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診療看護師とは? 仕事内容や年収、資格取得のメリットを解説

一本指を示す看護師さん

更新日:2023.03.16

公開日:2023.03.16

「診療看護師」という資格を、ご存知でしょうか?日本ではまだ明確に制度化されていないため、診療看護師という名称は知っていても、制度の詳細までは理解していないという方も多いかもしれません。
チーム医療や地域包括ケアの重要性が叫ばれる中で、診療看護師の存在は、いま注目を集めています。看護師の新しい働き方という意味でも、またキャリアアップのひとつの選択肢としても、診療看護師は覚えておきたい資格のひとつです。
そこで診療看護師に興味がある方のために、診療看護師の仕事内容や資格の取得方法、年収、資格取得のメリットなどについて、詳しくご紹介しましょう。

診療看護師とは?

診療看護師はナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner/NP)と呼ばれ、医師や他職種と連携・協働し、一定の制限の範囲内で医師サイドに立った診療が行える看護師のことを指します。
一般の看護師は、診断をした患者さんの病状が変化した場合に、すべて医師の指示に従わなければなりません。それに対して診療看護師は、患者さんの症状や病態から異常がないかどうかを推察して、医師の指示のもとで治療的な介入を含めた対応ができます。
そのため、医師が不在や多忙など、さまざまな事情で患者さんへの対応が難しくなったときでも、診療看護師が医師に代わってタイムリーに病状を捉え、安全な医療を提供することができるのです。
アメリカなどではすでに多くの医療現場で診療看護師が働いており、日本でもまだ制度を整える段階にはあるものの、全国各地で診療看護師が活躍しています。

診療看護師の仕事内容

患者さんと話す看護師さん

診療看護師の仕事内容は、職場によっても異なりますが、通常の看護業務以外に次のような仕事を行っています。

問診や初期診療・検査結果の評価などの「相対的医行為」

医行為には医師が行わなければならない「絶対的医行為」と、医師の指示・監督のもとに看護師が行える「相対的医行為」があります。
診療看護師は大学院で医学の知識や初期診療の実践を学んでいるので、問診や初期診療、検査結果の評価といった相対的医行為に、積極的に携わることができます。
医師の仕事を診療看護師が肩代わりできることによって、医師が多忙なときでもスムーズに診察・治療を進めることができ、医師の過重労働の改善にもつながります。

医師の手順書に従った「特定行為」

診療看護師は、厚生労働省が定めた「特定行為区分」に該当する医行為を、医師に代わって実施することが認められています。
たとえば「経口用気管チューブの位置の調整」や「心嚢ドレーンの抜去」「胃ろうカテーテルの交換」といった専門的な技術と知識を要する特定行為を、医師の手順書に従い、指示を待たずに行うことができます。

※参考:厚生労働省「特定行為区分とは」
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/0000077098.html 

医師と看護師の間に立って仕事を円滑に進める役割

診療看護師は医師からも看護師からも信頼される存在として、両者から相談を受ける立場にあります。そのため、医師と看護師の間に立って連携をとり、仕事が円滑に進むようサポートする役割があります。
たとえば医師が急な用事で不在になった場合でも、診療看護師が医師の判断に従ってスピーディに対応することで、滞りなく業務を進めることができます。

クリニカルパスなどの各種プランの作成

診療看護師は医師に相談しながら、患者さんの治療に関係するクリニカルパスやリハビリプランなどの各種プランを作成します。

看護に携わる職員の教育

診療看護師は看護の知識と経験があり、医学も学んでいるので、看護に携わる職員の教育を任せるには適任といえます。

診療看護師の役割

診療看護師の役割は、医師や薬剤師などの他職種と連携を図りながら、患者さんの診察や治療をより効果的・効率的かつタイムリーに行うことで、患者さんの疾病の重症化を防止しQOLの向上を図ることにあります。

診療看護師になるには?

ガッツポーズの看護師さん

診療看護師の大学院に進む

診療看護師になるには、5年以上の看護師経験を積んだ後、指定された大学院で医学を学びます。
いったん休職して大学院に通う人もいますが、働きながら週に3日程度大学院に通う人も少なくありません。たとえば週に3日看護師として現場で働き、週に3日大学院に通って、あとの1日は自宅で勉強するといった形です。
診療看護師の資格が取得できる大学院に2年間通学したら、卒業と同時に日本NP大学院協会のNP認定試験を受験して、合格すれば診療看護師の資格が取得できます。

2022年7月23日時点で、日本NP教育大学院協議会の会員となっているのは、次の13校です。

北海道医療大学大学院
国立大学法人 秋田大学
東北文化学園大学大学院
国立大学法人 山形大学大学院
東京医療保健大学大学院
国際医療福祉大学大学院
佐久大学大学院
藤田医科大学大学院
愛知医科大学大学院
公立大学法人 島根県立大学大学院
公立大学法人 大分県立看護科学大学大学院
国立大学法人 富山大学大学院
森ノ宮医療大学大学院

診療看護師の大学院で学ぶこと

診療看護師に必要とされるのは、①包括的健康アセスメント能力、②医療処置・管理の実践能力。③熟練した看護実践能力、④看護マネジメント能力、⑤チームワーク・ 協働能力、⑥医療保健福祉制度の活用・開発能力、⑦倫理的意思決定能力の7つの能力です。

これらを習得するために、診療看護師の大学院では「クリニカルアセスメント」「臨床薬理学」「病態機能学」「クリニカルマネジメント」「医療安全」「医療倫理」などの科目を学びます。
たとえば愛知医科大学の臨床実践看護学領域<診療看護師【NP】コース>では、日本NP教育大学院協議会の基準を満たすクリティカルケアとプライマリケア(成人・老年)を学び、厚生労働省認可の看護師特定行為研修を受け、臨床実践看護学に関する研究や課題研究論文の作成も行います。

診療看護師の大学院の学費

診療看護師の大学院の学費は、2年間の学費と入学金・実習費をすべて含めて、150万円~200万円が目安となります。大学院によっては150万円以下のところもありますし、200万円以上のところもあります。
一般的な奨学金はすべての大学院にあり、それ以外に独自の奨学金を設けていたり、県内者優遇制度、卒業者優遇制度を利用できるケースもあります。職業訓練給付金の対象となっている大学院もあるので、それらをよく調べて活用することをおすすめします。

診療看護師の大学院の受験資格・難易度・倍率

診療看護師の大学院を受験するには、5年以上の看護師経験が必要です。大卒者だけでなく、専門学校を卒業した人でも大学院に進学できますが、相応の実績が求められるので、直接問い合わせるかオープンキャンパスなどで質問してもいいでしょう。
受験の難易度や倍率については、大学院によって違います。志望者が募集人員を上回っていれば倍率も高くなりますし、下回っているような場合はスムーズに入学できるケースもあります。地域枠かそうでないかによっても、難易度は変わってきます。
たとえば愛知医科大学の場合、2022年度の高度実践看護師(診療看護師【NP】)コースの志願者は16名で、合格者は2名という超難関でした。しかし同コースの地域枠では、5名の志願者に対して合格者は4名と、80%の人が合格しています。

診療看護師になるメリット

診療看護師になると、自分がチーム医療の中心的な存在として活躍していることを実感できます。10年後、20年後のキャリアパスを意識して働けるようになり、将来的に看護師長・看護部長などへの昇格もしやすくなるでしょう。
医師が多忙や不在でも診療機能を維持させることができるので、患者さんに対しても真摯に向き合うことができ、看護師としてのプライドと喜びをもって働くことができます。

診療看護師の給与

診療看護師の給与は、病院によっても違いますが、一般の看護師の給与よりも全体的に高い傾向にあります。
基本給が高くなるというよりは、診療看護師の資格を取ることによって、資格手当が付くケースが多く、たとえば国立病院機構の診療看護師手当は約6万円です。

診療看護師と特定看護師の違い

診療看護師とよく似た仕事をする看護師に、特定看護師がいます。特定看護師も、診療看護師と同じように特定行為に分類される医行為を行うことができるのですが、診療看護師と特定看護師はどこが違うのでしょうか?
特定看護師とは、特定行為研修を修了した看護師のことです。研修を受けていれば、特に大学院を卒業する必要はありません。
それに対して診療看護師は、ナース・プラクティショナー(Nurse Practitioner/NP)という名称の資格であり、5年間の看護師実務経験の後、大学院のNP養成課程を修了する必要があります。特定行為研修も、養成課程のカリキュラムの中に組み込まれています。

まとめ

会議をする医師たち

診療看護師は、大学院で医学の知識や初期診療の実践を学んでいるので、医師に代わって一定の医行為を行うことができます。そのため、診療看護師は今さまざまな医療施設から求められています。
看護師のキャリアパスという観点からも、後輩を指導していく上でも、診療看護師の資格を取得しておくことは大いに役立つでしょう。
もちろん、働きながら大学院に通うというのは、けっして簡単なことではありません。しかし、週3日病院で働いて週3日大学に通うなど、働きながら無理なく学ぶ方法もあります。看護師として働いている人は、将来的に診療看護師の資格を目指すことも、視野に入れてみてはいかがでしょうか。

※掲載情報は公開日あるいは更新日時点のものです。制度・法の改定や改正などにより最新のものでない可能性があります。