1.健康運動指導士の資格とは
健康運動指導士とは、健康づくりのための運動計画を立案できる専門家に与えられる民間資格です。昭和63年、厚生相の認定事業として創設されました。「公益財団法人 健康・体力づくり事業財団」が認定する試験に合格することで資格を取得することができます。個々人の心身状態に応じて適切かつ安全で効果的な運動プログラムを作成し、実践指導計画の調整
などを行います。健康運動指導士は、健康の維持、体力増進をはじめとして、介護予防や疾病予防を目的とした運動指導、さらにメディカルフィットネスの分野で幅広く活動を広げてきました。医学や栄養学、運動生理学に関する専門知識と、健康づくりに必要な運動をわかりやすく指導するためのスキルを取得し、そのスキルを活かして人々の健康を守り、生活の質を向上させていくという、とても重要な役割を担っています。 2.健康運動指導士はどんな仕事?
健康運動指導士のおもな仕事は
・運動プログラムの作成
・指導計画に必要な調整・面談
・運動指導
などが挙げられます。
ただ運動指導を行うのではなく、個人に合わせたプログラムを作成することが重要な業務です。
まずは利用者と密に面談を行い、生活習慣を改善していくことの重要性を伝えます。
一人ひとりの身体の状態や生活の様子を把握してから、その人に応じた運動プログラムを作成していきます。
利用者が抱える問題を考慮しながら作成を進めていくため、医療の知識も必要になってきますが、一番大切なのは「利用者が楽しく運動を続けられること」です。
そのために利用者と積極的にコミュニケーションをとり、運動を通して日々の充実感を高めてもらうことも健康運動士の重要な役割なのです。
公式サイトでの発表によれば、全国で18,217人(男性6,609人、女性11,608人)の人達が健康運動指導士として登録されています。
下記のグラフからもわかるように健康運動指導士の就業先として最も多いのはフィットネスクラブやスポーツクラブ、次に多いのが診療所・病院となっています。さらに介護施設や保健所・保健センターなどにも活躍の場が広がっています。
病院や介護施設などでは、生活習慣病予防や介護予防のための指導者として活躍している方が多いようです。
3.健康運動指導士になるには
●受験資格
・4年制の体育系大学卒業者、医療系の資格保有者 運動指導士養成講習会を受講し、必要単位を取得すること・それ以外の人 健康運動指導士養成校へ入学し、受講申込コースの全課程を修了すること上記のいずれかの条件を満たしていれば、認定試験を受けることができます。必要な資格の詳細については公益財団法人 健康・体力づくり事業財団のHPを参照ください。HP→令和3年度健康運動指導士養成講習会開催要領●試験申込みの流れ
・受験申込書に必要事項を記入し、指定場所へ郵送する・受験料を振り込む 受験料:13,619円(税込)受験申込書指定箇所に「郵便振替払込受付証明書(お客様用)」を貼付すること。オンラインでの試験申し込みも可能です。●試験申込みに必要な書類
・受験申込書(写真貼付)1通・成績証明書 1通(健康運動指導士養成校において養成講座をすべて修了していることが確認できるもの)・学卒業証明書または大学卒業見込証明書 1通・大学院在籍証明書 1通(大学院生に限る)・大学院修了証明書または大学院修了見込証明書 1通(大学院生に限る)●試験の実施について
択一式試験 四肢択一 75問CBT(Computer Based Testing)方式で実施・試験時間:120分・試験会場:下記サイトよりお近くの試験場をご確認できます。 なお試験会場によって開催日程は異なりますのでご注意ください。健康運動指導士認定試験 試験会場検索・予約状況確認※注意事項
受験会場では予約の証明書と本人確認のため、顔写真付き本人確認書類の提示が必要です。集合時刻は、試験開始時の15分前です。●資格の登録と更新
認定試験に合格したら、登録の申請を行うことにより健康運動指導士の称号を取得することができます。登録料:24,200円(税込)また、資格の有効期限が5年間で、それ以降は5年ごとに更新が必要
になります。更新には所定の講習の受講が必要です。登録更新料:22,000円(税込)4.健康運動指導士をとるのは難しい?
健康運動指導士の合格率は多少の変動がありますが、近年では50~60%で推移しているようです。
ちなみに第147回 (令和3年実施)の試験結果は以下の通りです。
区分 | 受験者数 | 合格者数 | 合格率 |
養成講習会 | 104単位 | 5 | 3 | 60.0% |
70単位 | 17 | 16 | 94.1% |
51単位 | 11 | 10 | 90.9% |
40単位 | 33 | 24 | 72.7% |
健康運動指導士養成校修了者 | 14 | 9 | 64.3% |
計 | 80 | 62 | 77.5% |
再受験者 | 57 | 13 | 22.8% |
総計 | 137 | 75 | 54.7% |
出典:第147回健康運動指導士認定試験結果|健康・体力づくり事業財団 試験範囲は養成校での取得単位などによって異なり、それぞれの養成講習会の内容に沿って出題されます。講習会で学ぶ内容は、具体的に以下のような内容が挙げられます。◆健康管理概念、健康づくり施策健康運動指導士として知っておくべき基礎知識です。生活習慣病概論や保健指導介護予防概論、さらに健康運動指導士の社会的な役割、社会環境における健康に関係する整備についても知識を深めます。◆運動プログラムの基礎運動プログラムを作成するにあたり、メディカルチェックがなぜ必要なのか、また生活習慣病や服薬者に対して運動プログラムを作成する際の注意点など。作成実習もここで学びます。◆運動生理学呼吸器系や循環器系、脳・神経系、骨格筋系、内分泌系と運動の関わりについてです。免疫機能や環境と運動の関係性についても勉強することになります。◆健康づくりと運動の理論、実習筋肉の持久力を高めるための運動条件や、その効果について学びます。また性別ごとの体力や運動能力の特徴、さらに加齢に伴う体力の低下などについても理解していきます。実習ではウォーキングやジョギング、柔軟体操やエアロビックダンス、水中運動などの実習があります。他にも体力測定法や救急処置の方法、栄養摂取と運動の関係についてなど覚えることはたくさんあります。講習会の内容をしっかりと理解し、必ず復習をして試験に臨みましょう。 5.健康運動指導士をとる事のメリット・デメリット
健康運動指導士の資格を所有していることで、業務の中でも安心して体を動かすこと(運動・ストレッチ)を任せてもらえるようになります。看護師としての仕事がやりやすくなるでしょう。
その一方で健康運動指導士の試験は出題範囲が広く、資格に合格するにはそれなりの勉強時間を設ける必要があります。また講習会の費用は単位数によって13万~28万円ほどかかります。
看護師業務と勉強の両立を考えると資格取得は決して簡単ではなく、取得を迷う方もいらっしゃるかもしれません。
6.健康運動指導士の現状と今後
現代の日本は、生活習慣病患者の増加、少子化と超高齢化社会など、健康に関わるさまざまな不安を抱えている状況です。
このような時代背景の中で、国の大きな課題である「医療費抑制」や、人々が健康で長く生きるための「健康づくり」に取り組む方針が各施設でも取り入れられています。
しかし、健康のために運動は必要だと分かっていても、その方法や効果まではわからないという人が大半で、実際に日頃から意識高く運動を取り入れて生活している人は少数でしょう。
もしくは、心身に何らかの病気を抱えていて激しい運動を避けなければならない人もいます。
そこで期待が高まっているのが健康運動指導士の仕事です。
健康運動指導士は、医療機関、医療関係者と連携を取りながら、対象者一人ひとりの心身の状態を把握し、個々に合った運動指導を行うことで健康づくりをサポートします。
人々の健康に対する意識がいい方向に変わりつつある今、まさに時代のニーズに応えることができる役割のひとつといえるでしょう。
看護師として活躍の幅がさらに広がったり、より良い待遇の下に働けるようになったりする可能性も十分に考えられます。