「夜勤、独り立ちしてみようか」
先輩から言われる言葉の中で、おそろしいものの1つです。
シャドーイング研修をしても、夜勤者の記録を読んでも、夜勤の独り立ちは不安ですよね。
元看護師の筆者が、夜勤中に気をつけていたこと、夜勤中に失敗したことをお伝えします。
夜勤独り立ち、一緒に乗り越えていきましょう!
初めての夜勤に向けて準備するものは?
シャドーイング夜勤を終え、先輩の手を離れて独り立ち…。筆者も不安だったのを覚えています。「不安に思ったときは、具体的に行動を起こすと、不安がなくなるんだよ」
先輩にそう教えてもらってからは、不安に思ったときはとにかく行動するようにしました。まずは、自宅で準備できるものからお伝えします。◆当日の食事、飲み物
夜勤は、日勤にくらべ長丁場になります。とくに2交代の場合、拘束時間は日勤のほぼ倍!食事や飲み物は、日勤よりもたくさん必要です。筆者は、お弁当と、2Ⅼ分の飲み物、おやつを準備しておきました。おやつはゼリー系飲料など、手軽にとれるものにしておくと、仮眠前にも食べやすいです。甘いものは元気が出ますが、血糖値が上がると、夜勤中に眠くなる危険が増します。眠気が心配な場合は、糖質オフのパンや麺などを試してみましょう。夜勤前の食事も一緒に準備しておけば、当日の体力を温存できます。◆夜勤用の時計やライト
夜勤では、消灯している時間に病室をラウンドします。ペンライトを準備し、時計も可能ならライト機能付きのものがいいでしょう。ライトは、首にかけたりポケットに入れたりして、両手が使えるものもあります。暗い病室で片手で点滴管理をするのは意外と大変なので、点滴の多い病棟の場合は使ってみて下さい。点滴の滴下計算に電卓を使う方もいますが、消音機能がついているかは必ず確認してくださいね。電卓や時計の音で、患者さんを起こしてはいけませんので。◆2交代の場合は仮眠グッズを
2交代の病棟では仮眠があります。仮眠をしっかりとることも夜勤を乗り切るためには必要ですので、自分に合った仮眠グッズを持っていきましょう。筆者は、イヤホンと目覚まし時計を必ず持っていました。イヤホンは、音楽を聴いて耳栓代わりにするためです。目覚まし時計は、夜勤中にとある失敗をしたから。スマホのアラームをかけて仮眠をとったのに、なぜか電源が落ちてアラームが鳴らず、寝過ごしたことがあるのです…。それ以来、アラームとセットで目覚まし時計を使うようになりました。仮眠室の場所によては、目覚まし時計の音が患者さんに聞こえてしまいますので、先輩に確認しておきましょう。それ以外でも、寝つきが心配な方はアロマオイルをもっていく、仮眠前はスマホを見ずに本を読むようにする、というのもおすすめです。アロマオイルの使用についても、先輩に確認してくださいね。 夜勤の時間に合わせて起きてみよう
夜勤では、普段寝ている時間に業務をします。夜勤の時間に合わせて起きてみると◆夜勤前は何時ごろに寝たらいいのか
◆どうすれば仮眠がとりやすいか
◆自分は何時ごろに眠くなるか
などが分かり、対策がとりやすくなります。日勤が寝不足になっては本末転倒なので、連休のときに試しましょうね。 夜勤明けのご褒美も準備しておこう
夜勤後の楽しみを用意しておくのも、夜勤を乗り切るためにおすすめです!
筆者は、夜勤明けは眠らずに出かけていました。
夜まで出かけ、帰ってからぐっすり眠ります。
オンオフの切り替えができるのはもちろん、生活リズムを調整するのにも役立っていました。
独り立ちの夜勤前に確認したほうがいいことは?
夜勤では、普段より大勢の患者さんを受け持つことになります。慌てずに夜勤をするために、確認したほうがいいことをお伝えします。◆物品の位置、使用方法
日勤なら先輩にきけますが、夜勤で人が少ない中では、主体的に動かなくてはなりません。特に急変時は、先輩に質問している余裕はありません。救急カートの場所、アンビューやAEDの使い方・場所、Dr.コールの方法など、いざというときは一人でも出来るように確認しましょう。急変時マニュアルや夜勤マニュアルが用意されている場合は、必ず目を通しましょうね。また、夜勤でもルート確保や採血などをする場合があります。日勤で自信がない看護技術は先輩に相談し、解決しておきましょう。◆夜勤の受け持ち患者さんについて
日中と夜間では、患者さんの様子が違います。せん妄が激しくなる、不安でナースコールが頻回になる、眠剤の効果でふらつきが強くなる…などです。夜勤者の記録や申し送りから、日中との違いを予想しておきましょう。夜勤では10人以上の患者さんを受け持つこともあり、普段あまり接したことのない患者さんを受け持つこともあります。看護記録を読むときや申し送りを受けるときに「自分がこの患者さんを受け持つとしたらどんな風にするだろう」と考えておくと、夜勤でも慌てずに対応できますよ。◆夜勤のスタッフについて
一緒に夜勤に入るスタッフを確認しておきましょう。夜勤は少ないスタッフでまわすため、日勤以上に人間関係がひびきます。一緒に夜勤に入る先輩に「夜勤に入るときはどんなことに気をつけたらいいですか?」ときいてみましょう。「夕食前後は忙しいから手短に報告してね」「出勤したらすぐ薬を確認しましょう」など、先輩それぞれのポイントがあるはずです。それぞれの先輩に合わせて夜勤をすれば、円滑にすすみますよ! 夜勤デビュー当日のコツを教えて!
不安と緊張の夜勤デビュー当日。筆者はこんな風に乗り切っていました。◆まずは体調を万全に
ただでさえ、長くて眠い夜勤。体調を崩したらつらさが倍になってしまいます。筆者は夜勤中に膀胱炎になったことがありますが、仮眠はとれず、患者さん対応には集中できず、散々でした…。夜勤前は緊張で眠れなかったり、食欲がおちることもあります。眠れなくても、横になるだけで体は休まりますので、好きな音楽でも聴いて横になりましょう。食欲がないときでも食べられるものを常備しておくのもいいですね。◆余裕をもって出勤しよう
日勤のときから心がけているとは思いますが、夜勤のときも早めに出勤しましょう。夜勤では10人以上の患者さんを受け持つこともありますから、情報収集に時間がかかります。病院・病棟にもよりますが、申し送りの30分前には出勤していることが多いです。◆分からないことは質問しよう
日勤よりも看護師が少ない夜勤では、先輩に質問するタイミングがつかめないこともあります。ですが万が一判断を間違えると、看護師が少ない分、対応が大変になります。質問すると先輩の手を止めるようで申し訳ない気持ちになりますが、質問しないほうが迷惑をかけてしまいます。忙しそうなときは「○○について質問したいんですが、後にしたほうがいいでしょうか?」と簡潔に伝えてみましょう。
◆仮眠は遠慮せずとろう
長い夜勤を乗り切るためには、仮眠は必要です。研究によると「夜勤中に仮眠を1時間とるだけで、夜勤前に仮眠を3時間とるのに匹敵する効果がある」という結果がでています(※1)。眠いままでは判断力もにぶり、ミスにつながりやすくなってしまいます。先輩に迷惑をかけないためにも、仮眠はきちんととりましょう。寝つきが悪い場合は、目を閉じて横になっているだけでも、疲れがとれますよ。(※1)産衛誌│ 病院看護婦が日勤一深夜勤の連続勤務時にとる仮眠の実態とその効果
◆他のスタッフが休憩する前に確認すること
先輩が休憩や仮眠をとる前に、休憩中の判断基準を確認しておきましょう。患者さんが点滴を自己抜去したらどうするか、頓服をほしがる患者さんに一人で対応していいか?などについてです。ないほうがいいですが、先輩を仮眠から起こしてもいい場合についても確認しておきましょう。特に急変のリスクがある患者さんについては「モニターでこういった兆候が現れたら仮眠中でも先輩を呼ぶ」「こういった状態になったらすぐにDr.コールをする」など確認しておくと、万が一の対応が遅れずに済みます。◆とにかく笑顔で!
初めての夜勤は不安ですが、その気持ちが患者さんに伝わってしまうと、患者さんも不安になります。夜勤中は普段以上に笑顔を心がけましょう! 夜勤の最後!申し送りのコツは?
「申し送り中、声が震えてしまいます」
「頭が真っ白になります」
筆者も経験がありますので、よく分かります。
特に夜勤は時間が長く、受け持ちも多いので、申し送ることも多くなりがち。
筆者が申し送りのときに、念頭においていたことをお伝えします。
申し送りの目的は、患者さんの情報を伝えること
「緊張して声が震えちゃう」「どもってないかな」
静かなステーションで申し送りをしていると、自分の声が普段より響く気がして、色んな事が気になります。
ですが、申し送りの目的は「患者さんの情報を伝えること」です。
聞き取りやすいに越したことはないですが、なによりも「必要な情報を伝えること」が大切。
自分の声がどうなっているかよりも、「伝えようと思ったことを忘れていないか」に意識を向けましょう。
「この情報の次はこの情報を伝えよう」と考えながら申し送ると、不思議と落ち着いて伝えられます。
どこを看てほしい?何をしてほしい?
「何を申し送ればいいかわかりません」「情報が多い・足りないって言われます」
筆者も同じことで悩んでいました。
「申し送りのときに何を教えてほしいか」という視点で情報を整理してみましょう。
「どこを看てほしいか」「何をしてほしいか」を申し送りで教えてくれたら、業務がしやすいですよね。
「尿量が少ないので、飲水量も確認してほしい」「〇時にこの処置をしてほしい」というように整理して、申し送りをしましょう。
先輩の申し送りや記録を参考にする
「この先輩の申し送り、わかりやすいなぁ」という方はいますか?
その先輩の申し送りは、どうして分かりやすいのでしょうか?
「こんな情報を伝えてくれたから」「こんな順番で整理して伝えてくれたから」
など、見習えそうな点があればどんどん取り入れましょう!
申し送りが分かりやすい人は、看護記録も分かりやすいです。
先輩の記録を読みながら「どんな視点で書いてるんだろう」と考えてみて下さい。
緊張を解く方法
筆者が実践している、緊張を解く方法です。「心と体の緊張は連動するから、先に体の緊張を解けばいいんだよ」と教えてもらいました。緊張しているときは肩が上がるので、意識的に肩を下げます。緊張しているときは呼吸が浅く速くになるので、深くゆっくりと呼吸します。少し意識すると、緊張が解けます。緊張を解く方法
◆肩を下げる◆深くゆっくりと呼吸する 時系列に沿っておさらい!夜勤、こんなことに気を付けよう
2交代を例に説明します。16:30◆出勤
情報収集をします。夜勤時は10人以上の患者さんを受け持つこともあるので、優先順位をつけて情報収集しましょう。筆者は「定時で行う処置に変更がないか」「重症度の高い患者さんの容態が変化していないか」を優先的に確認していました。定時の処置はメモし、タイムスケジュールをつくっておくといいですね。食前薬は忘れやすいので注意してください。日中に新しい患者さんが入院している場合は、受け持ちでなくとも挨拶し、日中の様子を確認しておきましょう。17:00◆引き継ぎ
受け持ち患者さんの情報はもちろん、受け持ちでない患者さんの情報もメモしましょう。他のスタッフが仮眠中や処置中の場合、自分が対応することになるからです。一人で何人の患者さんを受け持つ、というより、全員で全ての患者さんを受け持つ、というイメージです。17:30◆病室ラウンド
受け持ちの患者さんに挨拶しながら、点滴や酸素を確認しましょう。点滴の滴下がズレていると、夜勤のスケジュールがズレていきますので注意。日勤で救急カートを使った場合、所定の場所に戻っていない場合があります。ついでに確認しておきましょう。18:00◆配膳、食事介助
食前薬があれば忘れずに!自分もお腹がすいてくる時間ですが、もう少し我慢です。18:30◆与薬、口腔ケア
寝る前の口腔ケアが不十分だと、誤嚥の危険があります。19:00◆バイタルチェック、点滴交換、おむつ交換、体位変換など
トイレ誘導・おむつ交換は、休憩前にできるといいです。休憩が始まってしまうと、少ない人数で全ての患者さんを看なくてはならないので、ゆっくり病室にいることが出来ません。患者さんから訴えがなくても、誘導すると排泄がみられることがあります。20:30◆眠前の与薬、消灯
ラウンドし、患者さんに消灯を伝えます。ベッドアップしている患者さんは、このときにフラットにします。カーテンが開いていたら、患者さんに確認してしめましょう21:00◆交代で休憩・病室ラウンド
1、2時間程度の仮眠を交代でとります。仮眠中の対応について、先輩に確認しておきましょう。消灯後も1~2時間毎にラウンドします。ラウンド時に患者さんを起こさないよう、ライトの方向にも気を配ってください。輸液ポンプを使用している患者さんがいる場合、アラームが鳴ると起きてしまうので、終了時刻に病室にいられるようにしましょう。看護記録も夜の間にすすめておきます。翌6:00◆点灯、病室ラウンド
朝の様子を確認し、夜勤リーダーに申し送ります。患者さんの覚醒を促すために、ベッドアップをしてもいいです。翌7:30◆配膳、食事介助
食前薬があれば忘れずに。寝起きでフラついてしまう患者さんもいますので、食堂に誘導する際は気を付けましょう。翌9:00◆日勤者に申し送り
緊張しますが、落ち着いて申し送りましょう。もう少しです!翌9:30◆記録を書いて業務終了
お疲れ様でした!帰ってゆっくり休みましょう。 Q&A 夜勤のお悩みここで解決
Q.同期は夜勤が始まったのに、私はまだです…新卒の夜勤はいつごろから始まるのが普通ですか?A.半年~1年のことが多いですが、職場や教育方針によっても違います。自分のペースを大切にして!
同期と状況が違うと、不安に思ってしまいますよね。ですが、病棟によっても違いますし、先輩の考え方によっても違います。重要なのは「いつ始まったか」ではなく「始まる前に準備ができているか」です。いずれくる夜勤に備え、今日も患者さんと向き合っていきましょう。Q.2交代と3交代、どっちがいいですか?A.どちらにもいいところがあり、人によって合う合わないがあります。
2交代の特徴◆夜勤が長い◆夜勤明けの翌日が必ず休みになる◆夜勤中に仮眠がとれる3交代の特徴◆夜勤が短い◆夜勤が続く場合がある◆夜勤中の仮眠はない2交代は夜勤が長いため、体力に自信があるか、仮眠が苦手でないか、が重要になります。3交代は勤務が短い反面、夜勤が続いて不規則な生活になる場合もあります。それぞれ対策もかわるので、先輩にきいてみましょう。 おわりに 夜勤はだんだん慣れていくもの
◆夜勤前には、食事やライト、仮眠グッズを準備しよう!
◆夜勤前に確認することは、急変時の対応、患者さん・スタッフの情報!
◆夜勤当日は、体調に気をつけて、笑顔で乗り切ろう!
◆申し送りの緊張を解くには、肩を下げる!
「日勤が不安なのに、夜勤なんて…」筆者も、初めての夜勤ではそう思いました。先輩や、ときには患者さんから叱咤激励を受け、ひとつずつできることが増えていきました。「今日は食前薬を忘れなかった」「今日は申し送りでかまなかった」ひとつひとつは小さなことですが、学生時代の実習だって、ひとつずつできるようになったんです。筆者が先輩から受けたアドバイスや、自分なりのコツをお伝えしました。夜勤デビュー、応援しています!関連記事