1.血管診療技師(CVT)の資格とは
血管診療技師(CVT)とは、 Clinical Vascular Technologistの略称で、日本では『血管診療技師』と呼ばれています。動脈硬化やエコノミークラス症候群のほか、糖尿病壊死などの血管疾患の治療に関して豊富な知識と高度な技術を有する医療従事者のことです。
血管診療技師(CVT)になるためには、「日本血管外科学会」「日本脈管学会」「日本静脈学会」「日本動脈硬化学会」の4学会で構成されている血管診療技師認定機構よりその分野における専門知識を取得していると認定を受ける必要があります。
2.血管診療技師(CVT)はどんな仕事?
血管診療技師(CVT)は、血管疾患(動脈硬化・下肢静脈瘤・糖尿病壊疽、エコノミークラス症候群など)の診療にたいして血管超音波検査やSSP検査、レントゲン検査など体に痛みを与えない検査である非侵襲検査を行う仕事です。
看護師の仕事は専門的なケアや食事の運搬など色々ありますが、血管診療技士の資格を所有していることで、先述した検査業務に携わることがメインになってくるでしょう。
もちろん、勤務先の病院によって業務の割合はさまざまですが、将来的にステップアップしたいと考えている人にとって価値のある資格・仕事だといえます。
3.血管診療技師(CVT)になるには
血管診療技師(CVT)になるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
【受験資格】
●以下6種のうち、いずれかの資格を取得していること
臨床検査技師、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師、理学療法士、准看護師
●以下の資格取得者で3年以上の実務経験があること(准看護師の場合は5年以上)
臨床検査技師、看護師、臨床工学技士、診療放射線技師、理学療法士
●血管疾患を専門とする医師のもとで十分な血管疾患診療の経験があること
●座学および実技、どちらの認定講習会も受講していること
【取得までの流れ】
つぎに、資格取得までのおもな流れについて説明していきます。項目ごとに注意すべきポイントがありますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「講習会の受講」
まず、血管診療技師(CVT)認定試験を受験するためには認定講習会の受講が必要となります。
講習会の内容は以下のとおりです。
【講習会の内容】
①脈管系の発生・解剖・生理
②大動脈疾患(大動脈瘤、大動脈解離、大動脈縮窄症、Marfan 症候群、他)
③頸動脈、末梢動脈疾患(慢性動脈閉塞症、血管炎、急性動脈閉塞)、及び四肢末梢循環障害(糖尿病足、他)
④静脈疾患(大静脈疾患、下肢静脈瘤、深部静脈血栓症、肺塞栓症、他)
⑤リンパ管疾患
⑥血管疾患に関する基本的検査(血圧、ABPI、TBPI、PWV、脈波、サーモグラフィー、トレッ ドミル検査、近赤外分光法、経皮酸素分圧、他)及びQOL評価(SF-36、WIQ等)
⑦動脈疾患の超音波検査(頸動脈、大動脈、下肢動脈、他)
⑧静脈疾患の超音波検査(深部静脈、表在静脈、他)
⑨その他の画像診断(動脈造影、静脈造影、MR、CT、他)
⑩フットケア、看護
⑪リハビリテーション
認定講習会は毎年構成学会の総会に合わせて年に3~4回開催されていますが、例外的に別日に開催される場合もあるため、必ず血管診療技師認定機構のホームページを確認しておきましょう。
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「認定試験申込」
すべての講習を受講したあとは、申請手続きが必要となります。
受験の申込は血管診療技師認定機構のホームページに専用のページが用意されるため、そちらに必要事項を入力して申請します。申請後、下記の申請書類を作成し、事務局へ送付してください。
【必要書類】
・申込書
・症例リスト(100例)
・症例のうち5例についてのレポート
・勤務証明書
・志望動機
・ホームページから申し込んだ際の返信メールのコピー
・認定講習会の受講証のコピー
・症例証明のコピー(100例分)
・症例証明コピー返却用のレターパックプラス
すべての書類を準備したあとは、受験料(10,000円)を支払い書類一式を血管診療技師認定機構事務局宛に送付します。
上述の条件をすべて満たせば、認定試験の受験資格を得ることができます。
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「認定試験」
申請が完了できたら、次は認定試験を受ける必要があります。
試験内容は以下のとおりです。
1 血管疾患(リンパ管を含む)の病態全般に関する基礎知識
2 血管疾患診療に関する専門知識
3 血管疾患検査に関する実技技術
試験は、1と2を合わせた多肢選択問題(40~50題程度)で出題されます。 3の試験に関しては、現在申請書類による評価審査をおこなっていますが、将来的には実技試験に変わる方向で検討しているようです。
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「合格発表」
合格者の受験番号が血管診療技師認定機構のホームページに掲載されます。
認定試験の合格者は登録手続き(登録料:10,000円)を行うと、完了次第認定証が送付されるようになります。
講習会の日程、受験にかかる費用など、詳細を知りたい方は血管診療技師認定機構のホームページをご覧になってください。
▶血管診療技師認定機構ホームページ
【更新について】
資格取得後は、5年ごとに更新をする必要があります。
更新する際には、更新料(5,000円)と以下の条件をすべて満たさなければなりません。
「更新の条件」
●臨床検査技師・看護師・臨床工学技士・診療放射線技師・准看護師・理学療法士の以上6種のうち、いずれかの資格を取得していること
●病院、診療所等において脈管専門医の指示のもと血管診療に従事していること(必須ではない)
●5年間に構成4学会総会に参加し、更新用講習会を受講するなどして、50単位以上を取得していること
●5年間に関連4学会総会のうち、いずれかの学会総会に出席していること
以上の条件を満たす方は更新申請書や業績単位表等の書類を事務局に提出することで、更新申請ができます。
4.血管診療技師(CVT)をとることは難しい?
2006年に国内で発足されてから比較的新しい資格となる血管診療技師ですが、2019年時点での血管診療技士の資格取得者は1,425名を超えています。
職種別の内訳は以下のとおりです。
(参考:血管診療技師認定機構『CVT取得者情報』)
同年に合格した人のうち、看護師は8名、准看護師は1名合格。 全国の看護師総数は約80万人(※1)とされているので、この資格はかなり専門性の高いものだということがわかります。受講申し込みの時点で血管診療に関する実務経験や知識が必要になるため、受験資格を得るまでに「難しい」と感じる人もいるようです。 とくに申請時の必要書類にある症例リスト(100例)に関しては、日本血管外科学会、日本静脈学会、日本脈管学会、日本動脈硬化学会のいずれかの血管疾患を専門とする指導医のもとで十分な血管疾患診療の経験(症例数100件)を積まなければなりません。
それだけハードルの高い資格ですが、近年の高齢化や生活習慣病の増加を踏まえると今後はさらに需要は高まることでしょう。
(※1厚生労働省『平成29年(2017)医療施設(静態・動態)調査・病院報告の概況』)
5.血管診療技師(CVT)をとることのメリットデメリット
血管診療技師の資格を取得するには、数々の血管診療の経験を積んでから認定試験を受けなければならず、受験資格を得るまで時間がかかる点についてはデメリットと捉える人もいるでしょう。
しかし、専門知識が必要な血管診療技士は各施設で高い需要があります。
資格に対して特別手当がつく職場も少なくありません。待遇の面でもかなり優遇される傾向にあるようです。資格取得に多少の時間や労力が必要となりますが、取得することで得られるメリットは大きい資格だといえます。
6.血管診療技師(CVT)の現状と今後
先述したように、血管診療技師(CVT)の総数は2019年の時点で1,400名を超え、都道府県に1名以上の血管診療技師が在住している状況にまで増加しました。
とはいっても、病院数や看護師の数に対して資格取得者はまだまだ少数だといえるでしょう。
その一方で血管疾患は高齢化や生活習慣病などの増加とともに、脈管専門医も増えてきているなかで、血管診療のスペシャリストでもある血管診療技師の需要は年々高まりつつあります。
血管診療技師の資格があることで、転職活動に有意に活かせるとともに看護師にとってもプラスになりますし、キャリアアップに繋がる資格だといえるのではないでしょうか。
興味のある方はぜひチャレンジしてみてくださいね。
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