近年、増加が見られる胃癌や大腸癌。
それを早期に発見、治癒する際に使用される内視鏡。
その内視鏡に対する専門的な知識や技能を証明する資格が消化器内視鏡技師です。実際に、どんなことをしているのでしょうか。また、資格取得ためにはどうすればいいのか。
そんな内視鏡のエキスパート、消化器内視鏡技師についてまとめました。
内視鏡室でおこなう看護師の仕事内容
内視鏡室では、おもに太さの違う2種類のスコープを使い、口や鼻、もしくは肛門から挿入し患者さんの消化器官に異常がないか検査するための医療施設となっています。
必要となるスタッフは医師、消化器検査技師、看護師のほか、保守点検のための臨床工学技士、検査に用いられる薬品の管理をする薬剤師など、さまざまな専門スタッフが連携して作業をおこないます。
その業務のなかで、おもに看護師が担当している仕事は以下のとおりです。
・感染対策(スコープの消毒、消毒薬の濃度管理、履歴確認)
・処置具、備品の保守、在庫管理
・患者の介助、鎮静患者の観察、記録
・検査後、鎮静患者のリカバリー室での安静解除 など
基本的にこれら以外の業務は各専門スタッフが行うことを理想としていますが、病院によっては看護師が複数兼務することも珍しくありません。
より内視鏡看護師の仕事について知りたい方はこちら
そのため、近年では兼任業務を円滑におこなうために「消化器内視鏡技師」の資格を取得する看護師が増えてきました。
消化器内視鏡技師の資格について
消化器内視鏡技師は、内視鏡を使用する医師の補助(検査時や治療時の介助など)を専門的に行う技術者です。
国家資格ではなく、日本消化器内視鏡技師会の認定資格ではありますが、内視鏡に対する専門資格はほかに無いため内視鏡関連でキャリアアップを目指す方が多く取得しています。試験を受けるための条件として、正看護師・准看護士の資格が該当することから内視鏡室で働く看護師も取得することができます。
近年の内視鏡技術の進歩(いわゆる胃カメラから、より身体に負担の少ないカプセル型の開発)により、早期の胃癌、大腸癌、十二指腸潰瘍などの発見、治療など内視鏡が医療に果たす役割は高まっており、その専門資格である消化器内視鏡技師も注目されはじめています。
消化器内視鏡技師の役割
消化器内視鏡技師の役割は、前述した通り医師の介助がメインになります。
介助時は医師の指示のもと、内視鏡の操作や内視鏡で摘出した検体を検査できるように処理をします。それ以外にも内視鏡の洗浄や消毒、メンテナンスのほか、患者さんや御家族への検査の説明なども消化器内視鏡技師が行います。
近年、内視鏡技術が進歩しリスクや難易度の高い手技が普及する一方で、より細やかな安全管理が求められるようになりました。それぞれの専門的立場から情報を共有し合い、安全に配慮し患者さんの治療に臨むために消化器内視鏡技師は欠かせない存在でもあるのです。
消化器内視鏡技師になるには
消化器内視鏡技師を取得するには、取得条件を満たした後、試験に合格する必要があります。
以前、消化器内視鏡技師には第一種と第二種があり、それぞれに条件や内容が異なっていました。しかしそれも今では統合されて、看護師、准看護師どちらも同じ試験内容となります。
おもな受験資格は、以下のとおりです。
①看護師(助産師、保健師含む)、准看護師、衛生検査技師、診療放射線技師、臨床工学士、臨床検査技師、薬剤師のいずれの資格を有している
②日本消化器内視鏡学会専門医(非常勤含)の指導のもと、消化器内視鏡部門で実際に内視鏡に従事した勤務年数が申請時点で満2年以上である
(勤務年数が満2年以上であっても、ほか部門勤務期間や専門医不在期間は無効)
③日本消化器内視鏡技師会・技師会各支部主催の医学講習会、または勤務先の日本消化器内視鏡学会認定専門医から、医学講義を20時間以上受講していること
講 義 内 容 と 規 定 時 間 | ||
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消化器内視鏡に関する基礎(20時間以上) | ||
①内視鏡学総論 | ②内視鏡検査と診断 | ③内視鏡的治療 |
(申請する年から遡って5年以内の受講に限る)
④申請時までに、日本消化器内視鏡技師会・技師会各支部主催の【消化器内視鏡技師学会】または【技師研究会】に2回以上出席している
⑤申請時までに、日本消化器内視鏡学会支部長承認が承認した消化器内視鏡技師会・技師会各支部主催の【機器取扱い講習会基礎編】に1回以上出席している
上記の条件をすべて満たすことで資格試験を受けることができます。
また、実際に試験を受ける際にはまず書類審査を通過し、学術試験に合格することで日本消化器内視鏡学会より消化器内視鏡技師の認定を受けることができます。
参考:(一般社団法人 日本消化器内視鏡学会『消化器内視鏡技師認定試験』)
さいごに
開腹手術に比べて患者さんの負担が小さい内視鏡手術。
昔と比べて、手術痕は小さく、短期間で手術前のような日常生活をおくれるということから患者さんの治療に対する嫌悪感は減りつつあります。
これらは内視鏡に関する技術が進歩し、それに合わせて高い知識や技術を医療スタッフが身につけた結果といえるのではないでしょうか。最近では内視鏡に特化した医療施設も増えており、消化器内視鏡技師の必要性もますます増えていくことでしょう。
内視鏡室にご興味がありましたら、ぜひ取得を目指してみて下さいね。
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