仕事・スキル

心臓リハビリテーション指導士(看護師の資格)

心臓リハビリテーション指導士

更新日:2021.07.13

公開日:2020.08.19

1.心臓リハビリテーション指導士の資格とは

心臓リハビリテーション指導士とは心不全や心筋梗塞などの心臓循環器疾患を患っている方や心臓・血管の手術後の方に精神的な心のケアや治療を行い、リハビリテーションの手助けをする医療従事者のことをいいます。

この資格は日本心臓リハビリテーション学会によって2000年に発足されました。
心臓リハビリテーションは以前まで急性心筋梗塞後の離床等が目的でしたが、近年心臓手術などの医療技術の進歩により入院期間が短縮されてきているため、現在は再発予防を目的とした心臓リハビリテーションが行われています。

2.心臓リハビリテーション指導士はどんな仕事?

心臓リハビリテーション指導士は患者の入院から退院までをリハビリテーションを通して総合的にサポートします。
例としては、心臓手術直後の患者の歩行トレーニング、食事をとるうえでの栄養素の確認、動脈硬化の予防として禁煙指導、心理カウンセリングなど様々な仕事を担当します。
患者が快適な生活が送れるように運動療法や食事療法を計画し、一人一人に合わせた指導を行うことが重要になってきます。

3.心臓リハビリテーション指導士になるには

心臓リハビリテーション指導士になるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。 

【受験資格】

●特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会主催の講習会を該当年度に受講していること(講習会は、一部・二部で構成されている) 
●以下の11職種の資格のいずれか1つ以上を有していること 
 医師、看護師、理学療法士、臨床検査技師、管理栄養士、薬剤師、臨床工学技士、臨床心理士、作業療法士、健康運動指導士、公認心理師 
●申請時に特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会の会員であり、直近2年以上継続して会員であること 
●心臓リハビリテーション指導の実地経験が1年以上あること、または心臓リハビリテーション研修制度により受験資格認定証の交付を受けていること 
●下記の申請書類がすべて揃っていること 
 ①申請書 
 ②推薦書 
 ③10の症例報告 
 ④11の医療系資格(上述)の免許のコピー 
 ⑤心リハ指導士研修利用者はその認定証(上述) 
 ⑥受験票用の顔写真2枚(「4.5センチ×3.5センチ」のサイズの写真が2枚必要、裏面には氏名を記載) 
 ※①~③は「募集要項」にてそれぞれの書式のダウンロードが可能 

また、募集要項や書式は毎年変更されます。希望される方は申請年の3月ごろに掲載されますので、学会ホームページをチェックしてみてください。 
特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会

【資格取得までの流れ】

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つぎに、資格取得までのおもな流れについて説明していきます。項目ごとに注意すべきポイントがありますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。 

「認定試験申請」  
上述のとおり、認定試験を受けるためには6つの申請書類をすべて提出する必要があります。 
提出書類に誤りがないように、日付や名前、記載漏れなど十分注意してください。書類のフォーマットは毎年異なる可能性がありますので、必ず今年度のフォーマットをホームページから入手するようにしましょう。推薦状と表紙以外は、丸印などを含めて手書きを不可としています。 

 ↓  

「書類選考」  
書類をすべて郵送したら、次は書類選考が行われます。 
記入・捺印漏れがないか、本年度のフォーマットを使用しているかはもちろんのこと、『10の症例報告』に関しては使い回しなどの不正は認められません。なんとなく穴を埋める、ほかからコピーペーストする、同一文面で作成するといった行為は不備とみなされてしまいますので、自身で調べてしっかりと記載するようにしましょう。 

なお、書類不備の再提出も認められておりません。書類選考はとても厳しくチェックされていますので、書類選考で落とされてしまわないよう十分に注意して作成しましょう。 

書類選考を通過した方には、のちに受講料・受験料の振込用紙が事務局から送付されます。  
●受講料:第1部 6,000円、第2部4,000円 計10,000円 
●審査料:15,000円 
以上の金額を期日までに必ず支払いましょう。 

 ↓  

「講習会受講」  
講習会は第一部と第二部で構成されており、原則どちらも受講必須となります。 
指導士の講習会は試験前日と当日の二日間と行われるため、働きながら資格取得を目指す受験者にとって最後の試練はここといっても過言ではありません。 
2020年度の講習会の内容は以下のとおりです。 

<第一部・講習会の内容>  
・総論 運動生理学・運動心臓病学  
・運動処方 心リハプログラム(急性期・心臓術後)  
・運動処方 心リハプログラム(回復期・維持期)  
・救急処置・安全管理  
・心肺運動負荷試験実習  

<第二部・講習会の内容>  
・総論 病態生理・診断治療  
・栄養学  
・臨床心理学 

講習会と認定試験に関しては、オンラインでの参加も可能となります。※オンラインの場合、スマートフォン・タブレットでの参加はできません。インターネット環境、Webカメラ、パソコンを準備する必要があります。 
 
なお、第一部の講習会を以前に受講し、講習会受講証明書を提出している場合は免除の対象となりますので、詳しくは学会のホームページを確認してみてください。 
特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会

 ↓  

「認定試験」  
認定試験は講習会終了後に実施され、 50問(時間60分)の択一式(一部2門選択のマークシート式で構成)の筆記試験となっています。 
内容は、学会が発行している「心臓リハビリテーション必携」の対策テキストを中心に、心臓リハビリの基礎知識から会員専用の学会誌に記載された内容まで、幅広く出題されます。 
こちらもオンラインでの参加が可能です。 

 ↓  

 「合格発表」  
後日、日本心臓リハビリテーション学会のホームページにて発表され、合格者には認定証が郵送されます。 

(参考:特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会『心臓リハビリテーション指導士試験について』)

【更新について】

心臓リハビリテーション指導士の資格を取得後は5年ごとに更新が必要となります。 以下の条件をすべて満たす必要がありますので更新の際には注意してください。  

更新に必須の条件 
・心臓リハビリテーション指導士更新のための講習会などに参加し、5年間に50単位以上取得していること  
・期間中に日本心臓リハビリテーション学会(学術集会)に最低1回は参加していること  
・5年間の会費を完納していること  
・更新料10,000円を支払っていること  
・申請書類を事務局に送付していること 


(参考:特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会『心臓リハビリテーション指導士  更新に必須の条件』)

4.心臓リハビリテーション指導士をとることは難しい?

看護師が心臓リハビリテーション指導士の資格を取るにはどれくらいの難易度となっているのでしょうか。実際に、過去5年間の看護師の合格率をみてみましょう。 

■過去5年間の看護師の合格率 

 合格 不合格 合格率(%) 
第16回 47 59 44.3 
第17回 38 81 31.9 
第18回 43 61 41.3 
第19回 25 70 26.3 
第20回 55 57 49.1 


過去5年間を遡ってみると、看護師の平均合格率は38.59%。もっとも高かったのが第20回の49.1%でした。この数字は全体的にみて高いのでしょうか、それとも低いのでしょうか。職種別の合格率から比較してみましょう。 

■第20回 職種別合格率 

 合格 不合格 合格率(%) 
医師 152 98.1 
看護師 55 57 49.1 
理学療法士 451 162 73.6 
臨床検査技師 12 75.0 
管理栄養士 50.0 
薬剤師 80.0 
臨床工学技士 
臨床心理士 
作業療法士 15 16 48.4 
健康運動指導士 50.0 
合計 697 251 73.5 

第20回の認定試験の合格率は医師では98%、作業療法士は48%とばらつきがあります。 
全体の平均は約66%。看護師の合格率49.1%はやや低めとなっています。 
試験問題はマークシート形式で日本心臓リハビリテーション学会が発行しているテキストを中心に出題されるため、比較的試験対策はしやすいと考えられます。 
 
また、運動中の病態生理・運動処方や食事療法については必ず出題されます。心臓リハビリテーション担当者として最低限知っておかなければならない心疾患の病態・薬物療法などもおさえておく必要があります。 
 

(参考:特定非営利活動法人日本心臓リハビリテーション学会『認定試験合格者と講評』)

5.心臓リハビリテーション指導士をとる事のメリットデメリット

資格取得によって仕事の視野が広がることがメリットの一つといえます。 
心臓リハビリテーション指導士の活躍の場は大病院の循環器科や心臓リハビリテーション科だけではありません。現在では動脈硬化の予防や生活習慣病予防の生活指導を行うメディカルクリニックでも需要が高まっています。また、職場によっては資格手当がつく場合があるため、給与アップも見込めるでしょう。 
 
資格を取得することに関してのデメリットはとくにありません。問題があるとすれば、認定試験の難易度の高さにあります。受験した看護師のおよそ半分以上が不合格という現状。書類選考や講習会の大変さが如実に表れています。しかし、安心してください。万が一、不合格となった場合でも、翌年の再受験に限り症例報告の提出は必要なく、講習会の受講も必須ではありません。 
たとえ試験に落ちてしまったとしても、諦めずに再チャレンジしてみてくださいね。

6.心臓リハビリテーション指導士の現状と今後

現在、高齢化が進み生活習慣病を患っている方も増加している日本において、心臓リハビリテーション指導士は生活指導を行いながら、心疾患の再発予防ができる専門家として注目されています。

今後も心臓リハビリテーション指導士の需要は高まる一方と考えられ、取っておいて損はない資格といえるでしょう。

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