1.産業カウンセラーの資格とは
産業カウンセラーとは、こころの問題を解決するためにつくられた民間が運営する資格のことです。一般社団法人日本産業カウンセラー協会が認定しています。「働く人々を支援する専門家」として、企業や組織のメンタルヘルス対策やキャリア開発の支援、人間関係の開発支援などの領域で働きかけます。専門知識と「傾聴」を基本として、カウンセリング技術を学びます。
産業カウンセラーは、資格名称にあたり、職業そのものを指すものではありません。
心理学系の大学を出ていない方でも、心理系の資格を取得できる数少ない資格です。臨床心理士など受験資格自体、ハードルが高いことが多い心理系の資格の中で、挑戦しやすい資格ともいえます。
ストレス社会といわれる現在、メンタルケアの重要度は年々高まっています。心理系の民間資格の中では知名度も高い産業カウンセラーは、注目度の高い資格ともいえます。
2.産業カウンセラーはどんな仕事?
産業カウンセラーの主な仕事は、会社や企業で働く人たちが抱える悩みやストレスをカウンセリングし、自分自身の力で問題を解決できるように援助することです。看護師として身体の治療だけでなく、こころの部分もケアします。心身が癒えることで、患者さんの健康を維持することができるのです。
産業カウンセラーの基本は「傾聴」にあります。自分自身に偽りなく対応できているか。患者さんをこころから大切にし、相手を尊重しているか。自分が理解している内容と、患者さんとの間に相違がないかが「傾聴」の基本です。
精神科や心療内科で働く看護師にとって、カウンセリング技術を学ぶことは、大いに役立つ資格と言えます。
また、ケガをしたり病気にかかった不安に対して、カウンセリング技術を用いることは、心理的負担の軽減にもつながるでしょう。
3.産業カウンセラーになるには
【受験資格】
●産業カウンセラー養成講座を修了
●大学院で所定の専攻を修了。所定の20単位以上を取得
→受験希望者は、産業カウンセラーの養成講座を受講することが多いです。
通学・通信どちらもあります。
【取得までの流れ】
・審査申請の申込期間:11月~12月上旬
◆産業カウンセラー養成講座
【通学制】4~11月(約7か月)
・昼間・夜間コースあり
・受付開始:1月~
・受講料:226,800円(税込)
【通信制】10月末~翌10月末(約1年)
・面接実習あり
・受付開始:8月~
・受講料:205,200円(税込)
【試験要項】
・試験会場:全国各地
・受験料:学科と実技(31,500円)学科試験(10,500円)実技試験(21,000円)
【学科試験】
・試験内容:マークシート方式(60問)150分
・日程:毎年1月
【実技試験】
・試験内容:ロールプレイング・口述試験 30分
・日程:毎年1月(学科試験の翌週
資格の交付と登録
【資格登録料:7,000円/年会費:7,000円】
更新について
【更新料:3,000円/年会費:10,000円】
・5年ごとの更新。
・資格更新研修を受ける必要があり(最低6時間)
その他
・合格発表:3月上旬
【資格団体】一般社団法人日本産業カウンセラー協会
4.産業カウンセラーをとることは難しい?
産業カウンセラーの試験は、3種類の試験結果が各60%以上とれたものが、合格といわれています。詳しい合格基準は公表されていません。
学科試験は、基本的知識の問題と、傾聴のカウンセリング技法の2種類が出題されます。実技試験では、受験者同士によるミニカウンセリング・口述試験の各々60%以上が合格基準です。学科試験、実技試験双方の合格が必要ですが、おおむね60後半~70%台と合格率は高いです。
産業カウンセラーの試験は過去問を公表していません。カウンセリング技法や口述試験は、基本知識から流れが掴みやすいといわれています。基本的知識の問題は、正確性が求められるため、しっかりと勉強しておく必要があります。
また、養成講座にしっかり取り組むことで、実技試験が免除されることもあります。養成講座受講後に実技試験の有無がハガキで届きます。実技試験が免除されれば、試験は学科試験のみになります。一つの内容に集中することができ、金銭的に負担も少なくできるのです。
少しでも有利に資格を取得するには、養成講座から真面目に取り組んだ方がいいといえます。
5.産業カウンセラーをとる事のメリットデメリット
今、企業や組織に勤める産業看護師が増えています。産業カウンセラーの資格は、看護師の資格と併せ持つことで、更に効果がある資格といえます。
患者さんへのカウンセリングだけでなく、傾聴を基本とするカウンセリング技術は人間関係や働きやすさを追及することができます。
デメリットを挙げるとすれば、取得までにかかる期間と金額です。養成講座を受ける期間もあわせると、最短でも取得までに約1年かかります。次に金額ですが、受験費用、登録料以外にも養成講座にかかる費用があります。養成講座では、トータル20万前後かかります。
費用に関しては、教育訓練給付金が支給される場合があります。産業カウンセラー講座は、厚生労働大臣の指定する教育訓練講座にあたるからです。該当すれば、教育訓練講座にかかった経費の20%相当額が、教育訓練給付金として支給されます。
10万円以上の費用は一律10万円ですが、大きな手助けになることは確かでしょう。
6.産業カウンセラーの現状と今後
産業カウンセラーの資格を取得しても、すぐに活用できるわけではありません。カウンセリング業務全般にいえることですが、実務と経験が問われる職務といえるからです。また、産業カウンセラー資格単体で仕事をしている人は、ほとんどおりません。
現段階では、企業に勤める看護師や保健師が、産業カウンセラーとしての仕事を求められることが多いです。メンタルケアの重要度は年々高まっており、企業も注視する傾向にあります。
その中で、産業カウンセラーの資格を得ることは、自分自身が専門的なカウンセリング技術の知識と技術を持っているという裏付けにもなります。転職時のアピールに繋げることができるでしょう。企業で働きたい看護師にとって狙い目ともいえる資格です。
※掲載情報は公開日あるいは更新日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。