仕事・スキル

認知症ケア専門士(看護師の資格)

認知症ケア専門士

更新日:2023.04.03

公開日:2020.08.19

1.認知症ケア専門士の資格とは

認知症ケア専門士とは、「認知症ケアに対する優れた学識と高度な技能、および倫理観を備えた専門技術士を養成し、日本における認知症ケア技術の向上ならびに保険・福祉に貢献すること」を目的とした民間資格です。
一般社団法人 日本認知症ケア学会によって2005年に創設されました。

認知症ケアの資格は他にもいくつかありますが、その中でも認知症ケア専門士の資格は介護・福祉業界からの認知度が高く人気のある資格です。
認知症ケアの実務経験が3年以上あれば、資格の有無や年齢にかかわらず、どなたでも受験できます。

現在では全国で50,000人以上の専門士がおり、その内の約15%が看護師です。
(参照:認知症ケア専門士情報 2021年11月時点)

2.認知症ケア専門士はどんな仕事?

認知症ケア専門士資格によって、権限が与えられる業務などは特にありません。
しかし3年以上の認知症ケアの実務経験がなければ取得できない資格であることから、認知症に関する専門的な知識・技術を持っているスペシャリストとして、安心して業務を任せてもらえるでしょう。

認知症ケア専門士が活躍できる職場は、主に介護保険施設や有料老人ホームなどの福祉施設がメインになります。グループホームなどの認知症高齢者の専門施設では特に歓迎される資格です。

特に介護業界で活躍できる資格ではありますが、看護師が取得すれば、医療現場で認知症ケアに関する知識や技術を他のスタッフに伝えることができるようになります。
認知症専門の病院やクリニックなどでも活躍できるでしょう。

認知症の患者さんだけでなく、介護をしているご家族の方も含めて、トータルでサポートをすることが認知症ケア専門士の大きな役割といえます。

3.認知症ケア専門士になるには


●受験資格
認知症ケアの実務経験が3年以上ある人

●試験の流れ

認知症ケア専門士 試験の流れ

(画像引用:各試験概要|認知症ケア専門士認定試験)

1. 「受験の手引き」(1部1,000円(税込))を購入する
【購入方法】
① 電話かFAX(郵便振替・銀行振込)
② インターネット(クレジットカード支払い・代金引換)

2. 「受験の手引」に同封されている願書を提出する
同封されている申請書類に必要事項を記入。
申請書類をコピー(各2部)し、1次試験用の封筒で簡易書留にて送付する。 
※新規申込みの場合、認知症ケア実務経験証明書を同封
※2次試験用の場合、コピー(各3部)が必要

3. 一次試験(筆記)、二次試験(論述・面接)を受ける

4. 合格発表

5. 登録申請


●試験の概要
【1次試験】
・申込期間: 例年3月~4月

・試験日時: 例年7月
       9時30分~16時10分(目安)

・1次試験受験料: 3,000円×受験分野数(4部門で12,000円)

・試験会場: Web試験

【1次試験内容】
・試験内容:筆記試験(マークシート方式・五者択一/各分野50問)

・出題:基礎・総論・各論・社会資源/「認知症ケア標準テキスト」に準ずる

【2次試験】
※1次試験(4分野すべての)合格者のみ
・申込期間: 例年8月~9月

・論述提出期限: 例年8月~9月

・面接日程: 例年11月
 (2021年は新型コロナウィルスの影響で中止)

・2次試験受験料: 8,000円

【2次試験内容】
・試験内容: 論述・面接試験(※面接は中止になる可能性もあります)

■論述: 認定委員会より出題の事例問題に対する論述を簡易書留で送付
■面接: 6人1グループ
(1分間スピーチ・グループディスカッション/計20分)


●資格の交付と登録
認定料:15,000円


●更新について
更新料:10,000円

5年毎の更新が必要です。
また更新には、講演会・学術集会などへ参加し、30単位を取得している必要があります。

【主催】一般社団法人日本認知症ケア学会


4.認知症ケア専門士をとることは難しい?

認知症ケア専門士の資格試験は、一次試験が筆記試験、二次試験が論述と面接です。
一次試験は4分野のすべてで70%以上とれれば合格となります。
これまで平均50%程度の合格率で推移しており、比較的難易度は高めといえるでしょう。

認知症ケアの4分野は【基礎・総論・各論・社会資源】で、それぞれ試験問題数は50問。各部門すべてを合格すると2次試験へ移行となります。
もし不合格の分野があっても、合格した分野は5年後まで有効となるため、翌年からは不合格分野のみ受験することができます。

筆記試験は正しい組み合わせを選ぶ試験問題。テキストをしっかりと理解しておく必要があります。過去問題はあまり出回っていない為、テキストの問題を繰り返し解いておき実践慣れしておきましょう。

2次試験は論述と面接、グループディスカッションです。
論述の内容は、毎年異なります。専門用語の使用は控え、状況を分かりやすく説明し具体的に簡潔に書くことが大切です。

グループディスカッションは、6名1グループで行われます。

1次試験の内容を踏まえて、ケアをする現場でその知識が活かせるかが問われます。
面接がはじまる待合室では談笑をしてもいいので、グループディスカッションをする人同士でコミュニケーションをとっておくと緊張せずに取り組めると思います。

面接の合格率は、およそ40~50%です。
認知症ケア専門士の資格は、難易度、専門性が高いです。他の認知症ケアに関する資格より、しっかりとテキストを読み込む必要があるでしょう。

なお、面接に関しては新型コロナウィルスの影響などによって中止(2021年は中止が決定)となる場合があるので、公式サイトで必ず最新の情報を確認してください。

5.認知症ケア専門士をとる事のメリットデメリット

認知症ケア専門士はサブの資格といえます。
資格所有者に明確な業務が割り振られるわけではありません。
認知症ケア専門士の資格を取得しても、給与面や待遇面が変わる職場は少ないといえます。あくまで、自分自身のスキルアップとして取得すべきでしょう。

認知症ケア専門士資格では認知症の患者さんに対するケアだけでなく、介護者の精神的フォローの仕方なども学ぶことができます。
認知症に対する正しい知識を学び、認知症を多角的に捉えることができるようになれば、看護師の仕事への厚みを持たせることに繋がるでしょう。

また「認知症ケア専門士」は更新制の資格です。
この資格を持つことは、生涯にわたり認知症ケアについて学ぶということを意味します。
資格を取ったら終わりではなく、その後も継続的に学習を続け、自己研鑽していく必要があります。

6.認知症ケア専門士の現状と今後

現在、日本には300万人もの認知症の患者数がおり、その数は今後も増加すると予想されています。
それによって、認知症介護の必要性がますます高まり、専門スキルを持った認知症ケア専門士の需要も高まると考えられます。

この先数十年の範囲で認知症高齢者の数は増加していくことが見込まれている日本において、介護や医療の現場で働く人にとっては、大いに役立つ資格ではないかと思います。

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