとしてやっていけるでしょう。
看護大学・看護短期大学・看護専門学校のメリット・デメリット
看護大学のメリット・デメリット
看護大学では4年間かけてじっくりと看護学を学ぶことができ、さらに一般教養も学ぶことで、社会人としての見識を広げることができます。看護師としてやっていくだけでなく、研究の道や看護学の教授になる道も開かれており、自分の可能性の幅を広げることができます。
ただし、学費が高いのは、やはり大きなネックです。700万円近くもかかる看護大学の費用を捻出するのは、並大抵のことではありません。また、就学の年月も看護専門学校より1年間多いので、できるだけ早く就職したい人は、看護専門学校を選ぶ方が賢明です。
看護短期大学のメリット・デメリット
看護短期大学は3年制ですが、看護大学と同じように一般教養も履修し、卒業すると準学士の資格が取得できます。卒業後に看護大学に行きたい場合も編入しやすく、大学生と同じようにサークルなどのキャンパスライフも楽しむことができます。
ただし、看護短大はいま減少する傾向にあるので、おすすめ度としてはけっして高いとはいえません。4年間通う大学と違って、授業も詰めて行うため、勉強もかなり大変です。
看護専門学校のメリット・デメリット
看護専門学校のメリットは、やはり3年間の短い期間で看護師の資格を取り、就職できることです。学費も比較的安く、看護奨学金などを使えば、実質的にかなり安い金額で学ぶことができます。
授業は実習が中心なので、看護師の実務をしっかりと身につけることができ、大学や短大にない学科や専攻を設けている専門学校もあります。
ただし、看護専門学校生は大学のように保健師や助産師の資格を取ることはできず、在学中に取得できるのは看護師の資格のみです。「大学病院に就職したい」と思っても、有名な大学病院は看護学校卒では入職が難しく、専門看護師を目指す場合も看護大学卒の人のようにすんなり大学院には進めません。その点をよく考えて、選択する必要があります。
まとめ
いま看護学部のある大学は増えており、看護短期大学の数は減っていますが、看護大学への進学を希望する人は増加傾向にあります。これまでのように「看護師は食いっぱぐれのない仕事」というイメージではなく、より専門性を磨いてキャリアアップしたい人が、増えてきたのかもしれません。
ただし、看護大学と看護専門学校では学費がかなり違い、4年制と3年制では就職できるまでの年月も違います。また、一般教科を学ぶことの多い大学よりも、実践的に学べる看護専門学校の方が向いている人もいます。
金銭的な面や家庭の事情、ご自身の適性なども十分に考慮して、看護大学に進むか看護専門学校を選ぶかを決めると良いでしょう。





