救命医療の最前線に立つフライトナース。
今すぐ患者さんの治療を必要とする場合や自然災害のほか、救急車が迎えない山岳地帯などをドクターヘリに乗り救助に向かいます。この項目ではフライトナースとは何なのか、業務内容、フライトナースになるために必要な条件についてまとめてみました。
ぜひ、参考にしてみてください。
フライトナースとは
フライトナースとはドクターヘリに医師と共に搭乗し、救命患者の処置を医師と行う救命医療のスペシャリストです。
近年、ドキュメンタリーや医療ドラマにてドクターヘリや救命医療の認知度はますます広がりをみせるようになりました。また、メディアの影響からフライトナースを目指す看護師も増えているようです。
2020年3月時点では、全国47都道府県のうち53機が配備されています。一県に1~2機、県によってはドクターヘリが配備されていないところもあり、それに搭乗できる看護師も限られるため、フライトナースは看護師の中でも特別な存在といえます。
ただし、フライトナースは専門看護師や認定看護師のような特別な資格ではなく、資格上は正看護師となります。
そんな正看護師とはまた一味違ったフライトナースについてみていきましょう。
フライトナースの業務
フライトナースの業務はドクターヘリでの救命医療だけではなく、出動しない時は所属している病院での看護業務になります。
ドクターヘリは救命救急センターに所属していますので、平時は救命救急センターで患者さんの看護を行っています。
救命救急センターは三次救急医療機関であり、重篤な患者さんを24時間体制で受け入れを行っていますので、ドクターヘリでの出動が無い時でも非常に忙しく、それだけやりがいに満ちた仕事であるといえます。
ドクターヘリの出動は消防本部からの要請からのみとなっています。救急車内の現場から早期治療の必要があると判断された患者さんを本部へ連絡、本部から救命救急センターへ要請となります。
ドクターヘリ要請後、数分以内に出動し、医師と打ち合わせをしつつ、必要と思われる医療機材の準備を行います。ドクターヘリには、ドクター2名とフライトナース1名、パイロットと共に現場に向かいます。救急車とは異なり、ヘリコプターに積載できる医療器具にも限りがありますので、そのなかで患者さんの治療を行わなければなりません。
現場に到着すれば、医師のフォローを行いつつ、不安により混乱している患者さんやご家族のケアを行うのもフライトナースの仕事です。
ヘリコプターでの搬送後は、救急車との合流地点、臨時ヘリポート(緊急時は高速道路上など)で患者さんを受け取り、早急に治療を開始し、出動した病院もしくは最寄りの救命救急センターなどに搬送を行います。
ドクターヘリの出動回数は日によって差があり、数日間要請がない日もあれば1日に3回出動要請が入ることもあります。
フライトナースの魅力
そんな忙しい日々をおくるフライトナースですが、そんな仕事に憧れをもつ看護師さんは少なくありません。フライトナースのどこに魅力があるのでしょうか。
給料、年収は看護師の中でも比較的高め
厚生労働省が発表した「令和元年賃金構造基本統計調査」によると、看護師の平均給与は月約33.8万円。年収にすると405.6万円程度となります。(月給×12か月で算出)
もちろん、勤務している地域や経験年数によっても給料の差は変わってきます。
フライトナースの基本給は、通常の看護師と同等の額を支給されます。しかし、それに加えて危険手当や待遇手当が発生し、年収にして400~550万円ほどにアップするといわれています。
今後のキャリアアップの手助けになる
看護師の中でも狭き門となるフライトナースの仕事。救命救急の中でもさらに専門的な仕事ゆえに、その経験を活かしてキャリアアップを目指す方は多くいらっしゃいます。
例えば、認定看護師資格を持ったフライトナースで、今まで培ってきた経験と資格を活かしてフライトナースの教育・人材育成に注力するといった方もいれば、救命救急に限らずICUや外科系部署での管理職に就く方も少なくありません。
人材育成に取り組んだり、管理職としてさらなる高みを目指したりと選択肢の幅が広がるのもフライトナースの魅力のひとつといえます。
そんな魅力あふれるフライトナースですが、どうすればその仕事に就くことができるのでしょうか。
フライトナースになるには
フライトナースは前述のとおり正看護師の資格があれば目指すことができます。 しかし、日本航空医療学会や厚生労働省がいくつか条件を提示しており、フライトナースになるためにはそれらを満たす必要があります。 【フライトナースになるための条件】 ・正看護師として5年以上の実務経験がある
・3年以上は救急医療を経験している
・救命救急医療に関するACLSプロバイダーおよびJPTECプロバイダーを取得している
・日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講している
・救急看護師としてリーダーを務めている
現場での作業を要するフライトナースでは、患者さんの容態に合わせて臨機応変に対応するため正看護師経験5年、救命医療の経験を3年以上積む必要があります。フライトナースを希望される方は、まず救急病棟や救命センターに配属し、上司にフライトナースを目標としている旨をしっかり伝えることが大切です。 また、ACLS、JPTECといった救命救急に関する資格のほか、第三級陸上特殊無線技士の資格を取得し、日本航空医療学会が主催するドクターヘリ講習会を受講しなければなりません。 ACLSプロバイダーは日本ACLS協会、JPTECプロバイダーはJPTEC協議会、第三級陸上特殊無線技士に関しては公益社団法人日本無線協会と、資格によって日程、会場等違いますので各ホームページを参考に、ぜひ資格取得を目指してみてはいかがでしょうか。 日本ACLS協会ホームページ▷ https://acls.or.jp/ JPTEC協議会ホームページ▷ https://www.jptec.jp/ 公益財団法人 日本無線協会ホームページ▷ https://www.nichimu.or.jp/kshiken/ フライトナースの適性
フライトナースになるにあたり、適性というものがあります。 どんな人が向いているのか下記の内容をみてみましょう。 【フライトナースに向いている人】 ・現場でリーダーシップを発揮できる人
・冷静に判断できる人
・医師やパイロット、現場にいる消防士や警察官などとコミュニケーションが取れる人
・最新の救急医療について、常に向上心をもって学べる人
救命救急では、患者さんの命を救うために常に1分1秒を争う医療処置を行わなければなりません。医師の指示を受けて的確に医療器具を用意したり、円滑に処置を行うためには冷静な判断力が必要となります。 また、ドクターやパイロットのほか、現場にいる警察官、消防隊とのコミュニケーションが重要となります。積極的に意見を言える人、コミュニケーション能力が高い人はフライトナースに向いているといえるでしょう。 フライトナースの求人ってあるの?
フライトナースに関しては、基本的に病院側からの推薦か自ら志願することで目指すことができます。経験年数や資格は条件に満たしているか、適性に合っているかどうかを病院側は見極めなければなりません。
ですので、フライトナースの求人はほぼ無いと考えていたほうがよいでしょう。
一から目指す方は、まず救急病棟や救命センターに転職し経験を積むことから始めましょう。
さいごに
患者さんの命を救うため、1分1秒を争う救命救急の世界。そこからさらに、今すぐ助けを必要とする人の命を繋ぐドクターヘリの仕事。フライトナースはそんな最前線の医療に立つとても魅力的な仕事です。「一人でも多くの患者さんを助けたい」「自らが現場に赴き、命をつなぎとめたい」そんな思いを持つ方は、ぜひフライトナースにチャレンジしてみてはいかがでしょうか。