1.リンパ浮腫療法士(LT)の資格とは
リンパ浮腫療法士 (英語名称Lymphedema Therapist 、LT) とは、リンパ浮腫治療学会による認定資格です。
医療従事者として、リンパ浮腫の複合的治療を中心にリンパ浮腫の診療に従事する際に必要な専門知識・高度な技術水準をもった専門家と認められた者に与えられます。
2.リンパ浮腫療法士(LT)はどんな仕事?
リンパ浮腫療法士の主な業務は
・複合的浮腫療法(スキンケア・用手的リンパ誘導マッサージ・圧迫療法、圧迫下の運動療法)の指導・実施
・弾性ストッキングの指導
・日常的なセルフケアの指導
・治療報告書の提出
まで、多岐に及びます。
リンパ浮腫はがん治療をしたのちに後遺症としてよく現れる腕や脚などのむくみです。
リンパ節の切除や放射線治療によってリンパの流れが停滞することで起こりやすくなります。
手術後すぐ発症することもあれば10年以上経過してから発症することもあり、発症後は早い時期から治療をはじめ、悪化を防ぐことが重要です。
なおこの資格を用いての業務範囲に関しては、各人が持つ医療国家資格の範囲を超えるものではありません。
3.リンパ浮腫療法士(LT)になるには
●受験資格
リンパ浮腫療法士の資格試験を受験するには、下記の4点をすべて満たしている必要があります。
1.日本国における医師・看護師・作業療法士・理学療法士・あん摩マッサージ指圧師のいずれかの資格を保有している
2.上記の資格において、資格取得後に2年以上の実務経験がある
3.教育内容基準を満たしたリンパ浮腫治療に関する研修を、座学45時限以上、実技演習90時限以上の計135時限以上修了している
4.リンパ浮腫外来またはそれに準ずる医療機関・施術施設(※1)にて研修修了後2年以内に実施症例(※2)を最低5例以上積んでいる
※1:リンパ浮腫専門を掲げて治療・指導を行っている施設、または、リンパ浮腫外来がない場合にも医師の指導や指示のもと治療が行われている施設を指します。※2:実施症例は、リンパ浮腫や静脈性浮腫・低蛋白性浮腫と診断された症例いずれか5例を対象とします。●取得までの流れ
1.リンパ浮腫治療に関する研修を修了する2.研修を修了後、リンパ浮腫に対する治療や指導の実施症例を5例経験する3.受験申込みと受験書類を提出する4.書類選考に通過する5.認定試験を受ける6.認定登録を完了する●受験申し込み方法
日本リンパ浮腫治療学会認定 リンパ浮腫療法士のサイトの受験申込みフォームから申込みます。定員になり次第締め切られてしまうため申込み時は注意が必要です。また申し込み後に受験料の振り込みと申請書類の提出が必要です。受験料:15,000円●認定試験
筆記試験・択一式(マークシート式)50問90分●出題範囲
・解剖生理学(脈管系)約20%・浮腫の概論 約20%・複合的リンパ浮腫治療概論 約60%●資格の交付と登録
合否についてはWebでの発表はありません。試験の約2〜3週間後に受験者一人ひとりに郵送で通知されます。合格者は認定登録の手続きが必要です。認定登録を完了すればリンパ浮腫療法士認定機構発行の「リンパ浮腫療法士認定証」と「認定バッチ」が交付されます。●更新について
資格の有効期間は認定を受けてから5年間です。資格を更新するには最終年度(5年目)の10/20~11/30の間に更新手続きが必要となります。更新審査料:20,000円 なお次の項目をすべて満たしていることが更新条件になります。1. 更新クレジットを30単位以上取得している2. 学会が主催する講習会(リンパ浮腫療法士教育セミナー)を受講している3. 症例を30例提出している4. 更新時に日本リンパ浮腫治療学会の会員であり、かつ会費の未納がない 4.リンパ浮腫療法士(LT)をとるのは難しい?
リンパ浮腫療法認定試験の合格率は90%程度とされているようです。
先述しましたが出題範囲の内訳が公式サイトで公表されています。
しっかりと勉強していれば難易度はそれほど高くない試験かと思いますので、日々の学習を欠かさないようにしましょう。
5.リンパ浮腫療法士(LT)をとることのメリット・デメリット
リンパ浮腫療法士資格を取得することで、専門スキルが身につくことはもちろんですが、適切なケアの方法を患者さんに指導できるようになります。リンパ浮腫は予防や早期発見が重要で、患者さん本人によるケアもとても大切になりますので、患者さんのQOL(生活の質)の向上に貢献できる資格
です。リンパ浮腫が発症する方の多くはがんの治療を受けた患者さんです。したがってリンパ浮腫外来で働く看護師だけでなく、外科、婦人科、放射線科、緩和ケアなどで働く多くの看護師にとって役立てることができるのではないかと思います。特に乳がんや子宮頸がんなどによるリンパ浮腫に悩まれる女性にとって、女性看護師からケアや指導を受けられることは安心感につながるでしょう。デメリットは資格取得条件となっている講習を受講するための費用がおおよそ30~40万円かかることです。また必ずしも給料アップにつながる資格ではないということは資格取得前に理解しておいた方がよいでしょう。勤務先によって資格手当の有無は異なりますのでご注意ください。ただし、資格があることで緩和ケアやリンパ浮腫専門外来などへの転職には有利に働く可能性はあります。自身のスキル向上やキャリアアップを目指す看護師の方はぜひ検討されてみてはいかがでしょうか。 6.リンパ浮腫療法士(LT)の現状と今後
日本人の2人に1人はがんを発症すると言われている現代。がん患者の増加に伴いリンパ浮腫を患う人も増加することが予想されますが、がん治療の技術は進む一方で、リンパ浮腫などの後遺症があるということはあまり知られていないのではないでしょうか。現在、全国に1,000名近くのリンパ浮腫療法士がおり、がん治療を行う病院でリンパ浮腫への指導を実施するケースも増えてきました。しかしリンパ浮腫専門外来を設けている病院はまだまだ多くないのが現状です。そのため患者さんがどこにいけばいいのかわからず “リンパ浮腫難民”となってしまうというようなことも起こっています。リンパ浮腫は完治が困難で、一度発症すると生涯にわたって継続的な管理やケアが必要となります。がん医療においても大きなテーマとなっており、今後リンパ浮腫の予防やケアの重要性がますます認知されていくでしょう。それに伴い、リンパ浮腫療法士も需要が高まる資格になるのではないかと思います。<関連資格>医療リンパドレナージセラピスト