みなさんは看護師の離職率に対してどのようなイメージを持っていますか?
人の命を預かる医療現場は責任も大きく、離職率が高いというイメージを持っている方もいると思います。
今回は看護師の離職率の実態を徹底解説します。
病院の種類や地域ごとの離職率、さらに看護師の離職率が高い理由を調査しました。
また、看護師の再就職に関する情報もまとめました。
現在の職場に不満を抱えている方や、離職し再就職を考えている方はぜひ参考にしてくださいね。
看護師の離職率とは
まずは看護師の離職率を見ていきましょう。
2022年の離職率や離職率の推移などをまとめました。
【2022最新】看護師の離職率
公益社団法人日本看護協会の2022年4月1日の報告では、2021年に調査した看護師の離職率は10.6%でした。
これは正規雇用看護職員の調査結果です。
2020年の調査では11.5%であり、やや減少したことが分かります。
看護師の離職率の推移
看護師の離職率の推移を紹介します。
先程紹介したとおり、正規雇用看護職員の離職率は
・2021年の調査では10.6%
・2020年の調査では11.5%
です。
それ以前は
・2019年の調査では10.7%
・2018年の調査では10.9%
・2015年の調査では10.8%
・2012年の調査では10.9%
・2009年の調査では11.9%
・2006年の調査では12.3%
です。
このことから、看護師全体の離職率は横ばいであることが分かります。
一方、既卒看護師の離職率はやや減少傾向にあります。
新人看護師の離職率
新卒看護師の離職率は
・2019年の調査では7.8%
・2020年の調査では8.6%
・2021年の調査では8.2%
と減少と増加を繰り返している状況です。
病院の種類・地域ごとの看護師の離職率
続いては病院の種類、地域ごとの離職率を紹介します。
病院の種類ごとの看護師の離職率
公益社団法人日本看護協会は病床数別、設置主体別の離職率を調査しています。
2021年調査の病床数別正規看護職員の離職率は
・99床以下では11.7%
・100から199床では11.7%
・200から299床では11.4%
・300から399床では10.7%
・400から499床では10.0%
・500床以上では9.8%
です。
病床数が多いほうが離職率が低いことが分かります。
つまり、小規模な病院ほど離職率が高いという結果になりました。
また、設置主体別の正規看護職員の離職率は
・国立では9.6%
・公立では7.5%
・日本赤十字社では9.6%
・済生会では10.8%
・厚生連では9.3%
・その他公的医療機関では13.0%
・社保関係団体では10.0%
・公益社団・財団法人では12.0%
・私立学校法人では12.1%
・医療法人では13.6%
・社会福祉法人では12.0%
・医療生協では10.4%
・会社では8.3%
・その他の法人では11.1%
・個人では11.5%
という結果に。
国立や公立といった規模の大きな病院では離職率が一桁台ですが、個人病院では二桁とやや離職率が高いことが分かります。
地域ごとの看護師の離職率
続いては都道府県別の看護師の離職率を紹介します。2021年に調査した正規雇用看護職者の調査結果です。・北海道では10.5%・青森県では6.9%・岩手県では6.1%・宮城県では8.6%・秋田県では7.4%・山形県では6.1%・福島県では7.3%・茨城県では10.7%・栃木県では10.1%・群馬県では8.3%・埼玉県では13.0%・千葉県では11.9%・東京都では13.4%・神奈川県では14.0%・新潟県では8.0%・富山県では8.6%・石川県では10.8%・福井県では7.3%・山梨県では8.7%・長野県では8.2%・岐阜県では10.8%・静岡県では8.5%・愛知県では12.2%・三重県では9.8%・滋賀県では10.2%・京都府では11.7%・大阪府では12.3%・兵庫県では11.7%・奈良県では10.8%・和歌山県では9.7%・鳥取県では7.4%・島根県では6.5%・岡山県では10.2%・広島県では8.3%・山口県では9.6%・徳島県では7.1%・香川県では8.5%・愛媛県では8.8%・高知県では7.8%・福岡県では10.2%・佐賀県では7.2%・長崎県では8.3%・熊本県で9.2%・大分県では9.3%・宮崎県では8.1%・鹿児島県では9.4%・沖縄県では10.9%関東地方はやや離職率が高い傾向にあります。一方、宮城県や秋田県、福島県、福井県、静岡県などでは離職率は一桁台であり、地方の離職率はやや低めの結果となっています。(引用:公益社団法人日本看護協会 調査結果) 看護師以外の職種の離職率との比較
看護師は離職率が高いイメージがありますが、実際はどうなのでしょうか。看護師以外の職種と比較してみましょう。厚生労働省が調査した、令和3年上半期のさまざまな職種の離職率を紹介します。・建設業では5.0%・製造業では5.1%・情報通信業では5.0%・金融業・保険業では4.3%・宿泊業・飲食サービス業では15.6%・教育・学習支援業では12.4%・複合サービス業では9.7%また医療・福祉は8.6%でした。これらの結果から看護師は特筆して離職率が高いわけではないことが分かります。コロナウイルスの流行も影響していると考えられますが、宿泊業や飲食サービス業の離職率のほうが高い結果になりました。(引用:厚生労働省 令和3年上半期雇用動向調査の概況) 看護師の離職率が高い理由とは
では看護師の離職率が二桁台である理由には、どのようなものがあるのでしょうか?
看護師が離職を選択する理由をいくつか紹介します。
出産や育児との両立が難しい
厚生労働省の看護職員を対象とした調査によると、第一子の妊娠、出産、育児の際に受けたかったが受けられなかった支援・制度では、時間外労働の免除が最も多い結果になりました。
また、この他にも夜勤の免除又は夜勤回数の軽減、短時間勤務などが挙げられました。
出産や育児と両立するには十分な時間が必要です。
病院勤務ではこれらの時間を確保できない実態が、離職に繋がっているのかもしれません。
人間関係で悩みがある
厚生労働省の看護職員を退職した経験のある方への調査で、人間関係を退職理由と回答した方は12.8%でした。
看護師は各々のスキルが求められ、さらにチームワークも重要な職種です。
さまざまな年代の方々が働いている職場であるため、関係性を築くのが難しいという特徴があります。
こういった現状の中で、人間関係の悩みを原因に離職を選択する方も多いようです。
体力面で負担が大きい
同調査で、夜勤の負担が大きいためと回答した方は9.7%でした。
また、超過勤務の多さを退職理由に挙げた方は10.5%でした。
夜間の勤務は体力的にも負担が大きく、年齢を重ねるごとに困難さを感じる方も多いようです。
また、病院によっては緊急時の対応などで予定外の勤務が多いという現状もあります。
本人や家族の健康問題
同調査で、本人の健康問題が退職理由であると回答した方は8.6%、家族の健康問題・介護のためと回答した方は6.9%でした。
看護職は体力を使う仕事であるため、体調面で不安がある方は継続して働くことが難しいようです。
待遇に不満がある
同調査で、給与に不満があることが退職理由だと回答した方は8.0%でした。
実際の勤務内容と給与が不釣り合いだと感じ、退職を選択する方も多いようです。
スキルアップやキャリアアップを目指したい
同調査で、キャリアアップの機会がないことを退職理由だと回答した方は4.4%でした。また、教育体制が充実していないからと回答した方は3.7%でした。昇進を望んでいる方にとって、キャリアアップの制度が整っていない職場は働きづらい職場であると言えるでしょう。(引用:厚生労働省 看護職員就業状況実態調査結果) 看護師の離職率が高い病院の特徴
では、看護師の離職率が高い病院にはどのような特徴があるのでしょうか。
序盤の看護師の離職率でも触れましたが、病床数の少ない小規模な病院では離職率が高い傾向にあります。
規模の小さな病院は教育制度や福利厚生を整えることが難しい傾向にあり、制度の不十分さが離職に繋がっていると考えられるでしょう。
また、都心部にある病院も比較的離職率が高いことが調査結果から分かります。
再就職におすすめの病院の特徴
再就職に向いている病院にはどのような特徴があるのでしょうか?
再就職するのにおすすめな病院の特徴を見ていきましょう。
厚生労働省の調査「看護職員として退職経験のある者の状況」の再就職先を選んだ理由を元に紹介します。
育児支援が充実している
看護職者として再就職を希望する人が必要だと考える支援に関する調査では、院内・院外保育と回答した方が20.9%でした。学童保育と回答した方は11.8%。また、ベビーシッター・保育ママと回答した方は2.1%でした。
育児支援に関する制度を必要だと考える方がとても多いことが分かります。
育児支援に関する制度が整っている病院は、貴重な再就職先だと言えるでしょう。
福利厚生が充実している
福利厚生が充実している病院は再就職におすすめだと言えるでしょう。
住宅手当や通勤手当などの法定外の福利厚生がある病院にはぜひ再就職したいですね。
通勤が便利な病院
厚生労働省の看護職者に対する調査の結果を見てみましょう。
再就職した方が、再就職先を選んだ理由では通勤が便利だからという理由が56.5%を占めています。
半数以上の方が通勤が便利な職場を再就職先として選択しています。
通勤のストレスが少ない病院は、働きやすい職場であると言えるでしょう。
勤務体制が整っている病院
同調査では、再就職先を選んだ理由は勤務時間が希望にあっているからと回答した方は51.0%でした。
こちらも半数以上が、希望の勤務体制であったことを再就職の決め手であると回答しています。
ワークライフバランスを整えるためにも、勤務体制が整っている病院を再就職先に選ぶのがおすすめです。
人間関係が良い病院
同調査で、再就職先を選んだ理由は人間関係が良いからだと回答した方は11.2%でした。
人間関係は働く環境においてとても重要な要素です。
個々のスキルが重要視される医療現場で、円滑な人間関係を構築できている職場にはぜひ再就職したいですね。
キャリアアップのための制度が整っている
同調査で、再就職先を選んだ理由としてキャリアアップの機会があるからと回答した方は、4.6%でした。また、教育体制が充実しているからと回答した方は3.5%。看護師としてのスキルを高め、昇進の機会を得られる職場は再就職に向いていると言えるでしょう。(引用:厚生労働省 看護職員就業状況実態調査結果) 病院以外の再就職先とは
看護師が再就職するのは、必ずしも病院でなければいけないわけではありません。
看護師資格を活用できる病院以外の就職先には、以下のようなものがあります。
・一般企業
・保育園、幼稚園
・訪問看護
・医療機器メーカー
・治験現場
・介護施設
・献血ルーム
など。
病院以外の場所を再就職先として選ぶのも良いでしょう。
ただし、一般的な病院ほどの求人数はありませんので、狭き門であると言えます。
まとめ
今回は看護師の離職率についてまとめました。
看護師の離職率は、ここ数年で大きな変動はなく横ばい状態です。
また、世間では看護師の離職率は高いイメージがありますが、実際は特筆して高いということはなく、概ね10%前後であることが分かります。
看護師を離職する理由は人によってさまざまです。
福利厚生やキャリアップに対する不満を抱え、退職を選ぶ方もいます。
再就職先には育児支援が整った病院や、勤務体制が整っている病院が人気のようです。
再就職を目指す方は自分にあった就職先を選択し、より良い環境で勤務しましょう。