1.透析技術認定士とは
透析技術認定士とは、透析療法合同専門委員会が主催する認定講習を修了し、認定試験の合格基準を満たすことで取得できます。受験資格の審査基準として実務経験が必須となるこの資格は、人工透析に関連する業務において専門的な知識を有していることを証明するためのものです。
医療機器の専門家として知られる「臨床工学技士」や「看護師」にとってキャリアアップに大きく影響するため、近年人気が上昇している資格のひとつです。
2.透析技術認定士の仕事とは?
透析技術認定士の資格を持つ看護師のほとんどは人口透析科で活躍しています。
人工透析科で行うのは「血液をろ過して体内に戻す」作業で、透析器械の操作や患者の全身状態の管理、シャントなどが主な仕事です。人工透析が必要と診断された患者の多くは定期的に来院する人なので治療の説明を行う回数は他の科に比べて少ないでしょう。
透析前の患者の体重測定や、簡単な問診・バイタルサインチェックの後に穿刺を行います。
こういったルーティン作業が主な業務になってきます。
3.透析技術認定士になるには
【受験資格】
・臨床工学技士の資格所有している場合、2年以上の実務経験がある者
・看護師の資格を所有している場合、2年以上の実務経験がある者
・高卒の場合、准看護師の資格と3年以上の実務経験がある者
・中卒の場合、准看護師の資格と4年以上の実務経験がある者
・認定講習会(eラーニングを含む)を受講した者
【試験申込みの流れ】
(1) 申請書類準備
・審査申請書類(※)
・透析業務経験年数証明書(※)
・入力表(※)
・申請書類提出用封筒貼り付け用紙(※)
・資格を証明できる免許証のコピー
・顔写真付き本人確認書類のコピー
(※)透析療法合同専門委員会のホームページよりダウンロード可能
申込みは『特定記録郵便』での郵送のみ受付、定員に達した時点で受付終了
(HP→ https://touseki.jaame.or.jp/seminar39.php)
(2) 審査結果通知
(3) 認定講習会の受講
《会場での受講》
場所:東京都「大田区産業プラザPiO」
定員:300名
受講料:32,000円
《eラーニングでの受講》
場所:インターネット環境
定員:1,000名
受講料:32,000円
※会場で受講後、復習のためeラーニング受講を希望する場合は計48,000円で受講可能
また、eラーニングは約5週間の開講期間中であれば何度でも繰り返し視聴が可能
(4) 認定試験
開催時期:年1回、毎年5月中旬~下旬の日曜日に実施
試験会場:東京都内(3月頃に確定)
受験料:10,000円
(5) 合否通知
(6) 認定登録手続き
資格取得後、5年毎に更新が必要
【資格団体】
透析療法合同専門委員会
(HP→ http://touseki.jaame.or.jp/)
4.透析技術認定士をとるのは難しい?
透析技術士の試験範囲は、医療系・工学系の専門的な要素が多いため、決して簡単とはいえません。
近年の出題傾向から「血液浄化療法の歴史」や「クリアランス」「限外濾過率の計算」「ダイアライザの性質」「水処理システム」「疾患と治療法」「透析液・補充液」「抗凝固」「バスキュラーアクセス」「腎不全・透析の合併症」「腎移植」「透析に関する医療費」などを中心に勉強することをオススメします。
ここまでで難しそうと思った方もいるかもしれませんが、近年の合格率は70%前後を推移している状況にあります。
一時期50%前後だったことを考えると、合格率が上がっていることがわかります。
現在、透析療法合同専門委員会による講習会がeラーニングという形式でWEBから受講できるようになったことが大きく影響しているのではないでしょうか。
5.透析技術認定士をとる事のメリット・デメリット
看護師が透析技術認定士の資格を取得するメリットとして、まずキャリアアップが挙げられます。一度取得した技術は勤務先が変わっても基本は同じなので、どこでも通用します。
また、資格を保有していることで、患者・同僚からの信頼度も上がるでしょう。
また、手当がつく場合が多いので、夜勤がなくても比較的高給与を狙うことが出来ます。
試験会場が東京都内のみなので、遠方から受験する場合は交通費など自己負担が増えてしまうことはデメリットですが、透析技術認定士の資格を所有していることで待遇がよくなるケースも多く、今後の転職にも非常に有利です。
6.透析技術認定士の現状と今後
人工透析は腎臓機能に問題を抱える患者が尿毒症になるのを防ぐために必要な処置です。
継続的に行っていく治療なので、高齢化が進んでいく中で透析を必要とする患者は今後増え続けると考えられます。
このような背景からも将来性の高い資格であるといえます。
需要のある資格であることは確かですが、透析技術認定士は専門知識や確実な穿刺技術が必要なことから、挑戦したくても足踏みしてしまう看護師が多いのも現状です。
確かに特殊な技術が必要で、覚えることもたくさんあるので楽なことばかりではありません。しかし透析技術認定士の資格を得て、人口透析科で勤務する中で得られる待遇や給与、患者とのコミュニケーションを通して感じるやりがいなど、様々な視点からも挑戦してみることをお勧めします。
さらにニーズが高まると予想されている透析技術認定士の資格は今後きっと役立つことでしょう。