皆さんは「特定機能病院」をご存知ですか?
特定機能病院とは、簡単に言うと最先端の医療を提供する病院のこと。
さまざまな承認要件をクリアした病院が、特定機能病院として承認を受けられます。
今回は特定機能病院についてわかりやすく解説します。
特定機能病院の役割や看護師の仕事内容、一般的な病院との違いなどを詳しく見ていきましょう。
特定機能病院での勤務をお考えの方は、ぜひ参考にしてくださいね。
特定機能病院とは?
特定機能病院とは、厚生労働省が定めた承認要件を満たし、かつ厚生労働大臣からの承認を受けた一部の病院のこと。
医療法第4条の2において、備えるべき要件が定められています。
令和3年4月1日現在では87の病院が承認を受けています。
令和4年4月1日現在で特定機能病院として承認を受けている病院は以下の通りです。
1 国立研究開発法人国立がん研究センター中央病院
2 順天堂大学医学部附属順天堂医院
3 日本医科大学付属病院
4 日本大学医学部附属板橋病院
5 東邦大学医療センター大森病院
6 久留米大学病院
7 北里大学病院
8 聖マリアンナ医科大学病院
9 東海大学医学部付属病院
10 近畿大学病院
11 自治医科大学附属病院
12 長崎大学病院
13 山口大学医学部附属病院
14 高知大学医学部附属病院
15 秋田大学医学部附属病院
16 東京慈恵会医科大学附属病院
17 大阪医科薬科大学病院
18 慶應義塾大学病院
19 福岡大学病院
20 愛知医科大学病院
21 獨協医科大学病院
22 埼玉医科大学病院
23 昭和大学病院
24 兵庫医科大学病院
25 金沢医科大学病院
26 杏林大学医学部付属病院
27 川崎医科大学附属病院
28 帝京大学医学部附属病院
29 産業医科大学病院
30 藤田医科大学病院
31 東京医科歯科大学病院
32 千葉大学医学部附属病院
33 信州大学医学部附属病院
34 富山大学附属病院
35 神戸大学医学部附属病院
36 香川大学医学部附属病院
37 徳島大学病院
38 弘前大学医学部附属病院
39 東北大学病院
40 広島大学病院
41 琉球大学病院
42 北海道大学病院
43 旭川医科大学病院
44 鳥取大学医学部附属病院
45 愛媛大学医学部附属病院
46 宮崎大学医学部附属病院
47 鹿児島大学病院 鹿
48 山形大学医学部附属病院
49 三重大学医学部附属病院
50 大阪大学医学部附属病院
51 岡山大学病院
52 大分大学医学部附属病院
53 福井大学医学部附属病院
54 新潟大学医歯学総合病院
55 国立大学法人金沢大学附属病院
56 熊本大学病院
57 名古屋大学医学部附属病院
58 滋賀医科大学医学部附属病院
59 京都大学医学部附属病院
60 島根大学医学部附属病院
61 山梨大学医学部附属病院
62 浜松医科大学医学部附属病院
63 佐賀大学医学部附属病院
64 筑波大学附属病院
65 東京大学医学部附属病院
66 九州大学病院
67 防衛医科大学校病院
68 岐阜大学医学部附属病院
69 公立大学法人横浜市立大学附属病院
70 関西医科大学附属病院
71 公立大学法人福島県立医科大学附属病院
72 和歌山県立医科大学附属病院
73 名古屋市立大学病院
74 大阪公立大学医学部附属病院
75 奈良県立医科大学附属病院
76 札幌医科大学附属病院
77 京都府立医科大学附属病院
78 東京医科大学病院
79 公益財団法人がん研究会有明病院
80 国立研究開発法人国立国際医療研究センター病院
81 静岡県立静岡がんセンター
82 国立研究開発法人国立がん研究センター東病院 40%
83 地方独立行政法人大阪府立病院機構大阪国際がんセンター
84 群馬大学医学部附属病院
85 国立研究開発法人国立循環器病研究センター
86 岩手医科大学附属病院
87 聖路加国際病院
承認要件は以下の通りです。
医療法施行規則に定められた高度な医療を提供する場である、という観点から厳しい承認要件が定められています。
・高度の医療の提供、開発及び評価、並びに研修を実施する能力を有すること ・他の病院又は診療所から紹介された患者に対し、医療を提供すること(紹介率50%以上、逆紹介率40%以上)【病床数】400床以上の病床を有することが必要【人員配置】医 師:通常の2倍程度の配置が最低基準。医師の配置基準の半数以上がいずれかの専門医。薬剤師:入院患者数÷30が最低基準。(一般は入院患者数÷70)看護師等:入院患者数÷2が最低基準。(一般は入院患者数÷3)管理栄養士:1名以上配置【構造設備】集中治療室、無菌病室、医薬品情報管理室が必要【 医療安全管理体制の整備 】・医療安全管理責任者の配置・専従の医師、薬剤師及び看護師の医療安全管理部門への配置・監査委員会による外部監査・高難度新規医療技術及び未承認新規医薬品等を用いた医療の提供の適否を決定する部門の設置原則定められた16の診療科を標榜していること査読のある雑誌に掲載された英語論文数が年70件以上あること 等(厚生労働省 特定機能病院制度の概要より引用:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137801.html) 特定機能病院の役割について
特定機能病院には4つの役割があります。
厚生労働省が定めている承認要件も、この役割に則って定められています。
それぞれの役割について詳しく紹介します。
高度の医療の提供
特定機能病院の役割の1つ目は、高度の医療の提供です。高度な医療の提供とは平たく言うと、一般の病院では対応できない疾患の治療が行えるということ。一般の病院との違いとも言える、最も大きな役割だと言えるでしょう。高度な医療を提供すべく、最先端の医療提供の体制づくりが整っていることも重要なポイントです。医療法施行規則(昭和二十三年厚生省令第五十号)の第九条の二の二では、以下のように実績の報告も義務付けられています。特定機能病院の開設者は、次に掲げる事項を記載した業務に関する報告書を厚生労働大臣に提出しなければならない。一 高度の医療の提供の実績二 高度の医療技術の開発及び評価の実績三 高度の医療に関する研修の実績(厚生労働省:https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000137801.html) 高度の医療技術の開発・評価
特定機能病院の役割の2つ目は、高度の医療技術の開発・評価です。
厚生労働大臣の承認を受け、特定機能病院に認定されている医療機関の多くは、大学病院の本院です。
大学病院は研究のスケールも大きい傾向にあるのが特徴。
令和3年4月1日時点で承認されている87病院のうち、おおよそを占める79病院が大学病院であり、高度な医療技術の開発が期待できます。
高度の医療に関する研究
特定機能病院の役割の3つ目は、高度の医療に関する研究です。
高度な医療技術の開発・評価のみならず、研究を続けることで医療技術の進化を促進します。
高度な医療安全管理体制
特定機能病院の役割、4つ目は高度な医療安全体制です。
高度な医療技術を提供するに当たり、水準の高い医療安全体制は欠かせません。
厚生労働省は平成27年4月に「大学附属病院等の医療安全 確保に関するタスクフォース」の設置を行いました。
大学附属病院において医療安全に関する大規模な事案が相次いで生じたことにより設置され、特定機能病院ではより高度な医療安全体制が確保されるよう検査が行われました。
高度な医療安全の水準を保つため、医療安全管理体制は改正が重ねられています。
特定機能病院と一般の病院との違い
特定機能病院と一般病院との最も大きな違いは、高度な医療を提供しているかどうか、という点です。
特定機能病院は、高度な最先端医療を提供しており、対応している疾患も幅広いのが特徴。特定機能病院では、一般の病院では対応できない怪我や病気の治療を行っています。
特定機能病院で治療を受けることができるのは、紹介を受けた患者のみです。
一般病院で検査等を行い治療が難しいと判断された場合には、特定機能病院への紹介を受け、受診することができます。
また、高度な医療を提供するために人員配置も一般の病院と異なります。
一般的な病院よりも多く配置されており、人員に余裕があると言えるでしょう。
特定機能病院での看護師の仕事について
特定機能病院での看護師の役割は、一般の病院で求められる役割と大きな差はありません。といっても、クリニックなどとは診療内容が異なりますので、一般的な大学病院や総合病院と同じような業務内容だと捉えると良いでしょう。
日常的な業務内容は、バイタルサイン測定や採血、身体のケア、医師の指示に基づく投薬、看護記録など。
その他には、配属された科ごとのケアを行います。
特定機能病院で働くメリット・デメリット
特定機能病院の最大の特徴は最先端の高度な医療を提供している、という点です。
最先端の医療を提供する医療現場で看護師として働くことのメリット・デメリットを紹介します。
特定機能病院で働くメリットとは
特定機能病院で看護師として働くメリットは、以下の通りです。
・高度な最先端医療に触れることができる
・さまざまな専門分野の医療スタッフと関われる
・技術面を磨くことができる
・多くの知識を吸収できる
・患者さんと密なコミュニケーションが取れる
・資格取得などのサポートが受けられる
・福利厚生が十分にある
看護師にも高度な看護技術が求められるため、スキルアップのための研修やフォロー体制は万全です。
医療従事者として学びの多い環境であることは、間違いありません。
規模の大きな大学病院では、福利厚生も整っており働きやすい環境であると言えるでしょう。
特定機能病院で働くデメリットとは
特定機能病院で働くデメリットは、以下の通りです。
・夜勤があり、生活リズムが崩れやすい
・知識、技術が十分でないと仕事についていけない可能性がある
・多忙になる可能性がある
・緊張感のある職場である
・医療事故が発生した際の損失が大きい
特定機能病院では深刻な医療事故が発生した場合、承認を取り消されてしまう可能性があります。
実例としてもあり、承認が取り消されてしまった場合には、経営が傾いてしまう恐れがあります。
医療事故が起こってしまった際には、給与が減ってしまったり、ボーナスに影響する可能性がありますので、損失は大きいと言えるでしょう。
特定機能病院で働くのが向いている人の特徴
特定機能病院で働くのが向いている人の特徴はズバリ、医療従事者として成長する意欲がある人です。
一般の病院よりも多忙かつ高度な技術が求められる特定機能病院では、意欲のある看護師でなければ仕事についていくことが難しいでしょう。
看護師としてスキルアップしたい、より高度な医療技術を吸収したいと考えている人にとっては、夢のような職場だと言えます。
一方看護技術に不安があったり、学習し続けることに抵抗感がある方は、仕事についていくのが精一杯になってしまうかもしれません。
また、患者さんに手厚い看護を提供したい人にとっても、特定機能病院は理想的な職場だと言えます。
特定機能病院は人員配置に余裕があり、患者さんに対する看護師の数が一般の病院よりも多いのが特徴です。
患者さん一人一人に接する時間も多く確保できますので、コミュニケーションを十分に取りながら、手厚い看護を提供することが可能です。
まとめ
今回は特定機能病院について紹介しました。
特定機能病院は、高度な医療を提供する病院のこと。
定められた要件を満たし、厚生労働大臣の承認を受けた病院のみが特定機能病院として認定されます。
ハイレベルな医療を提供する医療現場で働くことは、看護師としてのスキルアップに繋がるでしょう。
特定機能病院で働きたい、と思った場合は病院の給与面や勤務時間をよくリサーチし、自分にあった労働環境の職場を選択しましょう。