看護師の残業代はどのくらい?残業代の計算方法・請求方法・もらえなかった場合の対処法を徹底解説!

看護師は激務な印象がありますよね。
人の命を預かる現場は、いつどんなことが起こるのか分かりません。
患者さんの容態が急変し、残業が発生することも多くあります。
そこで今回は、看護師の残業代について解説します。
残業代の計算方法や請求方法、もらえなかった場合の対処法についても紹介しますので、ぜひ参考にご覧ください。
看護師の残業代はどのくらい?
では、看護師の残業代はどのくらいなのでしょうか。
残業時間の平均や、計算方法を紹介します。
看護師の残業時間の平均
看護師の残業時間の平均は、調査主体によって多少の差があります。
厚生労働省の調査では残業時間の平均は、6時間です。
公益社団法人日本看護協会の調査では、残業時間の平均は、5.2時間となっています。
看護師の残業代の計算方法
次に、看護師の残業代の計算方法を紹介します。
一般的な労働時間制の場合の計算方法と、変形労働時間制の場合の計算方法
を解説します。
一般的な労働時間制の場合の計算方法
一般的な労働時間制の場合の計算方法の流れは、以下の通りです。
1.残業時間を計算する
まずは、残業時間を計算していきましょう。
残業時間は「実際の労働時間-労働基準法で定められた法定労働時間」で計算します。
実際の労働時間というのは、定時後の業務だけでなく、始業時間前の業務や研修、勉強会など全ての業務を含んで計算します。
残業時間を計算するために、実際の労働時間を正確に記録しておく必要があります。
厚生労働省によると、労働時間・休日に関する主な制度は以下の通りです。
使用者は、原則として、1日に8時間、1週間に40時間を超えて労働させてはいけません。
使用者は、労働時間が6時間を超える場合は45分以上、8時間を超える場合は1時間以上の休憩を与えなければいけません。
使用者は、少なくとも毎週1日の休日か、4週間を通じて4日以上の休日を与えなければなりません。
労働者の過半数で組織する労働組合か労働者の過半数を代表する者との労使協定において、時間外・休日労働について定め、行政官庁に届け出た場合には、法定の労働時間を超える時間外労働、法定の休日における休日労働が認められます。この労使協定を「時間外労働協定」といいます。なお、時間外労働時間には限度が設けられています。
つまり、労働基準法で定められた法定労働時間は1日8時間、週40時間までになります。
2.残業代を種類ごとにわける
次に、残業代を種類ごとにわけます。
残業代は、法定内残業、法定外残業、深夜残業などに分けられます。
割増の計算をしやすくするために、残業代を種類ごとにわけておきましょう。
3.月給を時給に換算する
次に、月給を時給に換算します。
時給への換算方法は、「月給÷1カ月あたりの平均所定労働時間」です。
住宅手当や通勤手当などの手当は含まずに計算します。
1カ月の平均所定労働時間は「(1年間の日数-年間所定休日数)×1日の所定労働時間)÷12」で換算しましょう。
4.残業代を計算する
最後に、残業代を計算します。
「1時間あたりの賃金(時給)×残業した時間×割増賃金率」に当てはめて計算しましょう。
また、労働基準法において深夜業とは、午後10時から翌日午前5時までの間に労働させることをいいます。
深夜業に対する割増賃金は2割5分以上となります。
変形労働時間制の場合の計算方法
続いては、変形労働時間制の場合の計算方法を紹介します。
変形労働時間制の場合には、月単位、または年単位で労働時間を調整します。
就業規則に定められている労働時間を超えて働いているときは残業代が発生しますので、一般的な労働時間制の場合の計算方法同様に、残業代を計算しましょう。
看護師は残業代をもらえない?
みなさんは「看護師は残業代をもらえない」という噂を聞いたことがありませんか?
実際は法律上、残業代を請求できますが、中には違法なサービス残業をさせている病院も存在します。
看護師の残業には、前残業と後残業があります。
それぞれについて次章で詳しく解説します。
前残業
前残業とは、業務が始まる前の準備や情報収集などの業務のことです。
掃除や着替えも前残業に含まれます。
決められた出勤時間より早く出勤しなければならない環境では、必ず残業代を請求しましょう。
公益社団法人日本看護協会のホームページでは、以下のように述べられています。
Q.始業時間になると申し送りやケアが始まるため、スタッフはいつも30分早く出勤し情報収集をしています。時間外勤務手当は支払わなくてよいでしょうか
A.業務の準備(情報収集等)に必要な時間が所定労働時間内に確保されておらず、始業前に出勤する必要がある場合などは、労働時間として時間外勤務手当を支給することが妥当な取り扱いです。
Q.当院では看護職員にはユニフォームの着用が義務づけられていますが、更衣の時間は労働時間として扱う必要がありますか
A.業務に就く際の所定の服装への更衣は業務の準備行為にあたると解され、労働時間として扱うことが適切です。業務終了後の私服への更衣も、業務の後片付けにあたり、同様に労働時間として扱います。
後残業
一般的な残業のイメージに当てはまるものが、後残業です。
勤務時間が終了してからの業務のことを指します。
看護師の業務は、急なナースコールへの対応や急患などの対応が当てはまります。
公益社団法人日本看護協会のホームページでは、以下のように述べられています。
Q.スタッフはいつも実質1〜2時間程度残業していますが、病院の取り決めに従い、申告する残業時間数に制限があります。タイムカードの導入については、「残業の実態が明らかになる」と反対されています
A.所定労働時間外に行った労働に対して賃金を支給しないことは違法です。労働時間に対する賃金は全額支払う義務があり、1日の残業申請の上限を設けることは不適切です。
2019年4月からは、医師も管理監督者も含めて、労働時間の状況の把握の実効性確保のため、タイムカードやICカードなどによる客観的な方法での勤務時間の把握が必要となります。出退勤時刻の記載のない押印方式の出勤簿の場合は、使用者の現認(押印)が必要です。可能であれば、より客観的な方法への切り替えを急ぎましょう。
看護師が残業代をもらえなかったら
では、万が一看護師が残業代をもらえなかったらどうしたら良いのでしょうか。
残業代をもらえなかった場合にするべきことを紹介します。
残業した証拠を集める
看護師が残業代をもらえなかったら、まず残業した証拠を集めましょう。
就業規則や雇用契約書、タイムカード、シフト表、カルテの記録など、残業していたことを証明できるものを集めます。
証拠になる書類は可能な限り多いほうが多いので、細かく確認してください。
病院と交渉する
看護師が残業代をもらえなかったら、病院と交渉しましょう。
残業した証拠を集めたら、証拠をもとに病院と直接交渉します。
サービス残業が常態化している場合には、あれこれ理由をつけて支払いを拒否してくるため、残業代の請求が認められる可能性は低いです。
その際には、次に紹介する方法で残業代を請求してください。
労働基準監督署に相談する
看護師が残業代をもらえなかったら、労働基準監督署に相談しましょう。
労働基準監督署は全国にあります。
残業代などの給料未払いに関して相談ができます。
残業代の未払いが認められると、病院側へ指導や是正勧告をしてくれます。
ですが、労働基準監督署による行政指導には強制力がありません。
弁護士に相談する
看護師が残業代をもらえなかったら、弁護士に相談しましょう。
病院と交渉したり、労働基準監督署に相談しても残業代が支払われなかった場合には、弁護士への相談を検討してください。
弁護士と相談し、訴訟を起こします。
ただし、未払いの残業代は3年以内に請求しない場合には時効となってしまうので、注意しましょう。
転職する
看護師が残業代をもらえなかったら、転職を検討しましょう。
残業代を支払わないような違法行為を行っているずさんな職場で長く働き続けることはおすすめできません。
労働環境の改善が見込めない場合には、転職を視野に入れてください。
看護師の残業の実態
最後に、看護師の残業の実態を紹介します。
残業代が支払われない背景には、以下のような実態があります。
残業申請がしづらい雰囲気
病院によっては、残業申請がしづらい雰囲気があります。
サービス残業が当たり前という空気感で、特に新人看護師は前残業として業務の内容を予習することが求められるケースもあります。
「残業してください」と言われなくても、帰りづらい空気が流れている場合もあり、なかなか残業申請がしづらいという実態があります。
看護師の残業が多い理由
看護師の残業が多い理由には、慢性的な人手不足や時間外研修会や勉強会、看護記録などの書類作成業務、看護記録などの書類作成業務があります。
慢性的な人手不足
看護師の残業が多い理由には、慢性的な人手不足が考えられます。
高齢化が進む中で、需要に対し供給が追いついていないため、看護師が不足しています。
慢性的な人手不足を抱えている医療現場では、看護師一人あたりの業務量も増えてしまい、残業量が多くなってしまいます。
時間外研修会や勉強会
看護師の残業が多い理由として、時間外研修会や勉強会もあります。
看護を行う上での知識や技術を高めるために、研修制度を設けている病院も多いですが、業務時間内では忙しくて研修を行えないため、時間外に行われるケースも多々あるようです。
ですが、公益社団法人日本看護協会のホームページでは、時間外研修会や勉強会の扱いについて下記のように記載されています。
職員に対する研修・教育時間は以下3点の場合に労働時間と見なされます。勤務時間外に行われた場合には時間外勤務として賃金の支払いが必要です。
1.研修教育の内容が業務そのものか、業務と密接に関連するもの
2.参加が強制されているか、名目上「自由参加」とされていても欠席すると何らかの不利益措置がある
3.職員自身の労働安全衛生に関する教育
したがって、看護職員の院内研修を一律に「自己研さん」と位置付け時間外勤務手当を不支給とすることは、違法となる疑いがあります。所定労働時間内に研修を実施するか、時間外勤務手当を支給する必要があります。
業務の準備(情報収集等)に必要な時間が所定労働時間内に確保されておらず、始業前に出勤する必要がある場合などは、労働時間として時間外勤務手当を支給することが妥当な取り扱いです。
看護記録などの書類作成業務
看護師の残業が多い理由として、看護記録などの書類作成業務があります。
患者対応の他に、書類作成業務も行う必要があります。
ですが、患者さんへの対応に時間がかかってしまうと、書類作成を行う時間が足りなくなってしまうため、残業して記録を行う看護師も多いようです。
急患やナースコールによる対応
看護師の残業が多い理由として、急患やナースコールによる対応があります。
業務終了時刻のギリギリでも患者さんが急変したり、ナースコールで呼びだされる可能性があります。
たとえ勤務時間外であっても対応する必要がありますので、必然的に残業を行うことになってしまいます。
まとめ
今回は、看護師の残業代について紹介しました。
残業代の計算方法は、「実際の労働時間-労働基準法で定められた法定労働時間」です。
請求方法としては、病院へ直訴する方法が一般的ですが、万が一もらえなかった場合には、労働基準監督署や弁護士への相談を検討しましょう。







