医療現場で働くと、新人ナースは先輩の看護師さんに「今のことはインシデントレポートに書いて」「ヒヤリ・ハットだね」 と言われることがあるでしょう。
このインシデントレポートやヒヤリ・ハットとはいったい何でしょうか?
今回は、インシデントレポートの書き方から目的まで詳しく解説します。
インシデントレポートの必要性って?
「インシデント」とは、医療現場において医療ミスにつながるような出来事や、誤った医療行為をしてしまったが、結果としては患者に被害がなかったという出来事のことです。
「インシデントレポート」はそのような情報を把握、分析する報告書にあたります。
インシデントレポートの目的
インシデントレポートは、患者さんに被害を及ぼす医療行為や医療ミスを防止するのに必要です。別名では「ヒヤリ・ハット」とも呼ばれていますよ。
重大な医療事故を防ぐために、医療ミスになりかねない、ヒヤリとした行為はきちんと把握し反省していかなければいけません。
インシデントレポートで要因を知り対策を
インシデントレポートでは記載した行為の、要因を探ることも大切です。
同じインシデントをしないようにするために要因を知りましょう。
医療業界でよく耳にする「ハインリッヒの法則」では、1件の重大事故の背景に29件の軽微な事故があり、さらにその背景には300件のインシデントが存在するとされています。
インシデントレポート作成後のなぜなぜ分析とは
なぜなぜ分析とは、問題が起こったときに“なぜそれが起こったのか?“なぜ?なぜ?“の問いかけを繰り返していくことで根本的な原因を探る方法です。
インシデントレポートを最大限に活用する上でなぜなぜ分析が役に立ちます。
インシデントレポートに記載する内容と書き方
では、インシデントレポートの具体的な書き方についてご紹介します。
医療現場で必要なインシデントレポートの書式って?
インシデントレポートは、医療現場ごとに書式があります。
医療現場ごとに違う書式になっているので、最初は書き方に戸惑うことがあるかもしれません。しかしどんな書式でも、インシデントレポートに記載する内容の基本は同じです。
書き方の基本を押さえてインシデントレポートを記載していきましょう。
インシデントレポートはいつまでに作成するべき?
インシデントレポートは、発生後の記憶が薄れないうちに作成しましょう。
発生から時間経つと内容があいまいになり、作成にも時間がかかってしまいます。
できるだけ発生した現場が目で見える内に作成するのがおすすめです。
インシデントレポートは誰が書くの?
インシデントレポートを誰が書くかは決まっていません。
第一発見者、受け持ち、関係者全員などその時々によっていろいろなパターンが考えられます。記載することよりも、再発を防止することを基盤に考えて積極的に作成していきましょう。
インシデントレポートの提出先は?
インシデントレポートの提出先は、勤めている病院や施設によって取り決めていることが多いようです。
最近は、インシデントレポート自体をネット上で記載する医療現場もあるので、その場合には電子書類をネット上で指定の宛先へ提出することになります。
インシデントレポートは5w1hでなく6w1hで書く
インシデントレポートは、報告したあとの分析が大切。
事実を正確に伝えることで、要因が分析しやすいレポートになりますよ。
インシデントレポートの記載には6w1hをベースにしましょう。
〇When(いつ)
〇Where(どこで)
〇Who(誰が)
〇whom(誰に)
〇Why(なぜ)
〇What(何を)
〇How(どのように)
6w1hを意識しながら、時系列にして記載すると誰が読んでも読みやすいレポートになります。
インシデントレポートにはレベル0~2の記載が必要
「インシデント」は医療事故につながり兼ねない行為のこと。
そして「アクシデント」は医療事故のことなので、インシデントレポート記載には該当しません。
インシデントレポートには、以下を参考にインシデントのレベル0~2を記載しましょう。
<インシデント>
レベル0→間違ったことが発生したが、患者には実施されなかった。
レベル1→間違ったことを実施したが、患者に変化は生じなかった。
またはその場の対処ですみ、今後に影響を及ぼさないと考えられる。
レベル2→生命に異常はないが今後経過観察を要し、検査の必要性が出た。
緊急の治療は必要なかった
<アクシデント(医療事故にあたる)>
レベル3→事故により生命に異常はないが、緊急の治療処置が必要となった。
入院の日数が増加した。
レベル4→事故により生命への影響が強い。患者に障害が残った。
レベル5→事故が死因となった。
インシデントレポートで看護師の国家試験によく出題される問題
最後に、看護師の資格試験でインシデントレポートに関して出題された問題をご紹介します。
“インシデントレポートの目的はどれか“
患者の安全・安楽を守る看護技術の中の“医療安全対策“で出題された問題です。
【問題内容】
インシデントレポートの目的はどれか。
1. 責任の追及
2. 再発の防止
3. 懲罰の決定
4. 相手への謝罪
【解答と解説】
✖1. 責任の追及
責任の追及のためではない。
〇2. 再発の防止
再発防止を目的とする。
✖3. 懲罰の決定
懲罰の決定が目的ではない。
✖4. 相手への謝罪
相手への謝罪が目的ではない。
インシデントレポートあるいはアクシデントレポートは医療事故になりそうな事例や医療事故について記述し、報告・共有するものである。目的は、事実を組織として分析し、その要因を明らかにし、再発防止のための対策を講じることである。
“インシデントレポートについて正しいのはどれか“
看護におけるマネジメントの“医療安全のマネジメント“で出題された問題です。
【問題内容】
インシデントレポートについて正しいのはどれか。
1. 警察への届出義務がある。
2. 法令で書式が統一されている。
3. 事故が発生するまで報告しない。
4. 異なる職種間で内容を共有する。
【解答と解説】
✖1. 警察への届出義務がある。
警察への届出義務はない。
✖2. 法令で書式が統一されている。
法令で書式は統一されておらず、医療施設等ごとに書式がある。
✖3. 事故が発生するまで報告しない。
インシデントレポートは医療事故になりそうな事例について記述し、報告するものであるので、事故が発生するまで報告しないものではない。
〇4. 異なる職種間で内容を共有する。
インシデントレポートは医療事故になりそうな事例について記述し、報告するものである。目的は事実を医療施設等全体の異なる職種間で共有・分析し、その要因を明らかにして、再発防止のための対策を講じることである。
インシデントレポートは必修問題でも出題される頻出事項である。なお、医療事故を報告するのはアクシデントレポートである。
インシデントレポートを作成して事故やミスを防ごう!
インシデントレポートは、医療事故になり兼ねない行為があったときに書くレポートであることが分かりました。インシデントレポートは再発防止のための手段です。
積極的にインシデントレポートを作成して、大きな医療ミスや事故を防ぎましょう!