新卒看護師の多くは、大学病院などの急性期病院に入職します。
急性期といえば、忙しくハードな職場とよくいわれます。
「忙しすぎる急性期はもういや」
「一人一人の患者さんに寄り添いたい」
「もっと落ち着いた看護を実践したい」
といった声がよく聞かれます。
けれど、辞めても次にどんな職場を選べばいいのかわからない・・・。
そうお悩みの看護師さんに、急性期病院以外の職場について解説したいと思います。
適性が分かる診断チャートもあるので、自分の意外な一面を発見できるかも・・・?
「新人看護師はまず急性期から」急性期3年説って正しい?
「新人看護師はまず急性期で3年は働いた方が良い」という言葉。
看護学校に通っていたころ、看護教諭から一度は耳にした言葉ではないでしょうか。
なぜ新人看護師に急性期医療を勧めるのか、その理由はおもに3つあります。
●急性期の方が多くの技術を身につけられる
●「臨床経験3年」というステータスの高さ
●経験を積むことで、昇給・ボーナスが満額貰える可能性が高い
なにより大きなメリットは、「多くの技術を身につけられる」ということ。急性期は患者さんの入れ替わりが激しく、採血・ルートキープなどの数をこなせるので、それだけ多くの技術を経験できます。看護師にとって“経験”はとても重要なもの。常に人手不足が深刻な医療現場においては、経験豊富な機動力のある看護師が求められます。
そういった意味でも、急性期医療での就職を勧められることは決して間違いではありません。
しかし、患者さんの入れ替わりが激しい現場ということは、それだけ看護師にとってもハードな仕事だということです。具体的にどのような部分が大変なのでしょうか。
急性期に疲れた・・・なぜ急性期はハード?
急性期病棟は「忙しい」イメージがつきもの。入職した方も、その環境はある程度想定されていたと思います。しかし、実際に働いてみると単純に「忙しい」というだけではなく、さまざまな部分に不満を感じてくるようになります。
その理由はおもに4つ、順にどんなものがあるのか見ていきましょう。
急性期の仕事内容が自分に合わない
「想像していた仕事と違った」というのは、どの仕事においても一度は経験することではないでしょうか。
例えば、
●患者さん一人ひとりと関われる時間がない
●急変時など予測不能な事態に対応できない
●やりたい看護と違った など
描いていた理想の看護師像と現実に相違があり、挫折してしまう新人看護師は少なくありません。
急性期の在棟日数は、目安としては発症後14日間以内とされています。病院側としては緊急性の高い患者さんを少しでも多く受け入れて早期治療に繋げることを目標としているため、患者さんは回復したら自宅に戻るか、長期入院が必要であれば転棟・転院となります。そのため、看護師は患者さん一人ひとりと関わる時間が短く、その後の経過はほとんど知ることがありません。その点、人によってはやりがいを感じられないと思う方もいます。
また、急性期病棟は重症または重篤な患者を対象としているため、「朝方の様子はこうだった」「1時間前はこうだった」と的確に状況報告し、素早い判断と迅速な対応が求められます。経験の浅い新人看護師にとって、24時間気の抜けない職場というのは精神的な負担も大きくなってしまいます。
待遇が仕事量と見合っていない
“仕事量と待遇”のバランスはとても重要です。どれだけ大変な現場でも、それに見合った報酬を得ることでモチベーションを維持させることができます。しかし、職場によっては仕事に応じた待遇を受けられない…といった声も少なくありません。
例えば…
●給料が低い、休みが少ないなど、労働条件や給与に不満がある
●ワーク・ライフ・バランスに合わない
●常に忙しいので、家庭との両立が難しい など
厚生労働省の調査によると看護師の平均給与は、年収約333万円。(※1)病院によっては、急性期の仕事量を考慮し平均よりも高めに設定しています。しかし、それも一部の話で「回復期や慢性期と変わらない」といった声があるのも事実。仕事量に見合った待遇を得られないからと辞めていく人も少なくありません。
また、女性が9割を占める看護業界ではワーク・ライフ・バランスがもっとも重要視されます。ワーク・ライフ・バランスとは、仕事と生活の調和を意味する言葉。
「国民一人ひとりがやりがいや充実感を感じながら働き、仕事上の責任を果たすとともに、家庭や地域生活などにおいても、子育て期、中高年期といった人生の各段階に応じて多様な生き方が選択・実現できる社会」と内閣府は定義しています。
結婚や子育て、家庭の時間を大切にしつつ、ライフスタイルに合った働き方を目指したいと急性期から回復期、慢性期に異動する看護師さんもいます。
人間関係がツライ
「失敗するたびに先輩にきつく怒られる…」「仕事ができないと陰口をいわれる」など、職場内での人間関係にストレスを感じる人は多くいます。
もちろん看護師の世界も例外ではありません。
例えば…
●先輩看護師からのイジメやパワハラ
●看護師同士の陰口を聞くのがツライ
●患者さんとその家族への対応が苦手 など
看護師は、人命を預かる仕事ゆえに報告、連絡、相談など高いチームワークが求められる仕事です。 先輩や上司と同じ業務をこなさなければならず、ときには相手の意見に賛同できないこともあるでしょう。人によっては目上の人に意見ができなくてストレスを感じてしまいます。
また、看護師は常に人手不足。ただでさえ忙しいのに、人手不足でさらに激務となってしまう可能性も…過重労働により職場内の雰囲気も険悪になりがちです。
職場内だけでなく、看護師は患者さんやその家族にも配慮しなければなりません。
患者さんと同様に、その家族も急な出来事によって精神的な危機状態に陥っています。とくに状況によっては、家族に意思決定を委ねなければならないときも。不安を少しでも排除して、落ち着いた状況で話ができるように慎重に対応しなければなりません。
精神的ストレスによるメンタルの崩壊
仕事量が多い、給料が低い、人間関係がツライといった理由のほかにも、急性期で働く看護師ならではの悩みがあります。
例えば…
●急変や急死の多さに気持ちの切り替えができない
●「まわりは仕事ができるけど自分はうまくできない…」といった劣等感を感じる
●責任が重く、常に緊迫感のある職場に疲れてしまった など
重症、重篤患者を対象とする急性期病棟では、ほかの病棟に比べて「人の生死」に立ち会う割合は多く、精神的ストレスは大きいです。治療の末に回復していく方もいれば、いくら手を尽くしても救えない命もあります。
いつ患者さんが急変するかもしれない緊迫感のなかで、看護師は迅速に的確な処置を求められます。途切れることなく忙しない日常に、いつしか心もからだも疲弊しまい「辞めてしまおう…」と考える方は少なくありません。
このように仕事量の多さ、人間関係、患者さんの重症度など、人によって理由はそれぞれありますが、急性期のつらさは単に「忙しい」だけではないことがわかりました。
確かに、ほかの病棟に比べたら体力的にも精神的にも根気のいる仕事です。大変な仕事である一方、多くの症例を経験することができ、幅広く知識や技術を身に付けることができるのも事実。急性期で働いた経験は、必ず今後の看護師人生で活かすことができますよ。
「入職してまだ1年にも満たない。けど、もう辞めたい…」と悩んでいる看護師さんは、辞めてしまう前に、まずその理由が何か突き詰めてみましょう。そして、それは誰かに相談して解決できる問題かどうか、ひとりで抱え込まずに相談できる相手を見つけることが大切です。
相談することで、今より状況が改善される場合もありますし、転職(異動)に関してよいアドバイスを聞けるかもしれませんよ。 急性期を辞めたら看護師の将来に響く?
実際に辞めたいとは思っていても、急性期から離れたら看護師としての将来に響くのでは?と不安に思う人もいらっしゃるのではないのでしょうか。
いいえ、そんなことはありません。
急性期以外にも看護師が活躍できる職場はたくさんあります。
例えば、回復期なら患者さんがリハビリによって機能を回復し、元気になって自宅へ帰る姿を見届けることができます。慢性期なら急性期よりも、患者さん一人ひとりと向き合う時間が持てます。
このように、それぞれの職場でしか得られない経験があります。
急性期は看護師の土台を築くのに向いた環境です。
しかし、どんな道に進むのかによって必要とされる知識や技術も異なり、急性期でなければ看護師としての将来が狭まるということではありません。
具体的にどんな選択肢があるのか、次で確認しましょう。
急性期以外でどんな看護師が向いている?適性をチェック!
看護師はさまざまな場所で活躍することができます。
自分がどんな看護師に向いているのかをチェックしてみましょう。
あなたにおすすめの職場は?YES・NO診断チャート
診断結果からわかるおすすめの職場とその理由
介護施設のおすすめ理由
介護施設には特養や老健、有料老人ホームなどさまざまな種類があります。看護師の仕事は入居者の健康管理がメインで、日常生活の介助は介護職の担当です。もちろん介護職のサポートもしますが、病院とくらべると体力的な負担は減ります。施設によって異なりますが、行える医療行為は限定されています(インシュリン注射や痰の吸引など)。業務量は多くないため、ほかの職場より比較的ゆっくりと業務をこなすことができます。入居者はすべて高齢者なので、高齢者とのコミュニケーション能力が必要です。★介護施設の求人を探す回復期リハビリテーション病院のおすすめ理由
回復期リハビリテーション病院は、リハビリによって機能の回復を目指し、患者さんが自宅に戻ることを目的とした病院。担当した患者さんが機能を取り戻し、回復した姿を見届けられることに、やりがいを感じられます。理学療法士や作業療法士、社会福祉士など多職種との連携が多いのも特徴。リハビリが中心となるため医療行為は少なめですが、看護師だけでなくいろんな立場の人と協力して仕事をしたいと考える人におすすめです。★回復期リハビリテーション病院の求人を探す慢性期病院のおすすめ理由
慢性期病院は、病状自体は安定しているものの、継続的な治療が必要な患者さんを受け入れる病院。治療期間は長期に渡ります。回復期リハビリテーション病院の入院日数は数か月~半年程度ですが、慢性期では1年を超えることもあります。慢性期病院も、回復期リハビリテーション病院と同じで医療行為は少なめ。患者さん一人ひとりと、じっくり向き合った看護がしたいと考える人におすすめです。★慢性期病院の求人を探すケアミックス病院のおすすめ理由
ケアミックス病院とは複数の病床機能のある病院のこと。急性期から慢性期まで対応し、患者さんが転院することなく治療や療養に専念できるのが特徴。一次もしくは二次救急指定の病院が多く、三次救急ほど多忙を極めるわけではありません。医療処置も多いため、スキルが落ちる心配も不要。忙しすぎるのは困るけれど、急性期は捨てがたいという看護師さんにおすすめです。ひとつの病院で幅広い経験を積むことができるので、看護師としての強みを増やすことができるのも魅力です。★ケアミックス病院の求人を探す美容クリニックのおすすめ理由
オペ室経験を活かすなら美容クリニックがおすすめ。特に、外科手術に力を入れているクリニックでは採用される確率が高くなり、経験者として優遇されます。美容クリニックは、患者さんの病気やケガの治療ではなく、美しくなりたい・若さを保ちたいと考える人に美容医療を提供します。自由診療のため、診察や施術代は高額になるケースが多いです。リピーターの獲得やコスメの販売などサービス業の要素が強く、病院とはまた違った大変さがあります。しかし、患者さんの生死にかかわる業務ではないこと、日勤のみで高給与が狙えることから、人気のある仕事です。新しい分野に挑戦したい、美容に少しでも興味があるという人は検討してみては。★美容クリニックの求人を探すどんな道があるのかはイメージできたけれど、どれを選択すべきか迷う・・・という方は、看護師専門の転職サイト「看護師ワーカー」のアドバイザーに相談してみませんか?これまでの経験や適性、希望に沿った転職先を紹介してもらうことができます。キャリアアドバイザーに相談してみたい方はこちらまとめ
診断結果は意外なものだったでしょうか?
上記以外にも、企業や保育園など看護師さんが活躍できる場はたくさんあります。
急性期病院だけがすべてではありません。
ただ、年齢を重ねてから急性期病院での看護に挑戦するのは、体力的に厳しくなります。
言い換えると、今だからこそできる仕事ともいえます。
診断結果にかかわらず、今の病院でキャリアを重ねるのもひとつです。
やっぱり辞めて自分の理想の看護を実践するのもまたひとつ。
看護師という仕事は、いくつも選択肢があるということを認識しておいてください。
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