看護師さんは一般的に、女性の中では収入が高い職種と言われていますが、はたして新卒の初任給はどのぐらいなのでしょうか?
看護師になろうと思っている人にとっては、生涯年収も重要ですが、初めてもらうお給料がいくらかというのはとても気になるところです。
この記事では、看護師さんの初任給や、それに関連する税金・社会保険料、各種手当などについてご紹介します。
看護師の平均的な初任給は「約26~27万円」
専門卒と大卒との初任給(給与総額)の差は8,200円ほど
新卒の看護師さんの初任給は、日本看護協会の「2021年病院看護・外来看護実体調査」によると、高卒+3年課程新卒(専門卒)が約25万9,000円、大卒が約26万7,000円という結果でした。専門卒と大卒の間では、初任給に基本給で約6,500円、給与総額で約8,200円の開きがあります。
また、26~27万円の初任給のうち、基本給は約20~21万円で、約5~6万円は手当などの金額であることがわかります。
新卒看護師の初任給(2021年度実績)
| 回答病院数 | 平均基本給与額 | 平均税込給与総額 |
高卒+3年課程新卒 | 2,259 | 203,445円 | 259,233円 |
大卒 | 2,145 | 209,990円 | 267,440円 |
実際に手元にもらえる初任給の手取り額は「約20~23万円」
初任給が26~27万円だということがわかったとして、最も気になるのは「実際に手元にいくらもらえるのか?」ということです。
総支給額が26~27万円あっても、給与所得者はそこからいろいろと差し引かれるため、現実に手元に入る手取り額は20~23万円ほどです。基本的に総支給額の約15~25%は、税金と社会保険料で持っていかれると思っておいた方がいいでしょう。
「想像以上に手取りが少ない」と感じている人もいるかもしれませんが、これは看護師に限らず、企業で働く給与所得者なども同様です。ではいったい、具体的に何が給与から差し引かれているのでしょうか?
支給額から差し引かれるのは「税金」と「社会保険料」
毎月天引きされる税金は「所得税」と「住民税」
毎月のお給料から天引きされるのは、「税金」と「社会保険」です。税金には「所得税」と「住民税」があります。
所得税とは個人の所得に対してかかる税金のことで、住民税は地方自治体から徴収される税金(道府県民税と市町村民税)のことです。
1年目は「住民税」が差し引かれない
ただし、住民税は前年の収入に対して課税されるので、新卒で入職して1年間は給与から差し引かれません。
そのため、2年目になってから「昇給したのに、お給料が逆に減ってしまった!」という人は、住民税が差し引かれるようになったので手取りが減ったのでしょう。
社会保険料には「健康」「厚生」「雇用」「労災」がある
税金の他に、社会保険料も給与から天引きされます。社会保険には、「健康保険」「厚生年金保険」「雇用保険」「労災保険」の4種類があります。
社会保険にはそれ以外に「介護保険」もありますが、介護保険は支払いが40歳からなので、ここでは説明を省きましょう。・健康保険
「健康保険」は、病気やけが、またはそれによる休業、出産や死亡などの事態に備えるための公的な医療保険制度です。
・厚生年金保険
「厚生年金保険」は、老後に公的年金を受け取るためにかける保険です。毎月の給与や賞与に、一定の保険料率をかけて計算されます。
・雇用保険
「雇用保険」は、失業をしたときに給付を受けられる保険です。雇用保険の資金を使って、教育訓練などを受けることもできます。
・労災保険
「労災保険」は、仕事中や通勤途中に起きた出来事でケガや病気・障害・死亡した場合に、給付が受けられる保険です。
健康保険や厚生年金保険の金額の半分は、病院側が負担している
社会保険は給与から天引きされるので、「お金を取られている」というイメージを抱く人もいるかもしれませんが、実は自分が払うべき健康保険や厚生年金保険の金額の半分は、病院側が払ってくれています。
個人で働いている人は、この倍の金額を自分で払わなければならないと思うと、天引きされることにも感謝したくなるかもしれませんね。
支給額にプラスされるのは「資格手当」「通勤手当」など
天引きとは逆に、支給額にプラスされるものもあります。それが「資格手当」や「通勤手当」などの手当です。看護師が受けられる手当は、病院によってさまざまですが、主に次のようなものがあります。
資格手当
看護師が受けられる資格手当には、さまざまな種類があります。認定看護師や専門看護師のように、専門的な資格を取得することで受けられる手当をはじめ、救命救急センターや手術室などのように過酷な現場で働くことで受けられる手当、オンコール勤務のように自宅待機することで受けられる手当などもあります。・認定看護手当
認定看護師の資格を持っていると支給される手当。(月3,000~10,000円程度)
・専門看護手当
専門看護師の資格を持っていると支給される手当。(月3,000~10,000円程度)
・診療看護師手当
診療看護師の資格認定を受けていると支給される手当。診療看護師の認定を受けていても、手当がつかない病院もあります。(月0~60,000円程度)
・危険手当
放射線科や精神科、手術室など、危険を伴う部署に勤める人に支給される手当。
・オンコール勤務手当
自宅待機して緊急の呼び出しに備える「オンコール勤務」をしたときに、支給される手当。(月1,000~4,000円程度)
・手術室勤務手当
手術室勤務のオペナースに支給される手当。(月5,000~30,000円程度)
・助産師手当、分娩介助業務手当
助産師資格のある看護師が、分娩を介助したときに支給される手当。(月2,000~10,000円程度)
通勤手当
「通勤手当」は、その名の通り通勤のために支給される手当です。電車やバスなどの公共交通機関を使う場合に、1ヶ月分の定期代が支払われるのが一般的です。マイカー通勤の場合は、通勤距離に応じた通勤手当が支払われます。
深夜勤務などでタクシーの利用が必要なときは、タクシー券が支給される病院や、領収書を提出する病院もあります。ただし、タクシー代がまったく支給されない病院もあるので、夜勤がある人は事前に確認しておいた方がいいでしょう。
夜勤手当、残業手当、休日・交代勤務手当
看護師さんの手当の中で、最も金額が大きいのが、「夜勤手当」です。日本看護協会の調査によると、看護師の夜勤1回あたりの手当の平均は、以下のようになります。
夜勤1回あたりの手当の平均額
夜勤の種類 | 夜勤手当の金額 |
三交代制(準夜勤) | 4,154円 |
三交代制(深夜勤) | 5,122円 |
二交代制(夜勤) | 11,286円 |
【出典】 日本看護協会二交代制の夜勤手当はかなり高いですが、月内に夜勤に入れる回数は、三交代制よりもだいぶ少なくなります。月あたりの夜勤手当の平均額は、二交代制で平均4万6,000円ほど、三交代制で平均3万5,000円ほどです。夜勤の回数が少なくても、やはり二交代制の方が三交代制よりも、月1万円以上夜勤手当が高いことがわかります。 住宅手当
看護師さんの住宅手当は、一般的に月1~3万円前後支給されます。例えば、月2万7,000円の住宅手当が支給される県立病院もありますし、家賃の半額(上限あり)が支給されるという私立病院もあります。でも、中には住宅手当がまったく出ない病院もあります。
住宅手当がいくら出るかは、賃貸生活をする人にとってはかなり影響が大きいので、入職前にしっかりと確認しておいた方がいいでしょう。
4月のお給料は低い場合もある
お給料の締日によっては、満額支払われないケースもある
もし「4月に受け取ったお給料が思ったより少ない」とがっかりしている人がいたら、お給料の締日を確認してください。初任給が予想以上に少ない場合は、満額もらっていない可能性があります。
例えば病院の給料の締日が20日だった場合、4月1日から入職した看護師さんは、4月1日から20日までのお給料しかもえらえません。
でも次の月には満額もらえるので、「本当のお給料は5月から」と考えて、楽しみに待ちましょう!
入職したてで夜勤をしていない場合は、夜勤手当が付かない
4月のお給料が安い理由は、もうひとつあります。入職したての人は、研修などがあって夜勤に入らないケースもあるので、その場合は夜勤手当の分が追加されません。
これもまた、「夜勤が始まったらグッとお給料が上がる!」と思って、心待ちにしていると良いでしょう。
就業先の規模や地域によっても初任給が違う
就業先の規模が大きいと、初任給も高い
新卒看護師さんの初任給は、勤め先の規模や地域によっても、だいぶ異なります。例えば公的病院や私立学校法人など、規模の大きい病院は、初任給も高い傾向にあります。
日本看護協会の「2021年病院看護。外来看護実態調査」によると、新卒看護師の初任給(高卒+3年課程新卒)の場合、99床以下の病院の平均給与は約25万4,000円ですが、200~299床では約26万円、500床以上になると約26万7,000円となっています。99床以下の病院と500床以上の病院では、初任給に1万3,000円の開きがあります。
初任給の平均額トップは「千葉県」、2位は「東京都」
では、地域によってはどうでしょうか?同調査によると、新卒看護師の初任給のトップは「千葉県」で、約28万7,000円でした。
続いて「東京都」(約28万2,000円)、「愛知県」「静岡県」(約27万5,000円)、「神奈川県」(約27万4,000円)、「埼玉県」(約27万3,000円)と続き、初任給が高い県は都市部に多い傾向にあります。
逆に初任給が最も低いのは「宮崎県」で、約22万4,000円でした。続いて「鹿児島県」(約23万4,000円)、「長崎県」(約23万6,000円)と、地方に多くなっています。
初任給が最も高い千葉県と、最も低い宮崎県では、初任給に実に6万3,000円もの開きがあります。
初任給が安くてもがっかりしないで!お給料は少しずつ上がっていきます
新卒の看護師さんの中には、「看護師はお給料がいいと思っていたのに、初任給をもらったら意外と大したことない」と、落ち込んでしなった人もいるかもしれません。
でも、がっかりしないでください。看護師さんのお給料が上がるのは、まだまだこれからです!
看護師としてキャリアを積んでいくと、10年後のお給料は約5~6万円アップ!年収がピークになる55~59歳には、月平均約38万円のお給料になります。看護師長や看護部長などの役職に就けば、さらに高収入も見込めるでしょう。
年齢を重ねると給与が下がる職種も多い中、看護師さんは年齢を重ねるごとに着実に昇給できる職種なので、焦らずに一歩ずつ進むことをお勧めします。
まとめ
看護大学や看護学校を卒業し、初めてもらうお給料というのは、新卒の看護師さんにとって最大の楽しみですね。
でも、給与の締日の関係や、夜勤手当がないなどの理由で、最初に受け取るお給料というのは意外と少ないものです。
そのため、過度に期待し過ぎず、働いてお金をもらえたことに感謝しつつ、着々とお給料をアップさせていきましょう!