2010年7月に臓器移植法が改正されました。
これにより、以前よりも臓器移植の件数は増加しています。
ただ移植と言っても医師が手術を行うだけではありません。
移植コーディネーターという看護師資格などを持った医療専門者が深く関わっています。
今回は命を繋ぐ移植に深く関わる移植コーディネーターについてまとめています。
そもそも(臓器)移植とは
移植とは、組織や臓器をドナー(提供者)からレシピエント(受給者)に必要な臓器を移し替える医療行為のことです。
生体移植や脳死移植、心臓死移植は誰もが聞いたことがあるのではないでしょうか。
現在、日本では以下の臓器が臓器移植法により施工可能となっております。
・心臓移植
・肺移植
・腎臓移植
・肝臓移植
・膵臓移植
・小腸移植
日本では各種臓器を移植することが多いので、臓器移植と総称される場合があります。
移植では、ドナーとレシピエントの関係とドナーの状態により分類されています。臓器移植のおもな流れは、以下のとおりに行われます。
事故や病気で脳に障害が残り、最善の治療を受けても回復の見込みがなくこれ以上の救命は不可能と判断された患者さん(ドナー)に対して、終末期の選択肢のひとつに臓器提供があります。臓器移植コーディネーターより説明を受けた家族は、十分に話し合い総意を決めます。家族の承諾を得たあとは2回目の脳死を判定し、JOT(※)に登録している希望者(レシピエント)のなかから、医学的にもっとも適した人物を選定します。
希望者が選ばれると、必要な臓器の摘出手術が行われます。摘出後のからだは手術創がわからないようきれいに縫合、清拭し、摘出された臓器はすぐさま希望者のもとへ運ばれます。
※JOTとは…公益社団法人日本臓器移植ネットワークのこと
臓器移植の歴史と臓器移植法について
日本での臓器移植は1960年代に初めて行われ、生体移植では進んでいく一方、脳死移植に関しては「脳死は人の死と認めない」とする傾向が強く、1997年の法改正まで国内の移植事例は進んでいませんでした。
しかし時を経て、20年後の1980年には心停止した死後の角膜と腎臓の提供を可能とする「角膜と腎臓の移植に関する法律」が施行。 他国では腎臓以外の臓器不全の患者が次々と救われているといった事例をみて、日本国内においても臓器移植の必要性が高まることとなり、そして1997年の10月には新たに「臓器移植法」という法律が施行されました。
従来の臓器移植法では臓器提供における条件として、
・脳死した患者本人が生前、臓器移植の意思を書面表示している
・遺族が同意した場合に限り、該当患者の臓器摘出・提供を可能とする
・15歳未満の死亡した患者からの臓器提供はできない
とされていました。これらの条件により臓器移植を受けられない人がいるといった問題が出てしまい、国としても臓器移植の推進を高めることを目的に2010年には「臓器移植法」の改定が行われることとなりました。
この法改正により、本人の意思がなくても、遺族の承諾があれば脳死後の臓器提供が可能とし、15歳未満であっても脳死後の臓器提供ができるようになったのです。
移植コーディネーターとは
臓器移植コーディネーターは、ドナーとレシピエントを調整して、移植手術を進める医療専門職であり、臓器移植時は代わりの無い唯一の存在です。益社団法人日本臓器移植ネットワークに所属していますが、委託の都道府県コーディネーターがされる場合もあります。
臓器移植コーディネーターの役割では、臓器を提供する側を調整するドナーコーディネーターと、臓器提供を受ける側の調整を行うレシピエントコーディネーターがいます。
どちらのコーディネーターも単独で行動することはなく、病院内で活動する人と社内で働く人でチームを組んで移植の調整を行っていきます。
では、具体的にどのような役割を担っているのでしょうか。
臓器移植コーディネーターの役割
臓器移植コーディネーターの業務は先述した通り、ドナーコーディネーターとレシピエントコーディネーターに分かれて行います。
ドナー側とレシピエント側で事情が違いますのでコーディネーターの役割も変わります。
ドナーコーディネーターは、臓器提供の候補者が現れた際にドナー患者の家族に臓器提供の仕組みを詳しく説明し、臓器提供承諾の意思確認を頂けたら、医学的検査の手配や移植チームとの調整を行います。また医学的評価や臓器の移植病院までの搬送、移植手術の立ち会いも行います。
レシピエントコーディネーターは、臓器提供を受ける側として、患者さんやその御家族に説明を行うほか、カウンセリングや退院後の健康チェック、生活指導などのケアを行います。
多くの場合、移植病院に所属しているため、院内移植コーディネーターと呼ばれています。 これら以外にもコーディネーターの役割はあり、移植手術が無い時はデスクワークとして移植手術の報告書の作成やドナー家族との面談、臓器提供の啓蒙活動、病院での勉強会など多くの業務を行っています。
「一分一秒でも早く、移植で救える命を救う」
「ドナーとレシピエントの適正を見極めて、確実なルートで安全に臓器を届ける」
人と人との命の橋渡しとなるのが、臓器移植コーディネーターの仕事なのです。
移植コーディネーターになるには
臓器移植コーディネーターは、通常の資格試験とは異なり採用試験を経てコーディネーターとして認定されます。応募資格は以下のとおりです。 1.医療・福祉系で資格を持ち実務経験があるもの (医師、正看護師、臨床検査技師、臨床工学技士、診療放射線技師、薬剤師、社会福祉士、介護福祉士 など) 2.医療業界での営業経験者(製薬会社、医療機器メーカーなど) 3.4年制大学卒業者 必須資格:普通自動車運転免許 移植コーディネーターは、深夜に緊急招集がかかることがあるため、自動車運転免許が必須です。 採用試験では、書類審査の後、筆記試験やグループディスカッション、面接を行います。 移植コーディネーターは、資格ではなく日本臓器移植ネットワークに所属する形となるため、一般的な企業での採用試験に近い方法でおこないます。入職した際には一般職として活動し、一定期間の研修を受講した後、試験に合格することで臓器移植コーディネーターに任命されます。採用試験は日本臓器移植ネットワークにて不定期に行っています。 (参考:公益社団法人 日本臓器移植ネットワーク『臓器移植コーディネーター』) ではつぎに、採用試験の難易度はどれくらいなのかみてみましょう。 資格・試験の難易度について
上述でもあるように、移植コーディネーターは通常の資格試験とは異なり一般的な採用試験を経てコーディネーターとして認定されます。一見、技術や経験を満たしていればなれるものかと思いきや、実はとても取得することが難しい資格となっております。
まず、こちらの採用試験は公益社団法人日本臓器移植ネットワークが不定期にて採用試験を行っており、試験は年1回しか受けることができません。また、一度におこなわれる際の募集人数は10人程度と非常に狭き門なのです。
検討される方は、定期的に公益社団法人日本臓器移植ネットワークのホームページをチェックするようにしましょう。限られた人のみがなれる臓器移植コーディネーターですが、人と人の命を繋ぐとても重要な仕事です。
興味のある方は、ぜひチャレンジしてみてはいかがでしょうか。
さいごに
年々、国内の移植数は増えてきていますが、それでも年間7,000~8,000人のドナーがいるアメリカと比べてみるとまだ日本の移植文化は遅れていると言えるでしょう。
医療不信、コーディネーター不足など、さまざまな原因があるなかで、なにより国民の臓器移植に対する意識や理解が根付いていないことも問題のひとつです。
現在も、臓器提供を待ち望んでいる患者さんが大勢いるということ、臓器移植の正しい知識や関心を持ってもらうことこそが臓器移植コーディネーターにしかできない仕事なのではないでしょうか。
看護師から臓器移植コーディネーターになる方も多くいらっしゃいます。
命をつなぎ人の役に立ちたいと思われる方は、ぜひチャレンジしてみてください。