訪問看護は肉体的なケアも行いますが、精神的なサポートが重要な仕事です。
看護のみならずオールラウンドな知識が求められ、利用者さんやご家族に寄り添った看護が必要となります。
具体的に訪問看護師はどのような仕事をしているのでしょうか?
訪問看護に必要な資格は?どんな人が向いているのでしょうか?
ここでは、訪問看護の仕事内容についてご紹介していきます。
転職を検討されている方は、ぜひ参考にしてみてください。
訪問看護について
訪問看護とは、自宅で療養生活を送る方のために看護師などが直接訪問しケアをおこなうサービスのことです。病院やクリニックで入院を続けるよりも、住み慣れた場所での療養を望む方に合わせて主治医と連携しながら援助をしていきます。おもに、主治医が作成する訪問看護指示書に基づき、健康状態のチェック、医療処置、身体介護、療養指導をおこないます。もちろんそのなかで、利用者とご家族の相談に乗ってアドバイスをすることも訪問看護師の仕事のひとつです。
“訪問看護”と聞くと、高齢者を対象とするイメージがありますが、実際は乳幼児から高齢者まで幅広い年齢を看護しています。
看護師や准看護師のほか、理学療法士や作業療法士、言語聴覚士なども活躍しているのが訪問看護の特徴です。
訪問看護の体制は?
訪問看護の現場では、おもに「受け持ち制」と「チーム制」の二つの体制で大きく分類されます。
■受け持ち制
受け持ち制とは、一人の利用者さんに対して一人の訪問看護師が担当する形式のこと。
利用者さんがサービスを終えるまで同じ看護師が担当します。
受け持ち制を取り入れるメリットとしては、
・利用者さんと信頼関係を築きやすい
・訪問スケジュールを固定化しやすい
・外部(主治医やケアマネージャー)と密に連携がとれる
などといったことが挙げられます。
一方で、看護師を一人に固定してしまうことでデメリットが生じてしまう恐れがあります。
・看護師自身の急な休みに対応しづらい
・利用者さんに対する責任が重くのしかかる
・看護がマンネリ化してしまいがち
受け持ち制の大きなデメリットは、“急な休みが取りづらい”ところです。
勤務先によっては、万が一メインの担当者が出勤できない場合に備えて、利用者さんのフォローをおこなうサブ担当を設けているところもありますので事前に確認してみましょう。
■チーム制
チーム制とは、一人の利用者さんに対して複数の看護師が連携して看護をおこなう形式のこと。メイン担当の看護師を中心にサブ担当を決めていきます。
チーム制のおもなメリットは以下のとおりです。
・休みが取りやすい
・緊急時などに連携して対応できる
・客観的に評価し合えるので、看護の質が高まる
受け持ち制と異なり、チーム制では“休みが取りやすい”といったメリットがあります。
また、複数の看護師が担当することから緊急時には連携して対応できることもポイントとなります。
もちろん、チーム制に関しても少なからずデメリットは生じてしまうようです。
・人員を必要分確保しなければならない
・看護ケアマネジメントスキルをもつ人材が必要
・複数の看護師が担当するため、信頼関係を築くのに時間がかかる
利用者さんの数が多ければ、それだけ人員を確保しなければなりません。ほかにも、看護師一人ひとりと信頼関係を築くことをストレスに感じてしまい「受け持ち制に変えてほしい」といった利用者の声も多くみられます。
受け持ち制、チーム制ともにメリット・デメリットがありますので、転職の際にはぜひ参考にしてみてください。
訪問看護ステーションで働く看護師の仕事内容
訪問看護の仕事内容は、一般的な体調管理と簡単な看護ケアが中心となります。
具体的には、
・利用者さんの健康状態のチェック
・リハビリの補助指導
・清拭、入浴、排泄、食事など日常生活のサポート
・留置カテーテルの管理や、医療器具の管理と点検
・床ずれの処置や予防のための体位変換
などをおこないます。
主治医の指示による処置も行いますが、訪問看護は診療科目が限定されていないので、オールラウンドに知識を身につける事ができます。利用者さんに応じて、自分で判断、決断する必要があるため自己のスキルアップに繋がる職場です。
また在宅看護は、利用者さんが住み慣れた環境で医療を継続でき、費用が入院療養よりも安いというメリットはありますが、看護をするご家族にとっては負担が大きいというデメリットがあります。
そのようなご家族に対して、日常生活における注意点や指導、アドバイスをおこない精神的にサポートしていくことも重要な仕事のひとつです。
訪問看護ではこのような仕事内容を通して、利用者さんが普段通りの生活を継続できるように清潔で心地よい状態を提供し、また生きる力を失わないように、精神的、肉体的に苦痛を和らげてあげることが大切です。
訪問看護に関する不安要素
訪問看護師の仕事は大変?
訪問看護師の仕事を検討するうえで、一番気になるのは“訪問看護師はどれくらいきつい仕事なのか”といった点ではないでしょうか。実際に、働いている方からも訪問看護師の仕事は大変といった声が少なからず見受けられます。
【訪問看護で大変だと感じる点】
・自分の経験と判断で臨機応変に対応しなければならない
・1日で複数宅を訪問するため、体力的な負担が大きい
・オンコールの対応しなければならない
上記にもあるように、基本的に訪問看護師は1人で各家庭を訪問します。
普段は主治医の看護指示書に従って利用者さんのサポートをおこないますが、万が一イレギュラーが発生した場合は自分の判断で対応しなければなりません。また、1日の訪問件数は4~5件程度。1件あたりの訪問時間は約60分前後が多く、移動に関しては車もしくは自転車で移動します。限られた時間の中で業務をおこないますので、効率的な作業ペースとある程度の体力が求められる仕事です。
夜勤のない訪問看護ですが、利用者さんの急変時には夜中であってもオンコールに対応しなければなりません。勤務先によって、オンコール担当の日が決められておりますので転職先を決める際には、担当する頻度、月の対応件数などを確認してみると良いでしょう。
給料について
東京都で勤務する場合、訪問看護師の給料は月収約24万~35万前後(医療ワーカーサイト調べ)と比較的幅広く設定されています。勤務先や経験・求められるスキルによって差が出ているのが要因のひとつです。また、病院勤務の看護師の平均給与が月収約29万前後なので若干少ないように思えますが、土日休みが多く夜勤が無いところを考慮すると適正金額といえるのではないでしょうか。
どんな人が向いている?
訪問看護師に向いている人の特徴は以下のとおりです。
【訪問看護師に向いている人】
・責任感が強く、体力的にも自信がある
・人とコミュニケーションをとるのが好き
・介護予防から高度医療まで幅広い知識を身につけたい
・家庭や子育てとうまく両立を目指したい
利用者さんやご家族の心のケアをおこなううえで、“コミュニケーション能力”は欠かせません。利用者さんやご家族と難なくやり取りをするためには信頼関係を築いていくことが重要です。また、訪問看護は「看護」のみならず必要に応じて「介護」も行わなければならなりません。看護の垣根を越えて幅広い知識を身につけたいという方は訪問看護師の適性があるといえるでしょう。
ほかにも訪問看護施設では、比較的夜勤が無く、土日休みのところが多くあります。結婚や育児で一時休職していた方、家庭と両立させながら看護師の資格を活かしたいという方は、訪問看護の仕事がおすすめです。
新型コロナに対する影響と対策
2020年の1月頃から爆発的なスピードで感染拡大をみせる“新型コロナウイルス”。
医療現場のみならず訪問看護の仕事においても決して油断できないウイルスです。特に高齢者を対象とする施設では、看護師自身が媒介となってしまわないように訪問先での対策がとても重要となってきます。
例)
・身体的距離の確保、マスク着用、手洗いや消毒をする
・定期的に部屋の換気をおこなう
・使用した手袋は表を内側に脱ぎビニール袋に入れる など
連日の報道に加えて、外部の人を自宅に訪問させるといった点から利用者側からの心配や不安の声は少なからずあります。そのためにも、看護師自身の体調をきちんと管理することともに、感染の防護を徹底することが大切です。
看護師以外に必要な資格はあるの?
訪問看護師として働くために、看護師、准看護士の資格を持っていることはもちろんのこと、ほかにも特定看護師やケアマネージャーなどの資格があれば就職の際に有利に進めることができます。
■特定認定看護師
特定認定看護師とは、“特定の看護分野において熟練した技術と知識を持っていることが認められ、水準の高い看護を実践できる資格”のことです。「救急看護」「皮膚・排泄ケア」「集中ケア」「緩和ケア」「在宅ケア」など計21分野をすべて修了し、従来の認定看護師に加えて「特定行為研修」を受けた看護のプロフェッショナルともいえます。
特定認定看護師の資格を取得するためには、5年以上の実務経験が必要となりますが取得することで訪問看護含めて活躍の場は大いに広がることでしょう。
特定認定看護師の資格取得についてはこちら
■ケアマネージャー
ケアマネージャーとは、介護を必要とする人に適した「福祉」「医療」「保健」のサービスを受けるため、その架け橋となる重要な役割を担っております。
おもな仕事内容は、「ケアプラン」の作成です。介護を必要とする方に最適なプランを立て、利用者の健康状態等に応じてサービスの調整や見直しを行います。
特定認定看護師同様に、5年以上の実務経験が必要となりますので注意が必要です。看護分野だけでなく、さらなるスキルアップを目指して挑戦してみてはいかがでしょうか。
ケアマネージャーの資格取得についてはこちら
さいごに
訪問看護のやりがいは、時間に追われながら複数の患者さんを担当する病院に比べて、長期的な時間の中で利用者さんやその家族との信頼関係を築き、相談に乗りながら利用者さんと家族の人生に寄り添う事が出来る仕事です。
家で臥床している利用者さんは自由がなく、孤独感を感じながら日々を過ごしています。
そんな日常のなかで、訪問看護を利用し、看護師さんに会うことで喜びや楽しみを感じることができるのです。よりよい関係を築く事ができると、次第に身体症状にも良い結果が現れることがあります。自分が担当している利用者さんの健康状態が良くなっていくのを、一番近くで感じられるのは訪問看護ならではといえますね。
また医師は同行しないので、利用者さんの状態を直接見て把握しているのは自分のみです。
その分責任やプレッシャーも大きく感じてしまいますが、常に高いモチベーションをキープすることができます。病院勤務に限らず介護の分野においても経験を積みたいと考える看護師さんは、ぜひ検討してみてはいかがでしょうか。
医療ワーカーには訪問看護の求人も多くありますので、訪問看護に興味がある看護師さんは是非、ご相談ください。
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※掲載情報は公開日あるいは更新日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。