今回は看護補助者(看護助手)について解説します。
看護補助者について、基本的な役割から詳細な勤務スケジュールまで、さまざまな情報をまとめました。
気になる給与や看護補助者になる方法も紹介しています。
看護補助者を目指している方はぜひ参考にしてください。
看護補助者(看護助手)とは?
まずは、看護補助者とは何かを解説します。
日本看護協会が発表した「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」にて、看護補助者とは
「看護が提供される場において、看護チームの一員として看護師の指示のもと、看護の専門的判断を要しない看護補助業務(『傷病者 若しくはじよく婦に対する療養上の世話』及び『診療の補助』に該当しない業務)を行う者」と定義されています。
(引用:日本看護協会 看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド)
次章以降では、看護補助者の役割や業務上の責任、基本理念を紹介します。
また、看護補助者と業務内容が似ている介護士、看護師との違いも見ていきましょう。
看護補助者(看護助手)の役割と責任
看護補助者の役割は、日本看護協会が発表した「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」にて、以下のように定義されています。
看護が提供される場において、看護チームの一員として看護師の指示のもと、看護師長及び看護職の指導のもとに、看護の専門的判断を要しない看護補助業務を行う。看護補助者は対象者の状態に応じてケアの方法を変更するなどの看護の専門的判断は行わないため、標準化された手順や指示された手順に則って、業務を実施する。
看護補助者の責任は、同ガイドにて以下のように定義されています。
看護補助者には自らの役割や責任の範囲を明確に理解し、看護師の指示を受け、安全に看護補助業務を実施する責任がある。
(引用:日本看護協会 看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド)
このように、看護補助者は自身が実施するべき業務の範囲を遵守し、看護の専門的判断を必要としない業務を行う必要があります。
看護補助者(看護助手)の基本理念
看護補助者を含む看護チームにおける基本理念は.日本看護協会の「看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド」において、下記のように定められています。
・安全で質の高い看護を効果的・効率的に提供
高齢化の進展や疾病構造の変化、患者像の複雑化、地域包括ケアの推進等により、看護の専門性が求められる場面が増加するとともに、役割が多様化している。これらの変化に対応するため、看護チームにおいて各職種が各々の役割と責任を果たし、効果的かつ効率的に看護が提供できるよう業務実施体制の整備や定期的な見直しを行い、看護の対象者が安全で質の高い看護を受けられるようにすることが重要である。
・法令遵守
看護職の業務は保健師助産師看護師法をはじめとする法令等により規定されている。そのため、すべての看護職は、看護チームの各職種に関する法令等の規定を理解し、遵守することが不可欠である。本ガイドラインでは、保健師助産師看護師法で定める看護師及び 准看護師の「業」の違いに基づき、他の法令・通知等も踏まえ、両者の役割の違いを示した。その上で、この役割の違いに応じ、「業務」を整理した。
・ 「看護職の倫理綱領」(2021年)及び「看護業務基準」(2016年改訂版) に準拠
日本看護協会では、あらゆる場で実践を行う看護職を対象とした行動指針である「看護 職の倫理綱領」(2021年)及び保健師助産師看護師法で規定されたすべての看護職に共通 の看護実践の要求レベルと責務を示す「看護業務基準」(2016 年改訂版)を公表している。 本ガイドラインでは、これらに基づき、看護チームにおける業務のあり方に関する基本的な考えを示す。
(引用:日本看護協会 看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド)
介護士・看護師との違いについて
看護師と看護補助者の一番の違いは、資格が必要かどうかという点です。
看護補助者として働くために必須の資格はありません。
介護士には、一部資格なしで行える業務もありますが、多くの老人ホームや身体障害者施設では、介護福祉士の資格が必要となります。
一方看護師として勤務するには、看護師養成校を修了後、国家資格に合格する必要があります。
資格の有無に伴い、看護補助者が行う業務内容にも違いがあります。
看護の専門知識が必要な業務を行うのが看護師で、専門知識が必要ない業務を行うのが介護補助者です。
看護補助者(看護助手)の仕事とは?
続いては看護補助者の仕事内容を見ていきましょう。
看護補助者(看護助手)の勤務形態
看護補助者の勤務形態は、就職先によって異なります。
基本的には病院やクリニックで働いている看護師と同じような勤務形態になるでしょう。
夜勤のある病棟勤務では、看護補助者も夜勤ありの二交代や三交代で勤務することになります。
二交替とは日勤、夜勤を交代で勤務し、三交代では日勤、準夜勤、夜勤の3パターンの勤務です。
クリニックで勤務する場合は、病床がありませんので、夜勤なしの勤務となります。
看護補助者(看護助手)の業務内容
看護補助者の業務内容は、勤務先によって大きく異なります。
病棟、外来、材料室、手術室、内視鏡室での業務内容を見ていきましょう。
病棟勤務の場合
病棟勤務の場合は病床や病床周辺の清掃、整頓を行います。
病床や病床周辺の清掃、整頓の具体的な業務内容は以下の通りです。
・ベッド周辺の清掃
・ベッド周辺の整頓
・ベッド周辺の洗浄
・ベッド周辺の消毒
・ベッド周辺物品の交換
・ベッド柵、吸引器、酸素ボトルの点検
・使用していない医療機器等の清掃
・使用していない医療機器等の整頓
・使用していない医療機器等の点検
・病棟の処置室の整理整頓
この他にも病室環境の調整やシーツ交換、ベッドメイキング、リネン類の管理も行います。
また、患者さんに関わる業務も行います。
・入院や検査のための搬送
・見守り
・食事介助
・口腔ケア
・シャワー、入浴の介助
・洗髪
・足浴、手浴
・洗面、整容
・清拭
・寝衣交換
・おむつ交換
・体位変換
・排泄介助
・配膳、下膳
外来勤務の場合
外来勤務の場合は、診療に関わる業務を行います、
・処置、検査等の伝票類の準備
・処置、検査等の伝票類の整備
・診療に必要な書類の整備
・診療に必要な書類の補充
・診療に必要な機械、器具等の準備
・診療に必要な機械、器具等の片付け
・診療材料の補充
・診療材料の整理
・入退院、転出入に関する業務
・診察室の整理整頓
材料室勤務の場合
材料室勤務では、医療機器や医療用品の管理を行います。
・医療器具の洗浄
・医療器具の管理
手術室勤務の場合
手術室勤務では、オペ室内の環境整備等を行います。
・医療器具の洗浄
・医療器具の管理
・オペ室の清掃
内視鏡室勤務の場合
内視鏡室勤務では、看護師の補助的な業務や内視鏡室内の整備を行います。
・内視鏡の洗浄
・内視鏡の管理
・内視鏡資材の洗浄
・内視鏡資材の管理
・検体の移送
看護補助者(看護助手)の1日のスケジュール
各勤務帯ごとの看護補助者の1日のスケジュールを紹介します。
早番の場合
7:00 勤務開始、看護師とのミーティング、酸素ボンベの残量確認・交換
7:30 配膳、食事介助
8:00 下膳・食事量の記入、看護師とミーティング、口腔ケア
9:00 吸引瓶の交換、ベッド周囲の清掃
10:00 術後ベッド作成、シーツ交換
10:30 休憩
12:00 配膳、食事介助
12:30 下膳、食事量の記入
13:00 口腔ケア
13:30 患者搬送、冷却枕の交換
15:30 報告、勤務終了
日勤の場合
8:00 勤務開始、看護師とミーティング
9:00 口腔ケア、物品補充、整備
10:00 患者搬送
12:00 配膳、食事介助
12:30 休憩
13:30 患者搬送
16:00 酸素ボンベの残量確認・交換、膀胱留置カテーテルバックの尿破棄
16:30 報告、勤務終了
遅番の場合
11:30 勤務開始、看護師とミーティング、リネン室整理
12:00 配膳、食事介助
12:30 下膳、食事量の記入
15:30 休憩
16:00 救急カートの点検・補充
16:30 患者搬送
18:00 配膳、食事介助、口腔ケア
19:00 下膳、食事量の記入
19:20 冷却枕の交換
19:30 報告、勤務終了
(参考:日本看護協会 看護チームにおける看護師・准看護師及び看護補助者の業務のあり方に関するガイドライン及び活用ガイド)
看護補助者(看護助手)の給料
厚生労働省の賃金構造基本統計調査によると、令和2年度の看護助手[1] の平均年収は約22万円です。
賞与も含めた平均年収は約308万円です。
(参考:政府統計 賃金構造基本統計調査 / 令和2年賃金構造基本統計調査 一般労働者 職種)
看護補助者(看護助手)として働くメリット・デメリット
続いては、看護補助者として働くメリット・デメリットを紹介します。
看護補助者(看護助手)として働くメリット
まずは看護補助者として働くメリットを見ていきましょう。
メリット①どこでも働ける
看護補助者として働くメリットの1つ目は、どこでも働けることです。
病院やクリニックは日本中どこにでもありますので、求人募集さえあれば、いつでもどこでも働くことができます。
再就職先を探す際にも、どこでも働くことができますので、就職先はさまざまな場所から選ぶことができます。
家族の都合で転勤が多い方にもおすすめの職業です。
メリット②医療業界について学べる
看護補助者は特別な資格が必要のない仕事です。
誰でもチャレンジすることができ、看護補助者の業務をきっかけに、医療業界を深く知ることができます。
医療業界について臨床で学ぶことができるので、看護師や介護士を目指している方にもおすすめの職業です。
看護補助者として働きながら、看護学校や介護士の学校に通って勉強するというパターンもあるようです。
メリット③幅広い知識が身につく
看護補助者として医療現場で働くことで、幅広い知識を身につけることができます。
介護の知識や、病気の知識、薬の知識など。
今後の生活に役立つスキルや知識を学ぶことができるのもメリットの一つでしょう。
看護補助者(看護助手)として働くデメリット
続いては看護補助者として働くデメリットを紹介します。
デメリット①看護師の助手というポジション
看護補助者は、看護の専門知識を要する業務は行うことができません。
ですので、看護師の補助的な業務がメインとなります。
看護師と反りが合わなかったり、業務を命令されているように感じてしまったり、やりたいことがあっても看護師資格がないからできない、ということも。
看護補助者というポジションゆえのジレンマがあるようです。
デメリット②身体的な疲労が大きい
看護補助者は、シーツ交換や入浴介助など、体を使う仕事も多々あります。
重いものを持つことも日常的にあるため、腰痛や肩こりに悩ませられている方も多くいます。
看護補助者(看護助手)になる方法
看護補助者として働くために必要な資格はありません。
無資格でも採用試験に合格すれば、看護補助者として医療現場で働くことができます。
ですが、看護助手実務能力認定試験やメディカルケアワーカー検定試験などの資格があると、より良い条件で就職できるでしょう。
介護福祉士やホームヘルパー、介護職員初任者研修としての経験も、看護補助者の業務に活かすことができます。
まとめ
今回は看護補助者の情報をまとめました。
看護補助者は医療現場にいなくてはならない、必要不可欠な存在です。
高齢化が進む日本では、今後も医療の需要が高まり続けます。
看護補助者のニーズも高まることが予想できますので、ぜひチャレンジしてみてくださいね。
※掲載情報は公開日あるいは更新日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。