基礎看護技術をおさらい!
今回は「罨法」について解説します。
罨法は医師の指示がなくても、看護師の判断で実施できる看護技術。
患者の安楽でよく実施されますので、手順や注意点などのポイントをしっかりと押さえておきましょう。
罨法(あんぽう)とは?
罨法とは、身体の一部を温めたり冷やしたりすることで、炎症や疼痛を緩和し、病状の好転や患者の自覚症状の軽減をはかる技術です。
罨法には2種類あり、患部を冷やすのが冷罨法(れいあんぽう)、温めるのが温罨法(おんあんぽう)です。
「冷罨法」と「温罨法」を比較!
冷罨法と温罨法ですが、それぞれどのような場合に用いるのか、目的・効果・使うものについて簡単に説明します。
冷罨法 | 温罨法 | |
---|---|---|
場面 | 急性の炎症抑制 | 慢性の炎症抑制 |
目的 | 身体的苦痛の緩和や心理的安楽 | 身体的苦痛の緩和や心理的安楽 |
効果 | 血管収縮によって血流を減少させたり、 組織細胞の活性を低下させ体温を下降させる ・発熱時の体温下降 ・疼痛の緩和 ・出血予防 ・止血作用 ・炎症反応の抑制 ・掻痒感の軽減など | 温熱刺激により、血管拡張や血流が増加 ・うっ滞の除去 ・血行促進 ・疼痛緩和 ・悪寒時の保温 ・腸蠕動促進 ・精神的興奮の安静 ・安楽など |
使うもの | 湿性冷罨法 ・冷湿布 ・冷ハップ乾性冷罨法 ・氷枕 ・冷却パック ・氷のう ・アイスノンなど | 湿性温罨法 ・ホットパック ・温湿布乾性温罨法 ・湯たんぽ ・カイロ ・電気毛布など |
「冷罨法」の実施方法
冷罨法の実施方法について解説していきます。
冷罨法の実施手順
患者さんから氷まくらを希望されるケースも多いと思います。
そこで、様々な冷罨法の手技のなかでも、よく実施されている氷まくらの手順について説明します。
<用意するもの>
氷まくら、留め金×2、氷、水、ビニール袋、バスタオル
<実施手順>
①患者の状態から冷罨法の必要性を判断する
②患者に必要性を説明し、了承を得る
③氷まくらの準備をする。その際、氷まくらに破損や汚れがないか点検する
④氷まくらを作る
1:氷まくらの1/2〜2/3ぐらいまで氷をいれる
2:氷まくらに水を入れ、氷の間を埋める
3:空気を抜いて留め金を互い違いに埋める
4:氷まくらをビニール袋に入れバスタオルにくるみ、金具がむきだしにならないようにする
⑤患者の頭の下に氷まくらを置く
⑥患者に凍傷の危険性を説明する
⑦氷まくらが快適か、不快感はないかを確認
⑧ベッド周りを元に整え、物品を片付け退出する
<氷まくら実施時の注意点>
・亀裂や破損、汚れがないか、使用前に入念にチェックをする
・氷まくらを取り換える際は、氷まくらが当たる部分の表面温度を確認しましょう。
表面温度は15℃前後が適切とされています
・留め具による怪我に気をつけましょう
不穏が懸念される場合は氷まくらを使用しない、巡回時に金具があらわになっていないか確認する など
冷罨法実施時の注意点
冷罨法は血流を減少させる効果がありますので、循環障害がある方に実施してしまうと血流が抑制され状態を悪化させる恐れがあります。
冷罨法を希望する患者さんが下記禁忌例に当てはまらないかどうかを確認しましょう。
循環障害がある | 循環血液量の低下がリスクにならないかどうか |
血栓を形成しやすい状態 | 血管が収縮し、血流が抑制されるため、血栓が形成される恐れがある |
寒冷蕁麻疹やレノイー現象がみられる | 寒冷刺激により、症状が現れたり状態が悪化する恐れがある |
開放性損傷がある | 血流が抑制され、代謝が下がるため、創傷治療を遅らせる恐れがある |
冷却する部位に慢性的な炎症が生じている | 寒冷刺激により、症状が現れたり状態が悪化したりする恐れがある |
「温罨法」の実施方法
温罨法の実施方法について解説します。
温罨法の実施手順
特に冬の寒い時期には、患者さんから手足が冷たいからと湯たんぽを希望されるというケースも多いのではないでしょうか。
そこで湯たんぽを使用した温罨法の実施手順について説明します。
湯たんぽは低温熱傷の危険を伴いますので、手順や注意点をいま一度押さえておきましょう。
<用意するもの>
湯たんぽ、湯たんぽカバー、湯温計
<実施手順>
①患者のバイタルサイン、状態から温罨法の必要性を判断する
②患者に温罨法の必要性を説明し、了承を得る
③湯たんぽの準備をする
④湯たんぽの口栓のパッキングなどに亀裂が生じていないか隅々まで点検する
⑤お湯の温度を湯温計で計り、60℃程度であることを確認
⑥お湯を1/2〜2/3ぐらいまでいれる
⑦ゴム製の場合は空気を抜いてから口栓を閉める
⑧水滴を拭き取り、逆さにしてみて湯の漏れがないかを確認
⑨布製のカバーをかける
⑩湯たんぽを患者から10cm以上離して置く(栓側を患者に向けない)
⑪体から離して使用するよう、患者に伝える
<湯たんぽ実施時の注意点>
・亀裂や破損がないかどうか、使用前に入念にチェックする
・お湯の温度は必ず計りましょう
・湯たんぽは患者の足元から10cm以上離しましょう
・栓側を患者に向けないようにしましょう
温罨法実施時の注意点
湯たんぽに限らず、電気アンカや電気毛布等の温罨法は低温熱傷のリスクがある処置です。
また、血管の拡張作用があり、血流が増加しますので、
血流増加や代謝が上がることで状態が悪くなるケースに該当しないか、事前の状況判断が大切です。
<温罨法の禁忌の例>
出血傾向がある | 血管拡張、血流増加により、出血を助長する恐れがある |
血栓がある | 血栓がある場合に温罨法を実施すると、血流増加により血栓が剥がれ、心臓等の血管に詰まる恐れがある |
急性炎症がある | 代謝が上がるため、腫賑や疼痛等の炎症が増悪し、治療を遅らせる恐れがある |
悪性腫瘍のある部位 | 代謝が上がるため、腫瘍細胞の増殖や転移を早める恐れがある |
冷罨法、温罨法を実施していいかどうかの判断が難しい場合は、周りの看護師や医師に相談するようにしましょう。
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