1.医療リンパドレナージセラピストの資格とは
医療リンパドレナージセラピストとは、日本医療リンパドレナージ協会が認定する民間資格で、がんの手術後やその他の疾病や疾患などで起きる『リンパ浮腫』の治療を行う施術者の資格のことです。
平成14年12月にNPO法人日本医療リンパドレナージ協会が第1号として設立されて、2021年3月末日の時点で累計2,385名(※1)の医療リンパドレナージセラピストが誕生しています。
2.医療リンパドレナージセラピストはどんな仕事?
医療リンパドレナージセラピストの仕事内容は、主にがんの手術後に起きやすいリンパ浮腫を医師の判断や指示に基づいてスキンケア、医療リンパドレナージ、圧迫療法、運動療法など患者さんの体調などに合わせ施術を行います。
また、患者さんの家族への生活指導やセルフケアが出来るよう指導し、患者さんの全身機能の改善や向上を促すことで、複合的理学療法によるリンパ浮腫の治療を行います。
3.医療リンパドレナージセラピストになるには
では実際に、どのような手順で医療リンパドレナージセラピストを取得していくのでしょうか。必要な条件と取得までの流れについて解説していきます。
【受験資格】
医療リンパドレナージセラピストになるためには、以下の条件をすべて満たす必要があります。
・医師、正看護師、理学療法士、作業療法士、あん摩マッサージ指圧師など医療資格(厚生労働省医療国家資格取得者)
・上記の資格取得中の学生も可(学生資格で申し込みをする場合は、別途受講手続きが必要)
ほかの医療資格に比べて、症例リストや実務経験などは問われません。
必要な手続きを踏めば資格取得中の学生さんでもチャレンジすることができます。
【取得までの流れ】
医療リンパドレナージセラピストの資格は以下の流れで取得を目指します。
主に「初級」と「中級」の2段階で構成されています。中級講習会を修了した時点で修了試験の受験資格を得ることができ、試験に合格することで医療リンパドレナージセラピストの認定を受けます。
では順を追って全体の流れをみていきましょう。
『養成講習会の申込』
医療リンパドレナージセラピストの申し込みをするためには、以下の必要書類をすべて用意しメールまたは郵送にて申し込みをします。
(1)必要書類
●受講申込書
●志望理由書
(協会ホームページから、Word形式の「受講申込書/志望理由書」をダウンロードできます。)
●学生資格で申し込む場合は、上記の他に協会指定の「推薦書」「履修証明書」が必要です。
協会ホームページの「講習会の案内」の「案内書のダウンロード」から書式をダウンロードし、学校で手続きを行います。
(2)申込手順
<封書で申し込む方法>
封書の場合は必要書類に必要事項を記入し、下記送付先へ封書にて投函してください。
※送付の宛先は変更があるため、公式ホームページを確認のうえ記入し送付してください。
<メールにて申し込む方法>
Word形式の必要書類(受講申込書/志望理由書)をダウンロードして記入したものをメールに添付して送信します。※学生資格で申し込みの方は、「推薦書」と「履修証明書」も必要です。
『講習会について』
では次に、各講習会のカリキュラムについて解説します。
〔初級講習会〕
計11日間の講習です。
・理論講習(4日間)
基礎解剖学、病態生理、浮腫総論、がん治療、複合的理学療法などについて学びます。
・実技講習(7日間)
リンパドレナージ(MLD)、バンデージ(Bdg.)療法の基礎スキルを習得します。
〔中級講習会〕
計11日間の講習です。
・理論講習(3日間)
浮腫各論、がん治療、医療連携などについて学びます。
・実技講習(8日間)
初級講習会で身につけた医療リンパドレナージ・圧迫療法を活用して、医療現場での応用力を高めるために臨床に即したスキルを習得します。
〔終了試験〕
中級講習会終了後、修了試験(2日間)を実施します。
終了試験後、合格者には「終了証」が発行され、医療リンパドレナージセラピストとして認められ、活動する事が出来るようになります。
『試験についての詳細』
受験資格:講習会の出席日数が受講証明の基準を満たしている事
試験内容:筆記試験(四択、症例)・実技試験(MD、Bdg.)・口述試験 (計2日間)
※受講証明書は各講習会の欠席が1日以内の受講者に対して、最終日に「受講証明書」を発行している。
『終了証の交付』
すべての試験に合格すると「修了証」が授与され、医療リンパドレナージセラピストとして施術する事が出来ます。
不合格の場合は再試験を受ける事が可能で、期限は養成講習会終了後2年間となります。
『費用について』
受講可能となった場合は、期日までに以下の受講料を入金しなければなりません。
養成講習会(初級講習会+中級講習会+終了試験)
一般)¥550,000 学生)¥440,000
また、講習会と試験ともに開催場所が決まっていますので、交通費や宿泊費などあらかじめどれくらい費用が掛かるのか把握しておくといいですね。
4.医療リンパドレナージセラピストをとるのは難しい?
現在、医療リンパドレナージセラピストの難易度については、公表されていません。しかし、受験資格についても述べたように、ほかの医療資格と比べて症例リストの提出、実務経験などは不要であるということ、資格取得中の学生さんでも受験が可能というところから、この資格の難易度は比較的低くなっているのがわかります。
また、養成講習会を終え受講証明書を発行してもらえていれば、終了試験に合格できる確率は高くなります。
万が一、修了試験が不合格だったとしても2年間は再試験を受ける事が出来ます。
2年間の期限が過ぎてしまった場合でも、再度養成講習会を受講できるため合格するまで挑戦することが可能な資格なのです。
5.医療リンパドレナージセラピストをとることのメリット・デメリット
医療リンパドレナージセラピストの資格を取得するとのメリットは、自身のスキルアップにつながり、看護師の給与にプラスで資格手当がつく場合があるので、給与アップを望むことができるといった点です。
医療リンパドレナージセラピストは、資格取得後に受けられる継続研修でのブラッシュアップ講習会などを経て、医療リンパドレナージ上級セラピストの資格を取得する事も出来るので、知識をより深める事が出来ます。
一方でデメリットがあるとすれば、受講費用が比較的高く設定されているといった点でしょうか。
一般の方で55万円、学生でも44万円の受講料が必要となりますし、遠方の方でしたらそれだけ交通費や宿泊費も掛かってしまいますので、取得を検討される際にはその点も考慮しなければなりません。
6.医療リンパドレナージセラピストの現状と今後
医療リンパドレナージセラピストの取得者数は、2021年3月末日の時点で2,385名おり、医療機関に留まらずエステサロンやヨガ教室などさまざまな場所で活躍しています。
あくまでこの資格は、がん患者や先天性リンパ浮腫の患者のケアやリハビリを行うための資格です。ですが、そこで得た知識やスキルは医療に限らず美容業界にも活かすことが可能です。
また、近年がん患者が増えていることからリンパ浮腫で悩む方も増加しています。
リンパ浮腫の専門外来である「リンパ浮腫外来」がある病院では、中心的な役割を担うこともでき医療リンパドレナージセラピストの資格は今後需要があるといえるでしょう。