看護師長になるには?昇進の方法や求められる能力、給料について解説

看護師さんの中から、看護師長になれる人は、ほんのひと握りです。病院のリーダー職なので、それなりに責任のある大変な仕事ではありますが、その分やりがいも大きく高収入を得ることもできます。では、いったいどうすれば看護師長になれるのでしょうか?昇進の方法や、求められる能力、給料などについて解説します。
看護師長とは?他の役職との違い
看護部長
看護部長(または総看護師長)は、看護師のトップに立つ職種で、一般企業でいうと部長にあたります。看護業務全体を取り仕切るとともに、病院の経営側の立場でもあります。
病院の経営陣と看護師さんの橋渡し役として、お互いの立場をよく理解し、意見を調整する役割を担います。基本的にひとつの病院に看護部長は1人で、看護部長になる年齢の目安は50歳前後です。
看護師長
看護師長は、看護部長と看護主任の間にある中間管理職で、一般企業でいうと課長にあたります。
看護師長は病棟や外来など、看護の部署を統括する役職として、他部署の管理職と連携をとりながらマネジメントを行います。看護師さんの取りまとめや、患者さんの状況把握、人材育成まで、業務は多岐にわたります。
病院の規模にもよりますが、ひとつの病院に看護師長は10人~20人いるのが一般的です。各病棟や各部門に1人ずつ看護師長が配置される場合や、1人の看護師長が2部門兼任する場合もあります。看護部長と比べると、看護師長になれる確率はだいぶ高いですが、それでも狭き門であることには変わりないでしょう。
看護主任
看護主任は、スタッフナースの一段階上のポジションで、所属する病棟や診療科などの業務が円滑に進むよう、看護師長の補佐として看護師さんの管理やサポートを行います。
中間管理職として、管理職と看護師さんの間の橋渡し役となる点は看護師長と同じですが、業務の範囲が異なります。看護師長が部署の責任者として全体の運営に携わるのに対して、看護主任はより現場に近い立場で、看護師さんに具体的な指示を出したり、看護業務を管理したりといった仕事を行います。
看護師長の業務内容
部署のマネジメント
看護師長の大きな役割のひとつが、部署のマネジメントです。病棟や外来、手術室など、看護師さんが所属する部署の管理職として、現場を取り仕切る任務があります。
より高度で効率的な看護サービスを提供するために、所属する部署の看護師さんを適性に配置し、苦手な部分をサポートしながら業務を遂行していきます。
スタッフの管理
看護師さんは新人ナースからベテランのナースまで、経験も年齢もさまざまで、正職員だけでなくアルバイトやパートの職員もいます。こうした看護師さんたち一人ひとりの気持ちや事情に耳を傾け、皆が気持ちよく働けるように管理するのも、看護師長の大切な仕事です。
看護師さんそれぞれに個性があり、興味関心事も違えば、得手不得手もあります。また、介護や子育てなど、それぞれに家庭の事情も抱えています。それらをすべて含めた上で、ひと回り大きな器で部下を包み込み、管理していくことが必要です。
スタッフの育成
看護師長にとって、部下である看護師さんをいかに育てるかというのは、病院をより良くしていく上でとても重要な問題です。看護主任と連携をとりながら、新人看護師の教育をどうするか、専門性の高い看護師を育成するにはどうしたらいいかなどを話し合い、教育体制を整えていきます。
患者さんの管理
病棟や外来など、担当する部署内に患者さんが何人いるか、入院や退院、転院する患者さんは誰かなど、患者さんの管理を行うのも看護師長の任務です。
入院患者数に対して、看護師さんが何人いるかによって、受け入れられる患者数も変わってきます。看護師さんが忙しくなり過ぎて、看護業務がおろそかになってしまわないよう、適切な患者数をキープしていくことも大切です。
他部門との連携
業務によっては、部署内だけでなく、他部門との連携や調整が必要になる場合があります。その際は、看護師長が部署の代表として話し合い、解決していきます。
ときには病院の上層部や、医師と意見を交換する場面などもあり、的確な判断能力やコミュニケーション能力が求められます。
トラブルへの対応
病院内では患者さんとのトラブルや、ご家族からのクレーム、看護師さん同士の揉め事など、さまざまなトラブルが発生します。
看護師さんや看護主任レベルで解決困難なトラブルが発生したときには、看護師長が間に入って問題の解決を図ります。
看護師長に求められる能力
リーダーシップ能力
看護師長には、強いリーダーシップ能力が不可欠です。さまざまな性格を持つ看護師さんをひとつにまとめ上げ、お互いに助け合えるチームワークをつくることが、看護師長の重要な任務です。
上から目線で命令するのではなく、あくまで看護師さんの気持ちに寄り添い、一人ひとりの強みを発揮できるチームを作ることが大切です。
コミュニケーション能力
看護師長は部署のリーダーとして、さまざまな他部署の人々と話し合いや交渉を行います。ときには説得するのが難しい経営陣や、こだわりを持ったドクターなどと、やり取りをしなければならないときもあります。
そのため、看護師長には、高いコミュニケーション能力が求められます。相手の意見に耳を傾けつつ、自分の意見もはっきりと発信でき、患者さんとのトラブルなども丸く治められる人間力が必要です。
看護の技術と知識
数多くの看護師さんのリーダーとしてやっていくためには、十分な看護の知識と技術を持ち、常に適切な指示やアドバイスができる人物であることが絶対条件です。看護師長に15年ほどの臨床経験が必要とされるのも、そのためです。
問題解決能力
日々の看護業務の中では、さまざまなトラブルが発生します。その際に、看護師長は冷静に事態を判断し、適切な解決方法を見つけなければなりません。瞬時にそれを判断できる能力と、ベストの指示ができる能力が、看護師長には求められます。
看護師長の給料は非管理職よりもどのぐらい高い?
では、看護師長の給料は、非管理職と比べてどのぐらい高いのでしょうか?勤める病院によっても差がありますが、日本看護協会のデータによると、看護師長の年収は非管理職に比べて100万円~130万円ほど高いと考えられます。
「2012年病院勤務の看護職の賃金に関する調査」では、看護師長の基本給月額の平均は「37万949円」で、管理職手当額の平均は「4万5,439円」。基本給と手当を足した看護師長の月給は、「41万6,388円」でした。
看護師長を含めた中間管理職の賞与は「124万5,754円」なので、看護師長の年収は「624万2,410円」という結果になります。
それに対して、非管理職の基本給月額の平均は「32万3,298円」です。賞与が「89万1,909円」なので、年収は「477万1,485円」となり、夜勤手当などをつけると、年収は「500万円前後」となります。
看護師長の年収が「624万2,410円」、非管理職の年収が「500万円前後」ということで、年収差は100万円~130万円ほどと捉えることができます。
看護師長に昇進するための方法
看護師長になるためには、おおよそ15年以上の臨床経験が求められます。たとえば21歳に看護学校を卒業し、新卒で病院に入職したら、30.代後半ぐらいから看護師長になれるチャンスが生まれます。
一般的には40歳前後で看護師長になる人が多く、看護主任として数年間務めた後、実績を評価されて看護師長に昇進します。規模の小さい病院では、看護主任のポストがなく、スタッフナースから看護師長に抜擢されるケースもあります。
まとめ
看護師さんが自身のキャリアプランを考えるときに、看護師長という目標は、誰もが一度は考えたことがあるのではないでしょうか。スタッフナースとしてずっと働き続けるのも、ひとつのキャリアの選択肢ですが、15年、20年という看護師のキャリアを活かして看護師長のポストに就くのも、やりがいのある人生です。
もしあなたが看護師長を目指すなら、まずは看護主任を目標にするなど、しっかりとしたキャリアプランを立てて進むことをおすすめします。





