1.体外循環技術認定士の資格とは
体外循環技術認定士とは医師の指示のもと人工心肺などの体外循環装置を操作する技術を有する医療従事者のことをいいます。
体外循環技術認定士は体外循環に関するエキスパートとして主に総合病院で活躍しています。
この資格は1987年より日本人工臓器学会、日本胸部外科学会、日本心臓血管外科学会日本体外循環医学会からなる4学会によって認定試験が実施されています。
2.体外循環技術認定士はどんな仕事?
体外循環技術認定士は医師が心臓を切開し手術をする際のサポートを行うという重要な役割を担っています。
医師の指示のもと人工心肺装置を操作することが仕事内容の一つですが、その他には体外循環装置の異常がみられたときに迅速な対応をしたり、トラブルが起こらないように装置の管理を行ったりと常に細心の注意を払って仕事をしています。
患者が安心して手術を受けるためには、体外循環技術認定士の存在が必要不可欠なのです。
3.体外循環技術認定士になるには
体外循環技術認定士になるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
【受験資格】
●日本人工臓器学会および日本体外循環技術医学会の会員であること
●心臓血管外科専門医認定機構が認定する施設や関連施設で体外循環に関する経験があり、下記の経験年数を満たしていること(常勤・準常勤に限る)
実務経験年数 | 資格 |
---|---|
1年以上 | 医師(心臓血管麻酔専門医・心臓血管外科専門医) |
3年以上 | 医師、臨床工学技士、看護師 |
4年以上 | 准看護師(高校卒業) |
5年以上 | 准看護師(中学卒業) |
●日本体外循環技術医学会教育セミナーカリキュラムを履修し、既定の単位を取得していること
●日本人工臓器学会教育セミナーを1回以上受講していること
●認定委員会が定めた日本胸部外科学会などの体外循環セミナーで10ポイント以上取得していること
●30症例以上の体外循環の操作経験があること
●目が見えない、耳が聴こえない、口がきけない者は受験資格を得ることができない
【取得までの流れ】
つぎに、資格取得までのおもな流れについて説明していきます。項目ごとに注意すべきポイントがありますので、ぜひ参考にしてみてくださいね。
「認定試験申込」
申込までに所定のセミナーを受講し、単位を取得しておく必要があります。
下記の書類を事務局に送付しなければなりません。
・申込書
・免許証のコピー(准看護師の場合は卒業証明書も必要)
・日本人工臓器学会教育セミナーの受講証明書のコピー
・日本体外循環技術医学会体外循環教育セミナーカリキュラムの受講票のコピー
・30症例以上の体外循環記録原本のコピーと体外循環業務施行証明書
・受験料振込み時の受領証のコピー
そのほか詳細については日本人工臓器学会のホームページをご覧ください。
▶一般社団法人 日本人工臓器学会
↓
「認定試験」
認定試験は、筆記(120分)および口答試験の二つで構成されています。
近年では、新型コロナウイルスの感染予防対策のため特例により口答試験は行われていません。今後状況に応じて試験内容が異なる可能性がありますので、試験を受けられる際には『一般社団法人 日本人工臓器学会』の公式ホームページを必ず確認しましょう。
筆記試験はおもに、5択のマークシート形式で100問出題されます。また試験時間は120分となっていますので、かなりペースを上げて問題を解いていかなければなりません。
過去の問題集やセミナーテキストなど、資料を繰り返し目を通して勉強しておくといいですね。
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「合格発表」
毎年11月上旬に開催される日本人工臓器学会大会にて合格発表が行われたのち、後日事務局から認定証が送付されます。その後、5年ごとに更新が必要となりますので、あらかじめ以下の条件に目を通しておきましょう。
【更新条件】
・5年間に認定委員会が定めた日本胸部外科学会などのセミナーで10ポイント以上取得していること
・5年間に日本体外循環技術医学会体外循環教育セミナーを1回以上受講していること
・常勤または準常勤であること(アルバイトは認められない)
・30症例以上の体外循環記録原本のコピーを提出すること
・更新時に日本人工臓器学会かつ日本体外循環技術医学会の会員であり、会費を完納していること
※いずれかの学会を脱退されている場合は更新申請ができないため、ご注意ください。
4.体外循環技術認定士をとることは難しい?
認定試験の合格率は公表されていませんが、試験問題は日本体外循環技術医学会教育セミナーカリキュラムなどの講習から出題されるため、セミナーをしっかり受講していればそこまで難易度は高くないといえるでしょう。 ただ、受験資格を得るためには30症例以上の体外循環の操作経験が必要とされ、一定以上の知識や経験を積んでいなければならず、受験資格を得るまでの過程に難しさを感じてしまうかもしれません。
5.体外循環技術認定士をとることのメリットデメリット
体外循環技術認定士を取得することに直接的なデメリットはありませんが、取得するまでの道のりは長く険しいものだということをあらかじめ踏まえておく必要があります。
条件となる30症例以上の体外循環の操作経験と、看護師であれば3年以上の実務経験、そして何よりこの資格に関する情報がとほんど無いという点が道を険しくしています。
しかしながら、現在体外循環技術認定士は非常に需要の高い資格となっています。
心臓手術を行う際には専門性の高い知識と技術が必要なため、体外循環技術認定士は総合病院など大きい医療機関から歓迎される傾向にあります。
また、資格に対して特別に手当がつく職場もありますので、それだけ資格取得によるメリットは大きいといえるのではないでしょうか。
6.体外循環技術認定士の現状と今後
2015年から「心臓血管外科修練施設に体外循環技術認定士が1名以上在籍すること」が心臓血管外科専門医認定機構の認定条件に加わったものの、資格取得者はまだ少ない現状にあります。
今後、体外循環技術認定士が活躍できる場は増加する傾向にあり、看護師や臨床工学技士のスキルアップ資格として人気も出てきています。
高齢化社会から医療機器も進化している現代において、体外循環技術認定士の将来性は高く、今後もさまざまな医療施設で必要とされることでしょう。
※掲載情報は公開日あるいは更新日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。