感染を防ぐための基本♪手指衛生

感染対策の基本は 感染経路を遮断することであり、そのなかでも「手指衛生」は最も重要な対策です。
手指衛生の重要性は、150年以上前に産科医ゼンメルワイスが産褥熱で亡くなる産婦の死亡原因を突き止め、塩素消毒液を用いた手洗いを導入することで死亡を大幅に低下させたことから明らかになりました。
さらに、スイスのジュネーブ大学病院では1994年12月から1997年12月にかけて、手指衛生の推進プログラムを実施し、その結果、MRSA(メチシリン耐性黄色ブドウ球菌)などの発生率が 10,000患者日あたり2.16症例から0.93症例へと減少(p<0.001)したと報告されています1)。
細菌やウイルスは、きちんと手指衛生が行われなければ、私たち医療従事者の手を介して患者に伝播する可能性があります。そのため、手指衛生は医療従事者にとって必須の感染対策です。
手指衛生の方法:CDCの推奨
2002年、米国疾病管理予防センター(CDC)は手指衛生の方針を変更し、流水と石けんによる手洗いから、擦式アルコール製剤による手指消毒を第一選択としました。理由は以下の通りです。
- 簡便で、消毒効果が高い
- 流水と石けんによる手洗いは30秒以上かかるが、アルコール消毒はより短時間で実施できる
- 水道設備がなくても、どこでも実施できる
- 手荒れが少ない
ただし、 以下の場合は、流水と石けんを用いた手洗いが必要です。
- 手が目に見えて汚れている場合(血液や体液などが付着している場合)
- ノロウイルスなどの感染性胃腸炎の流行期(アルコール消毒では不十分)
適切なタイミングで実施する
手指衛生は 「適切なタイミング」で「正しい方法」で行うこと が重要です。2009年、世界保健機関(WHO)は適切な「5つのタイミング」を推奨しています(図1)。
- 患者に触れる前:手指を介した病原微生物の伝播を防ぐため(例:脈拍測定前)
- 清潔/無菌操作の前:患者の体内への微生物侵入を防ぐため(例:血管内カテーテル挿入前)
- 体液に曝露された可能性のある場合:患者の病原微生物から自身と医療環境を守るため(例:吸引後)
- 患者に触れた後:患者の病原微生物から自身と医療環境を守るため(例:血圧測定後)
- 患者周辺の物品に触れた後:患者の病原微生物から自身と医療環境を守るため(例:ベッド柵に触れた後)
「5つのタイミング」を実践するために、擦式アルコール製剤は個人携帯し、適切な量(15秒以内で乾燥しない量:液体は3mL程度、ジェルタイプは1.2~1.5mL程度が目安)、推奨された手順(手のひら、甲、指先、指の間、親指、手首)を遵守して、患者さんを感染症から守りましょう。
監修/執筆
社会医療法人純幸会 関西メディカル病院
感染管理室 副室長 管理師長
感染管理認定看護師/特定看護師
勝平真司
社会医療法人純幸会 関西メディカル病院
感染管理室 副室長 管理師長
感染管理認定看護師/特定看護師
勝平真司
参考文献
1) Pittet, D. et al. Effectiveness of a hospital-wide program to improve compliance with hand hygiene. Lancet. 356(9238), 2000, 1307-12.
2) WHO. Hand Hygiene: Why, How & When? https://www.who.int/publications/m/item/hand-hygiene-why-how-when
2) WHO. Hand Hygiene: Why, How & When? https://www.who.int/publications/m/item/hand-hygiene-why-how-when






