2020年2月27日に一般社団法人 日本看護学校協議会によって厚生労働大臣に提出された「第106回保健師・第103回助産師及び第109回看護師国家試験の実施に関する要望書
」。どんな要望書かと言うと、同協議会の国家試験・資格試験対策委員会によって、 “試験問題として不適切ではないか” との見解がなされた問題について提言されている要望書です。今回要望書であげられたのは、午前の問題で5問、午後の問題で7問の計12問でした。必修問題では3問が不適切ではないかと提言されています。今回の要望書で取り上げられた不適切問題についてと、過去に要望書で提言された問題のうち、実際にも不適切として除外された問題の割合についてご紹介します。 第109回看護師国家試験で不適切と思われる問題として要望書に取り上げられた設問
〜要望書にて不適切だとの声が上がった設問一覧〜
<午前>
【問題11】【問題33】【問題53】【問題85】【問題118】
<午後>
【問題15】【問題26】【問題65】【問題72】【問題93】【問題111】【問題117】
<午前の問題>
【問題11】健康な成人の1回換気量はどれか1.約150ml2.約350ml3.約500ml4.約1000ml【要望書の内容】成人の一回換気量は性別・身長・体重の記載がないため、解答は2と3の正解が考えられる。【問題33】【要望書の内容】クロストリジウム・ディフィシレはガウンと手袋が必要だと思われるが、陰部洗浄時の飛散による目や口腔、鼻腔粘膜への接触の可能性を考慮すると、マスク、ゴーグルも必要と思われるので3と4の正解が考えられる。【問題53】【要望書の内容】FASTによる軽度の認知機能低下について、臨床的特徴に重要な約束を忘れたり、複雑な作業を行う場合の作業の遂行障害があげられている。2:実行機能障害がある、3:物忘れを自覚しているの2つの正解が考えられる。【問題85】【要望書の内容】モヤモヤ病は病期の第1期ではウィリス動脈輪の狭窄・閉塞を認め、次第に側副血行路が形成されていく病気である。「遺伝的要因が関与する」と言われている。また、ウィリス動脈輪は「くも膜下腔に存在」している。また、「ウィリス動脈輪閉塞症」とも呼ばれる。「進行性の脳血管閉塞症」である。よって、2と3と4の3つの正解が考えられる。【問題118】【要望書の内容】Aさんは「らいじょうぶと返答したがろれつが回らなかった。」と表現されているが、症状の説明が不十分であるため2と3の正解が考えられる。<午後の問題>
【問題15】下痢によって生じやすい電解質異常はどれか1.低カリウム血症2.高カルシウム血症3.高ナトリウム血症4.低マグネシウム血症【要望書の内容】下痢により生じやすい電解質異常は、低カリウム血症が頻度は高いと思うが、低マグネシウム血症も下痢によって生じる電解質異常であるため、この選択肢の場合は1と4が正解と考えられる。【問題26】【要望書の内容】線維軟骨結合は脊柱にあり、また、恥骨結合にもある。恥骨結合は寛骨に含まれるため2と3が正解と考えられる。【問題65】【要望書の内容】転換とは欲求の対象を別のものにおきかえたり、欲求を別の表現形に転換したりすることである。また「転換」は「置き換え」の防衛機能の一種とされており、不安や葛藤を身体症状へ置き換えるという方法とも言われている。反動形成とは、自らの中にある欲求や感情を認めることができない場合に、正反対の感情・考え・行動をとることである。本当は酒が好きで飲みたい→行動として酒を飲んでいる人を非難する。少なくとも反動形成がないとは言い切れない。従って2と4が正解と考えられる。【問題72】【要望書の内容】脳梗塞の療養者に対する摂食介護への指導、3.口に入れる1回量を少なくしましょう、4.食事前に舌の動きをよくする運動をしましょう、事例の詳細状況がわからないため、むせはなくても咀嚼、送り込みの機能を超えた1回量であれば、飲み込みきれずに残ることも考えられる。また、脳梗塞後遺症により口腔機能が低下していることに対し、食前に口腔機能を向上させる訓練により唾液の分泌や口腔から咽頭期の嚥下が促進される。そのため3と4が正解と考えられる。【問題93】【要望書の内容】選択肢1の「運動を控えましょう」と選択肢3「海藻類の摂取に制限はありません」の2つが正解と考えられる。【問題111】【要望書の内容】認知行動療法の継続は臨床心理士、退院後の生活に対する相談は精神保健福祉相談員が行う。この時点では臨床心理士、精神保健福祉相談員ともに必要であり、優先順位がつけられないと考える。従って3と5が正解と考えられる。【問題117】【要望書の内容】インスリン注射の単位や針の確認の他、食事の準備も課題であると考える。従って選択肢2と3と4の複数の正解が考えられる。(引用:一般社団法人 日本看護学校協議会要望書で不適切との指摘があった問題で実際に採点除外となる割合は?
一般社団法人 看護学校協議会が提出した要望書の内容はいかがでしたでしょうか。採点除外があるかないかで合格点も変わってきますので、受験者としては大変気になるところ。要望であげられた不適切と思われる問題で、実際に採点除外となった問題はどれぐらいあるのかについて調べてみました。結論から言うと、過去5年間の要望内容と照らし合わせて約23%ほど、10問のうち2〜3問といった確率
です。第108回看護師国家試験
要望書にて不適切と思われるとされた設問【午前問題】 5、49、63、72、95、109、110【午後問題】27、99、114、115実際に採点除外となった問題【午前問題】5、33、110要望書であげられた11問中2問が採点除外に。割合としては約2割。第107回看護師国家試験
要望書において不適切と思われるとされた設問【午前問題】18、70、100【午後問題】22、24、65、105、114、117実際に採点除外となった問題【午前問題】2、9、11、83【午後問題】4、5、12、22、24、114要望書であげられた9問中3問が採点除外に。割合としては約3割。第106回看護師国家試験
要望書において不適切と思われるとされた設問【午前問題】15、27、51、52、64、66、79、80、92、95、112【午後問題】2、14、31、33、36、51、54、60、91、93、97、108実際に採点除外となった問題【午前問題】10、15【午後問題】31、33、54、72、93、108要望書であげられた23問中6問が採点除外に。割合としては約2.6割。 第105回看護師国家試験
要望書において不適切と思われるとされた設問【午前問題】25、62、66【午後問題】24、41実際に採点除外となった問題【午前問題】20、66【午後問題】41、95要望書であげられた5問中2問が採点除外に。割合としては約4割。第104回看護師国家試験
要望書において不適切と思われるとされた設問【午前問題】58、105【午後問題】53、60、105実際に採点除外となった問題【午後問題】98要望書であげられた5問のなかで採点除外となった問題はありませんでした 不適切問題があった際の採点方法や点数
不適切問題があった場合は、合格発表のタイミングで解答とともに発表されます。
その際の採点方法は、不適切の理由によって異なります。
過去の不適切問題の判断ケースを用いて説明します。
ケース1:必修問題として妥当ではなかった
【不適切理由】問題として適切であるが、必修問題としては妥当でないため
【採点方法】正解した受験者については採点対象に含め、不正解の受験者については採点
対象から除外
【点数】該当問題の正解者、不正解者によって採点対象となる問題数(母数)が異なる
ケース2:難易度の高すぎる問題であった
【不適切理由】問題として適切であるが、受験者レベルでは難しすぎるため
【採点方法】(その問題自体)採点対象から除外
【点数】採点対象となる問題数が減少
ケース3:選択肢に正答がない
【不適切理由】選択肢が不適切であるため
【採点方法】(その問題自体)採点対象から除外
【点数】採点対象となる問題数が減少
ケース4:問題の状況設定が不十分であった
【不適切理由】設問の状況設定が不十分で正解が得られないため
【採点方法】(その問題自体)採点対象から除外
【点数】採点対象となる問題数が減少
まとめ
2018年に実施された第107回看護師国家試験では、過去10年間で最多の10問が不適切問題となりました。
出題基準が4年ぶりに改訂された第108回看護師国家試験では不適切問題は3問と、年度によって不適切問題の数は多かったり少なかったり。
不適切問題の有る無しで採点対象となる母数も変わりますので気になるところですよね。
今回ご紹介した要望書の内容で一喜一憂された方もいるかもしれません。
ですが、あくまで参考程度として捉え、合格発表のその時までゆったりとした気持ちで過ごすことが大事なのかもしれません。
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