今回は地域包括ケア病棟についてわかりやすく解説します。
地域包括ケア病棟の特徴、施設基準や入院患者さん、回復期リハビリテーションとの違いについてまとめました。
また、地域包括ケア病棟に入院する患者さん側のメリット・デメリット、働く看護師側のメリット・デメリットも解説します。
地域包括ケア病棟とは
まずは、地域包括ケア病棟とは何かをわかりやすく紹介します。
地域包括ケア病棟とは、一言で言うと「地域包括ケアシステムを支える役割を担う病棟」のこと。
この章では施設基準や対象の患者さん、地域包括ケア病棟の役割についてまとめました。
地域包括ケア病棟の施設基準
地域包括ケア病棟の施設基準は以下のように定められています。厚生労働省は地域包括ケア病棟について、12の施設基準項目を設けています。① 疾患別リハビリテーション又はがん患者リハビリテーションを届け出ていること② 入院医療管理料は病室単位の評価とし、届出は許可病床200床未満の医療機関で1病棟に限る。③ 療養病床については、1病棟に限り届出することができる。④ 許可病床200床未満の医療機関にあっては、入院基本料の届出がなく、地域包括ケア病棟入院料のみの届出であっても差し支えない。⑤ 看護配置13対1以上、専従の理学療法士、作業療法士又は言語聴覚士1人以上、専任の在宅復帰支援担当者1人以上⑥ 一般病棟用の重症度、医療・看護必要度A項目1点以上の患者が10%以上⑦ 以下のいずれかを満たすこと ア) 在宅療養支援病院、イ) 在宅療養後方支援病院(新設・後述)として年3件以上の受入実績、ウ) 二次 救急医療施設、エ) 救急告示病院⑧ データ提出加算の届出を行っていること⑨ リハビリテーションを提供する患者について、1日平均2単位以上提供していること。 ⑩ 平成26年3月31日に10対1、13対1、15対1入院基本料を届け出ている病院は地域包括ケア病棟入院料を届け出ている期間中、7対1入 院基本料を届け出ることはできない。⑪ 在宅復帰率7割以上 (地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)1のみ)⑫ 1人あたりの居室面積が6.4㎡以上である (地域包括ケア病棟入院料(入院医療管理料)1のみ)看護職員配置加算:看護職員が最小必要人数に加えて50対1以上看護補助者配置加算:看護補助者が25対1以上(原則「みなし補助者」を認めないが、平成27年3月31日までは必要数の5割まで認められる。)救急・在宅等支援病床初期加算:他の急性期病棟(自院・他院を問わず)、介護施設、自宅等から入院または転棟してきた患者について算定(引用:厚生労働省HP) 地域包括ケア病棟の入院対象となる患者さん
地域包括ケア病棟の入院対象となる患者さんは
・急性期医療を経過し、継続観察が必要な患者さん
・在宅において療養を行い、一時的に症状が悪化してしまった患者さん
・在宅、施設復帰を希望している患者さん
・回復期リハビリテーション病棟への転院を控えている患者さん
など。
地域包括ケア病棟には、比較的症状が落ち着いている患者さんが入院し、最終的には在宅復帰を目的として治療に取り組んでいます。
また、この他にも介護者のレスパイト目的で入院される患者さんもいます。
レスパイトとは、介護者の休息を確保することを意味しており、継続して介護を行うための小休止として活用されている制度です。
地域包括ケア病棟の3つの役割
地域包括ケア病棟には、大きく分けて3つの役割があります。
1つ目は、ポストアキュート、つまり急性期からの受け入れです。
医療現場の中核機能として、高度急性期や急性期後の治療、回復期のリハビリテーションを必要とする患者さんの急性期からの受け入れを行うこと。
2つ目は、サブアキュート機能、つまり緊急時の受け入れです。
在宅や施設療養において、日常的な生活支援が必要な患者さんの骨折や肺炎などの軽症急性疾患に対する緊急時の受け入れを行うこと。
3つ目は、在宅や生活への復帰を支援する役割です。
地域包括ケア病棟はこれらの役割を果たし、地域医療の中核となっています。
地域包括ケア病棟の入院料金
地域包括ケア病棟の入院料金は、一般的な入院費と計算方法が異なります。
1日あたりの入院料金は決まっており、その中にさまざまな項目の料金が含まれているのが特徴です。
1日あたりの入院料金には、入院基本料や処置に関する費用、薬品の費用、検査にかかる費用などが含まれています。
また、令和2年度に診療報酬が改定され入院料金の実績要件が変更されました。
詳しい入院料金については、入院を希望している病院に問い合わせて確認しましょう。
地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟の違いとは
地域包括ケア病棟とよく混同されるのが、回復期リハビリテーション病棟です。
地域包括ケア病棟と回復期リハビリテーション病棟には似た部分があります。
どちらも主な入院目的は在宅や施設復帰へのリハビリテーションです。
ただし、回復期リハビリテーション病棟は入院の対象となる疾病が限られています。
脳血管疾患、脊椎損傷、頭部外傷などの疾病や、大腿骨、骨盤、脊椎などの骨折、股関節や膝関節の置換手術後の患者さんは、回復期リハビリテーション病棟へ入院対象になります。
地域包括ケア病棟の受け入れ疾病に限りはなく、どのような疾病の方でも入院が可能です。
この他にも入院期間やリハビリテーションの目的などの部分もそれぞれ異なります。
地域包括ケア病棟に入院する患者さんのメリット・デメリット
地域包括ケア病棟に入院することで、患者さんにとってどのようなメリットがあるのでしょうか。
また、デメリットについても紹介します。
地域包括ケア病棟に入院する患者さんのメリット
地域包括ケア病棟に入院することによって、患者さんは在宅復帰への準備を整えることができます。
例えば大きな怪我をして急性期病棟に入院した場合、急性期病棟では症状が軽快したら退院することになります。
ですが、すぐに自宅に帰り生活を送ることに不安を感じる患者さんもいらっしゃいます。
家の階段を上手に登れるか、買い物などの日常生活に必要なことをこなせるか。
この際に地域包括ケア病棟に転院し、リハビリテーションを行うことで、在宅復帰に関する不安ごとを軽減することができます。
また、地域包括ケア病棟は在宅で治療を行っている患者さんの受け入れも行っていますので、症状の悪化や病状に不安がある場合には入院が可能です。
地域包括ケア病棟は在宅で治療を継続している方にとって、もしものときの強い味方ですね。
地域包括ケア病棟に入院する患者さんのデメリッ ト
地域包括ケア病棟への入院にはデメリットもあります。
まずは、入院期間が限られていること。
地域包括ケア病棟には基本的に60日間しか入院ができません。
原則、60日経過した患者さんは在宅や施設に復帰しなければならないのです。
長期的にじっくりとリハビリテーションを行いたい人からすると物足りない日数かもしれません。
また、地域包括ケア病棟では高度急性期や急性期の患者さんの受け入れは難しく、症状によっては入院が難しい場合もあります。
地域包括ケア病棟は、比較的病状の軽い、リハビリテーションを目的とした方の入院がメインとなります。
地域包括ケア病棟での看護師の仕事とは
続いて地域包括ケア病棟での看護師の仕事内容を紹介します。
地域包括ケア病棟が一般病棟と異なる特徴を持つように、看護師の日々の業務内容も、一般病棟とは異なる部分があります。
日々のケア
地域包括ケア病棟での看護師の主な仕事は、日々のケアです。
一般的な入院病棟と同様に身体のケアを行います。
患者さんのバイタルサインを測定したり、身体の清潔ケアなどを、受け持ち患者さんによって行うケアは多岐にわたります。
ですが、在宅復帰を手助けできるよう、自分でできることは患者さんにお願いし残存機能の保持を目指しましょう。
また、病棟の環境整備も看護師の業務です。
病棟を清潔に保てるように療養環境を整えましょう。
入院の対応
地域包括ケア病棟では、入院日数が短いことから、患者さんの入れ替わりも多いのが特徴です。
入院の受け入れは日々の業務の一環です。
急性期の治療を経過し、リハビリテーションを行うために入院する患者さんも多くいます。
患者さんが必要なリハビリテーションを行い、安心して退院できるよう入院目的やゴールを、入院時に確認します。
退院に向けてのサポート
退院の支援は地域包括ケア病棟において、重要な業務です。
在宅での実際の生活をイメージしながら、退院に向けてサポートを行います。
退院後に使用する社会福祉や、介護サービスについても提案やサポートが必要です。
退院に向け外出や外泊などで、退院後の生活を想定しながら入院生活が遅れるよう支援します。
また、実際に退院の日を迎えた際には、服薬や今後の通院スケジュールなどの支援も行います。
ご家族の支援
地域包括ケア病棟では、患者さんのケアはもちろん、ご家族との連携や支援も重要な要素となります。
退院に関して不安を抱えているのは、患者さんだけではありません。
在宅で生活をともにする患者さんのご家族も、同様に不安を抱えています。
ご家族の不安を少しでも取り除けるよう、在宅での生活を想定して情報提供や支援を行います。
また、ご家族の介護負担が大きい場合には、レスパイト入院や介護サービスの導入に関する提案を行うことも重要です。
多職種との連携
地域包括ケア病棟では、一般病棟よりも多くの職種の方々と連携して業務を行う必要があります。
日々のリハビリテーションに関しては、理学療法士や作業療法士と連携を行います。
この他にも医師や薬剤師、心理士などと情報提供を行いながら必要なケアを提供します。
また、退院後の生活支援にはソーシャルワーカーや退院先の施設職員などとの連携も欠かせません。
病棟のスタッフはもちろん、多職種と関わりながら支援を行う必要があります。
地域包括ケア病棟で看護師として働くメリット・デメリット
続いては地域包括ケア病棟で看護師として働くメリット・デメリットを紹介します。
一般病棟と異なる特徴のある地域包括ケア病棟で勤務することには、向き不向きがあります。
自分にあった職場で勤務できるよう、地域包括ケア病棟で働く良し悪しを知っておきましょう。
地域包括ケア病棟で看護師として働くメリット
地域包括ケア病棟で勤務する最大のメリットは、やりがいをもって働けることでしょう。
症状が軽快して退院する患者さんを見るのは、看護師としてこれ以上ない喜びです。
在宅復帰に向け、イメージを膨らませながら工夫して日々のケアを行うことで、患者さんの残存機能を引き出すことができます。
また、多職種と連携を行いながら業務をすることで、さまざまな知識を得ることができるのも嬉しいですね。
社会福祉や地域のサポートに詳しくなれます。
地域包括ケア病棟に入院している患者さんは、比較的病状が安定しており、急性期病棟のように患者さんのバイタルのモニタリングなどは、少ない傾向にあります。
新人看護師など、モニターの読み方など詳しい知識がない方でも、働きやすい環境だと言えるでしょう。
地域包括ケア病棟で看護師として働くデメリット
地域包括ケア病棟で看護師として働くデメリットは、急性期病棟のようにケアを学べない点です。
先程、新人看護師でも働きやすい環境であると述べましたが、一方で緊急時の対応などの技術を学べない環境であるとも言えます。
さまざまな経験を積みたいと思っている方には、急性期病棟での勤務が向いているでしょう。
まとめ
今回は地域包括ケア病棟について紹介しました。
地域包括ケア病棟には、在宅や施設への退院を目指す方々が入院しています。
60日間と短い入院期間の中で、退院後に自分らしい生活を送れるようにリハビリテーションや治療を行います。
症状が軽快し退院する患者さんを見守れる地域包括ケア病棟は、看護師としてやりがいのある職場です。
超高齢化社会を迎え、より地域と密着した医療が求められる今、地域包括ケア病棟はよりニーズが高まっていく存在だと言えるでしょう。