看護実習は看護師になるためには必須の病院等で行う臨床実習のこと。
今回は看護実習について徹底解説します。
看護実習の目的・内容・各実習分野ごとの解説や大変なことを紹介します。また辛い実習の乗り越え方もまとめました。
看護実習を控えている看護学生の方必見の内容です。
看護実習とは
まずは看護実習とは何かを解説します。
看護実習の目的
初めに看護実習の目的を解説します。文部科学省は「看護学実習ガイドライン」にて看護実習の目的を下記のように示しています。(引用元:文部科学省HP 看護学実習ガイドライン)1)看護学実習は、学生が学士課程で学修した教養科目、専門基礎科目の知識を基盤とし、専門科目としての看護の知識・技術・態度を統合、深化し、検証することを通して、実践へ適用する能力を修得する授業である。病院、施設、在宅、地域等の多様な場において、多様な人を対象として援助することを通して、学生が対象者との関係形成を中核とし、多職種連携において必要とされる連携・協働能力を養い、看護専門職としての批判的・創造的思考力と問題解決能力の醸成、高い倫理観と自己の在り方を省察する能力を身に付けることを目指す。 2)看護学実習はカリキュラムの一環に位置づけられ、その具体的な方法は各大学が責任をもって決定する。看護学実習は次世代の看護系人材を育成する重要な教育・学修の場であり、学生は実習における学びを卒業後の継続的な学修につなげるといった自己研鑽に努め、さらに成長することを目指す。3)看護学実習は、看護コアカリに示された「臨地実習における学修の在り方(特徴)」の学修目標(①~⑥)の到達を目指す。① 学修した看護学の知識・技術・態度を統合し、根拠に基づき個別性のある看護を実践で きる。② 多様な場で展開される、人々の多様な生活の実際を理解できる。③ 多様な社会資源、サービス、制度の実際を見ることで看護の受け手の生活に関わる社会 資源の意義を説明できる。④ 実習の積み重ねを通して、必要とされる看護が場や看護の受け手により異なることを理解し、看護者の役割を創造的に考察できる。⑤ 実施した看護の意味や課題を、看護の受け手を中心とする視点や倫理的観点で振り返ることができる。⑥ 実践の振り返りを通して、看護専門職としての自己の在り方を省察し、看護の質の向上 に向けた自己研鑽ができる。4)「看護学実習の目的」の設定は大学の責任の下に行う。大学は、教育理念、教育目標ならび に「卒業認定・学位授与の方針」(ディプロマ・ポリシー)、「教育課程編成・実施の方針」(カ リキュラム・ポリシー)及び「入学者受入れの方針」(アドミッション・ポリシー)との一貫性をもって、さらに社会の多様性やヘルスケアニーズにも対応することを工夫し、カリキュ ラムに実習科目を体系的に位置付け、全ての看護学実習科目を総括する目的を設定する。 看護実習の内容
看護実習は基礎看護臨地実習、領域別看護臨地実習、統合実践看護臨地実習の3つに区別されます。領域別看護臨地実習では、成人、老年、小児、母性、精神と5領域の専門的な内容を学習します。また、統合実践看護臨地実習は在宅看護を含むより実践的な内容を臨床で学ぶことができる実習です。文部科学省の「【看護編】高等学校学習指導要領(平成30年告示)」では、看護実習の目標は下記のように定められています。(引用元:文部科学省HP 【看護編】高等学校学習指導要領(平成30年告示))看護の見方・考え方を働かせ、臨地において実践的・体験的な学習活動を行うことなどを通して、看護の実践に必要な資質・能力を次のとおり育成することを目指す。(1)臨地における看護について体系的・系統的に理解するとともに、関連する技術を身に付けるようにする。(2)臨地における看護に関する多様な課題を発見し、看護の職業倫理を踏まえて解決策を探究し、合理的かつ創造的に解決する力を養う。(3)臨地における看護について、よりよい看護の実践を目指して自ら学び、人々の安全と安楽を守り、健康の保持増進と生活の質の向上に主体的かつ協働的に取り組む態度を養う。 基礎看護臨地実習
基礎看護臨地実習では、保健医療福祉施設の機能と看護の役割や対象の理解、看護におけるコミュニケーション、日常生活の援助、看護の展開が主な学習内容です。
看護学生となり初めての実習が基礎看護臨地実習となります。
実習名通り、看護の基礎的な部分を学ぶ実習です。
看護の見方や考え方など、基盤となる部分を臨床から学びます。
領域別看護臨地実習 成人看護臨地実習
域別看護臨地実習では、専門領域別の看護について、領域の特質に応じた看護を学習します。
臨床での実際のケアを通して看護観や倫理観を磨いていくという目的があります。
看護の見方・考え方を実践的に理解することが必要です。
域別看護臨地実習の成人看護臨地実習では、急性期、慢性期、終末期などの各病期に応じた看護を学びます。
リハビリテーションの計画や見学、サポートも行います。
身体面だけでなく精神面でのケアも体験し、実践的な学習を行うことが重要です。
領域別看護臨地実習 老年看護臨地実習
成人とは違った、加齢に伴う身体的な変化を通して、個別性に応じた看護を学習します。
加齢に伴う身体的な変化はもちろん、精神的、社会的な変化や特徴も踏まえた看護が必要です。
高齢者の生活行動と健康の関係性を、患者の生活歴を鑑みながら支援していきます。
また、高齢者に対する多職種の関わりや連携を学ぶために、病院の他に老人福祉施設や老人保健施設などでも実習を行います。
領域別看護臨地実習 小児看護臨地実習
成長段階である小児の各発達段階別に健康課題を取り扱います。
実践的な援助や発達段階に応じた説明を通して、患者に自立を促しながらサポートします。
治療への参加を促す支援と並行して、成長期に応じた発達を促す援助も取り入れながら看護を実践することがポイントです。
また、小児の成長発達への理解を深めるため病院やクリニックの他、保育所・幼稚園、特別支援学校などでも実習を行います。
領域別看護臨地実習 母性看護臨地実習
母性の健康と発達の特徴を学びます。
娠期、分娩期、産褥期についての患者と家族の精神的、社会的な影響も押さえておく必要があります。
母親のケアはもちろん、父親や新生児への看護も重要な課題です。
授乳、おむつ交換、沐浴、感染予防などのケアを実践しながら学習します。
新生児へのケアを母親や父親に指導することも、母性看護臨地実習では必要な要素です。
母性看護への理解を深めるために、病院や助産所、母子保健センター、子育て支援センターなど、多様な施設で実習を行います。
領域別看護臨地実習 精神看護臨地実習
精神的な疾患を抱えている方への援助、自立に向けた支援を学習します。
実践的な看護を通じて、精神看護の人権擁護、治療に必要な対人関係などを学びます。
精神的な疾患を抱えている患者をサポートする多職種への理解を深めることも重要です。
精神保健、精神医療、社会福祉などの職種の方々との連携を学びます。
精神領域への理解を深めるために、病院だけでなく、精神保健関連施設、精神障害者社会 復帰施設、精神障害者福祉関連施設などでも実習を行います。
統合実践看護臨地実習
統合実践看護臨地実習では、在宅看護臨地実習と看護の統合と実践を行います。
在宅看護臨地実習では、基礎看護臨地実習や領域別看護臨地実習での実践を生かし、在宅で治療を行う患者への看護を学習します。
在宅で治療を行うことのリスクマネジメント、意思決定の支援、自立への支援などを学びます。
また、療養者のみならず家族への援助や指導なども重要なポイントです。
在宅看護に関連する社会資源に関しても学びます。
地域における包括的な医療体制を学習するために、訪問看護ステーション、地域保健センターなどの多様な施設での実習を行います。
看護の統合と実践では、通常のスタッフ業務をより臨床に基づいて実践します。
管理業務や夜間業務などの一部を体験し、患者を複数受け持つことの課題を多様な観点から見つけ出します。
看護業務だけでなく、多職種との連携や看護管理、医療安全などについても学ぶことが重要です。
看護実習の安全面での注意点
看護実習を安全に行うためには、いくつかの注意点に留意する必要があります。
例えば、病院ではさまざまな疾患を抱える患者がおり、実習中は細菌やウイルスに感染するリスクがあります。
また放射線を取り扱う検査もありますので、感染予防及び放射線被曝防止には留意することが必要です。
また、臨床ではさまざまな薬品が取り扱われています。
薬品の取り扱い方法は正しく行う必要があります。
医療機器や器具の使用方法も、事故や怪我に注意して、正しく使用しましょう。
看護実習のスケジュールについて
続いては、看護実習のスケジュールを紹介します。
年間スケジュール
看護実習の年間スケジュールは以下の通りです。
1年生 9月〜基礎看護臨地実習Ⅰ 2月〜基礎看護臨地実習Ⅱ
2年生 7月〜2月領域別看護臨地実習
3年生 5月〜11月領域別看護臨地実習 11月〜統合実践看護臨地実習
上記は看護専門学校でのスケジュールの一例であり、4年制大学では日程が異なる場合があります。
1日のスケジュール
看護実習の1日スケジュールはおおよそ以下の通りです。
8:00 病院に到着
8:30 朝の申し送りに参加
9:00 指導者への行動計画の発表
9:30 患者への挨拶 ケアの実践
12:00 休憩
13:00 ケアの実践
15:00 カンファレンス
15:30 夜勤看護師への申し送りに参加
16:00 指導者への報告
16:30 実習終了
上記はスケジュールの一例であり、学校や実習先によって異なる場合があります。
実習で大変なこと・対処法
慣れない環境での実習では、大変なこともあります。
看護学生が感じた実習での大変なことや、各対処法を紹介します。
指導者が厳しい
看護実習でよくある悩みは、指導者の厳しさです。
忙しい現場ですし、命を預かる緊張感のある病院では、看護学生の話をゆっくりと聞く時間が無いことも。
指導者への相談や報告は、内容をまとめてメモなどに書いてから行いましょう。
無駄な時間を取らせないことがポイントです。
実習記録を書くのが大変
実習記録は、看護実習後必ず提出するレポートのこと。
書く時間が取れなかったり、何を書いてよいのか悩んでしまうこともあるかと思います。
記載する時間がない場合は、実習の合間を縫って走り書きでも情報を残しておくことが大切です。
記載する内容については実習担当の先生に相談するのが良いでしょう。
事前学習の量が多い
患者の疾患や病状によって事前学習の内容は異なります。
事前学習の内容が多く、実習前に調べきれなかった際には、教科書や参考書を実習先に持っていくのがおすすめです。
休憩時間やスキマ時間で、知識を深めましょう。
患者とのコミュニケーションが難しい
患者とのコミュニケーションは、緊張しますし何を話したら良いか分からないですよね。
患者と密に接しているのは看護師ですので、病棟の看護師に相談するのが良いでしょう。
また、先生も看護師として勤務していた先輩なので何を話していたか聞いてみるのがおすすめです。
看護実習中のストレス発散方法
実習期間中は、緊張状態が続きストレスも溜まってしまいます。
実習期間中のストレス発散は、気分を開放できるものがおすすめ。
カラオケやスポーツなど、体を使って熱中できるものでストレスを発散しましょう。
看護実習の進め方とは
最後に看護実習の上手な進め方を紹介します。
行動計画の立て方
行動計画は看護実習の肝となる部分です。
実習に行く前に、どのような看護を実践するのか、何に留意して行うのかなどを記載します。
また、行動計画は時間を軸に書き進めていきます。
いつどのようなことをするのか明確に記載しましょう。
実習の持ち物
実習の持ち物として、必ず必要なものを紹介します。・メモ帳
・文房具
・時計
・聴診器
この他にも検査値を確認できる参考書などがあると便利です。また、時計はナース服に付けられる、クリップ付きのナースウォッチがおすすめです。 カンファレンスの進め方
実習でのカンファレンスは、学生が主導で行うグループ会議のこと。
日々の実習での問題点や疑問点、課題を話し合います。
カンファレンスを行う際は、まず役割を決めましょう。
司会進行、書記、事例を提供する人は決めておく必要があります。
テーマを設定したら、時間配分を行いながら司会者が進行を行います。
カンファレンスで発言しないのはNG。
メンバー全員が平等に発言できるカンファレンスが理想です。
まとめ
今回は看護実習についてまとめました。
看護実習は看護師になるために避けては通れません。
各実習ごとの目標を理解し、目的を考えながら実習に取り組むことできっと看護師になるためのヒントが見つかります。
時々ストレスを発散し気分転換をしながら、看護実習を乗り越えましょう。