看護における「アセスメント」とは?基本的な書き方をわかりやすく解説

看護の現場におけるアセスメントについて
アセスメントの意味
看護の現場だけでなく、企業の人材マネジメントや環境評価など、さまざまな場面でアセスメントは使われています。
例えば、企業の人事分野で実施するのが、「人事アセスメント」です。社員の特性や適性を、アセスメントツールを使って評価することで、採用や配属の際の参考にするというものです。
また製造業などでは、自社で製品を開発したときに、環境に及ぼす影響を調査・分析・評価します。これを「環境アセスメント」と呼びます。
アセスメントの目的は、業務の状況を正しく評価・分析することによって、より適切な対応ができるようになることです。これは看護の分野でも、他の分野においても同様です。
アセスメントのプロセス
計画(Plan)
まずは現状を分析し、目標を設定して、それを達成するためのアクションプランを作成します。
実行(Do)
立案した目標やアクションプランをもとに、計画を実行します。実行した後は、それが有効だったかどうか、別の方法もあるのかどうかなどを検証します。
評価(Check)
目標やアクションプランが達成したかどうか、実行した内容が計画通りに進んだかどうかを評価します。計画通りに進んだ場合は成功の要因を分析し、うまくいかなかった場合は失敗の原因を分析します。
改善(Action)
評価から得られた気づきや課題を改善するための仮説を立て、次の計画に反映させます。
看護の現場で使うアセスメントとは?
アセスメントは5つの看護過程の第一段階
1.アセスメント
患者さんの情報を収集し、それらを整理・分析・評価します。
2. 看護診断
アセスメントで収集した患者さんの問題の中で、看護師が介入することで解決・軽減できる問題は何かを明確にします。
3. 看護計画
患者さんの問題に対して目標を設定し、計画を立案します。
4. 看護介入
立案した看護計画に基づいて、看護ケアを進めます。
5. 看護評価
アセスメントから看護介入までの成果を分析し、評価します。
アセスメントで収集する情報には2種類ある
主観的情報 | 患者さんとの対話の中から把握できる情報で、「食欲がない」「頭痛がある」「悩みがある」など、患者さんから入ってくるさまざまな情報を、アセスメントとして看護記録に残します。 |
客観的情報 | 主観的情報とは違って、数値化・視覚化できる情報が、客観的情報です。バイタルサインや検査結果、皮膚の状態などがこれにあたります。 |
看護におけるアセスメントの目的とは
これによって、患者さんが抱える問題の優先度がわかり、看護ケアの方向性を明確にすることができます。
アセスメントの基本的な書き方
手順1. 患者さんの「反応」
書き方としては、「(アセスメント項目)については、(情報1)や(情報2)ということがあった。このことから、(解釈の結果)と考えられる。」という書き方になります。
<具体例>
健康管理状況(アセスメント項目)は、「タバコを止めたいが止められない」(情報1)という発言が見られ、お酒の量は少なめにしていた(情報2)。一方で、3ヶ月前から左胸に痛みを感じていたが、数分で治まるため(情報3)、「自分は健康に自信があるから、このぐらいなら問題はない」と判断し(情報4)、「家族にも心臓病を患った人はいないから大丈夫だ」(情報5)と考えて受診をしなかった。入院後は健康管理に関する話をしても、「健康の話には興味がない」(情報6)と話し、「今まで健康に関する話を聞いたことがない」(情報7)とも話している。このことから、健康管理状況は不適切(解釈の結果)と考えられる。 |
手順2. 反応が生じた「原因・誘因」
書き方としては、「この問題の原因には、(情報1)や(情報2)から、(原因)が考えられる。また、(情報1)や(情報2)から、(誘因)がこの問題の誘因になっていると考えられる。」という書き方になります。
<具体例>
この問題の原因には、「自分は健康に自信があるから、このぐらいなら問題はない」(情報1)や「家族にも心臓病を患った人はいないから大丈夫だ」(情報2)という発言が見られ、健康状態の過信(原因)が考えられる。また、「健康の話には興味がない」(情報1)や「今まで健康に関する話を聞いたことがない」(情報2)と話していることから、健康に関する知識が浅いこと(誘因)が、この問題の誘因になっていると考えられる。 |
手順3. 患者さんの「反応」と改善する「強み」
書き方としては、「(情報1)や(情報2)から(強み)が(アセスメント項目)の強みになると考えられる。」という書き方になります。
<具体例>
「胸に痛みを感じたことを妻に話したところ、受診した方がいいと言われた」(情報1)や「娘からタバコを控えた方がいいと言われた」(情報2)と話していることから、妻や娘が健康管理の適切なアドバイス(強み)をすることが、健康管理状況(アセスメント項目)の強みになると考えられる。 |
手順4. 反応の「なりゆき」を推測
書き方としては、例えば実在型の問題がある患者さんの場合は、「(実在型問題)は、(情報1)や(情報2)にあるように、(憎悪因子)が憎悪因子となって、今後悪化すると考えられる」という書き方になります。
<具体例>
「肥満(実在型問題)は、「食品のバイヤーをしているため、食べ過ぎてしまう」(情報1)や「接待などで会食をする機会が多い」(情報2)にあるように、仕事に関連する食事の機会が多い(憎悪因子)ことが憎悪因子となって、今後悪化することが考えられる。 |
アセスメントをスキルアップさせる方法
先輩看護師のアドバイスをもらう
例えば、先輩看護師がどんな点に気を付けてアセスメントを行っているのかを教えてもらったり、先輩が書いたアセスメントを見せてもらったり、逆に自分が書いたアセスメントをチェックしてもらうのも良いでしょう。
自分とはまた違う視点から意見をもらうことで、書き方のクセや抜けていた部分などにも気づくことができ、アセスメントをよりスキルアップさせることができます。
アセスメントに必要な情報を収集する
情報を収集する際には、異常を見つけることだけに注力するのではなく、患者さんの正常な状態を把握する必要もあります。
例えば、血圧や体温といった基本的な数値はもちろんですが、患者さんに食欲があるか、顔色が悪くないかといったことも、細かく観察しましょう。
フィジカルアセスメントについて学ぶ
フィジカルアセスメントとは、問診や視診・触診・聴診・打診を用いてさまざまな情報を収集・分析し、患者さんの状態を判断することです。
アセスメント力が向上することによって、患者さんにより迅速に対応できるようになり、医師とのコミュニケーションも円滑になるでしょう。
患者さんにより良い看護が提供できることは、看護師として働く上でのやりがいにもつながります。





