「新人のうちは大学病院など規模の大きい病院で経験を積んだ方が良いよ」
看護学生時代、色んな方から耳が痛くなるほど言われたこの言葉。
でも実際、どうなのでしょうか。
もちろん大規模な病院でしか得られない経験もあると思いますが、小さい病院にも良さはあるはず。
そこで、小さい病院に就職するメリット、デメリットを大規模病院と比較しながら見ていきたいと思います。
小さい病院とは?定義と特徴
そもそも「小さい病院」の定義とは?
「小さい病院(小規模病院)」には、明確な定義はありません。ではどんな病院を「小さい病院」というのか。厚生労働省による病院調査の概要を基にすると以下になります。小病院 (特定機能病院、「療養病床のみの病院」を除いた一般病院で、病床数が20床~99床の病院)
(引用:厚生労働省|人口動態・保健統計課保健統計室 医事統計係 調査の概要)
厚生労働省では20〜99床の病院を「小病院」としているようです。ちなみに19床以下の医療施設は一般診療所(クリニック)となり、大きい病院(大規模病院)は病床数500床以上の病院の事を指します。「小さい病院」 いわゆる20〜99床の小規模病院はどんな特徴があるのでしょうか。大規模病院と比較しながら見ていきたいと思います。 小さい病院の特徴
一人の患者を外来・入院〜退院まで継続して診ることができる
小さな病院の場合、外来でいつも来ている方が入院というケースも少なくありません。入院から退院はもちろん退院後のアフターケアにいたるまで、顔なじみの患者さんの生活を取り巻く一員として看護に寄り添うことができます。
看護師は一人何役もこなす
規模の大きい病院では一人一人の役割分担が決められていますが、規模の小さい病院では役割は決められておらず、検温や誘導、診察介助、採血など看護師一人に与えられる仕事の幅は広くなります。
また小規模病院は、複数の異なる病床を持つケアミックス型の病院も多く、急性期〜慢性期まで幅広い症状の患者のケアに携わります。
在院日数は長いか短いかの両極端
小規模病院でも病床数が50を超えるか超えないかで在院日数が異なってきます。
50〜99床の病院は内科を標榜する割合が高く慢性期の患者が多いため、平均在院日数は20日以上と長めです。20〜49床の病院では、単科の専門病院が多く慢性期の入院患者は少なめ、平均在院日数は15日台と短めとなっています。
(※参考:日医総研ワーキングペーパー|病床規模別にみた病院の現状)
規模に対して多くの看護師が勤務している
日本看護協会の調査によると、病院の規模が小さいほど100床あたりの職員数が多い傾向にあり、特に20〜29床の病院は大規模病院以上に手厚い看護体制であるという結果に。
実際の現場ではどんな状況かというと、小規模病院で働く看護師のうち「人員不足」と感じている方は全体の68.6%で、「丁度良い」と感じている方は24.6%ほど。中規模病院や大規模病院で働く看護師はというと、「人員不足」と感じている方が75〜80%で「丁度良い」と感じている人は15%前後なので、小さい病院の方が人員に関する満足度は高いようです。
(出典:日本看護協会|「2016 年 病院看護実態調査」 結果速報)
准看護師の割合が高い
500床以上の大規模病院では看護職員全体のうち准看護師が占める割合は10%未満ですが、小規模病院では約30%と比率は高め。准看護師を積極的に採用している病院も多いので、准看護師が転職しやすい職場といえます。
二交代がほとんど
大規規模病院では三交代制の割合が高いのに対し、小規模病院は二交代制の病院が多く、特に精神病床や療養病床など急変が少ない病棟ではほとんど二交代制です。
小さい病院で働くメリットとは?
●幅広い患者層、多岐にわたる業務に携われる
大学病院は医師の教育機関という側面もあるため、採血や点滴などは研修医が行う病院も多く看護師が採血やルート確保の業務に携わる機会は少なめです。一方、小規模病院の場合は看護師の人数が限られているので採血、血圧測定、バルーン交換なども看護師が行います。
また、小規模病院の場合、診療科ごとの垣根が低いので困った時はすぐに相談できるメリットもあります。内科、整形外科、眼科など様々な診療科目を横断し、子供から高齢者まで幅広い患者と触れ合うことで、様々な知識やスキルを培うことができます。
●プライベートを優先しやすい雰囲気
小さい病院で働く看護師さんの多くは 「プライベートも大切にしたい」 という方ばかり。
二次救急に指定されている病院がほとんどですが、重症患者の急患は三次救急に指定されている大規模病院に搬送されるケースも多いため、急変の頻度は少なく残業も多くありません。
小規模病院の場合、働きやすさを重視する傾向にありますので、勉強会は勤務時間内に実施するところも多く、帰宅後趣味の時間を楽しんだり、育児と両立するママ看護師もいます。
●地域住民の生活に寄り添う看護が実践できる
小規模病院では患者との距離が近いため、生活や家族のことが見えやすいというメリットがあります。退院後だけでなく、健康増進や疾病予防の観点からもきめ細やかな看護を実践できます。
小さい病院のデメリット
●スキルを高めるには限界がある
珍しい症例や最新医療を学ぶ機会は大規模病院に比べ圧倒的に少なく、診療科目にも限りがあります。あらゆる診療科目を網羅している大規模病院であれば異動願いを出せますが、小さな病院は転職しないといけないケースも出てきます。
●人間関係が狭く濃い
「全員の顔と名前が一致する」
これは小規模病院のメリットでもありますが、反面デメリットでもあります。
人間関係が狭く深く、また病院規模も身を隠せるほど広くはないので、人間関係に亀裂が入るととても気まずい雰囲気になってしまい、最悪の場合どちらかが退職に追い込まれることも。
複雑な人間関係に巻き込まれることもありますので、注意が必要です。
小さい病院と大きい病院の違い
大規模病院と小規模病院の違いをメリット・デメリットと絡めて分かりやすく表にしてみました。
いかがでしょうか。大学病院など規模の大きい病院では、その大きさゆえスムーズに動けない一面があります。小さな病院では、病棟や他職種との垣根は低く連携もスムーズなものの、そもそも他職種のスタッフがおらず自分でなんでもしなければいけないというケースもでてきます。
小さい病院のココが疑問!
Q:看護技術は学べるの?
大規模病院と比べ、最新の医療に触れる機会はほとんどありません。
しかし、小さな病院は大規模病院と比べ医師が少ないので、看護師には高いフィジカルアセスメント力が求められます。
フィジカルアセスメントのスキルに関する教育を積極的に実施する小規模病院も多くあります。
小規模病院では、日頃から患者の病態を総合的に把握して危機的状況を回避したり迅速に対応することで的確な臨床実践の経験を積むことができます。
Q:教育体制は整ってる?
院内教育・院外教育ともに計画的に実施している病院は57.3%で、院内教育を実施している病院は87.7%。
99床以下の小さな病院でもきちんと教育体制を整えている病院がほとんどです。
(出典:公益社団法人 日本看護協会|「中小規模病院の看護の質の向上に係る研修等に関する調査」 報告書 )
Q:大きい病院よりも小さい病院の方が給与は低い?
やはり規模の大きい病院の方が給与は高め。
新卒時代は小さい病院も大きい病院も給与に大差はありませんが、勤続年数を重ねるうちに差が開いていきます。
<小規模病院の平均給与額(基本給)>
高卒+3年課程卒の新卒看護師 195,500円
大卒の新卒看護師 202,000円
勤続10年の看護師 233,000円
<大規模病院の平均給与額(基本給)>
高卒+3年課程卒の新卒看護師 205,300円
大卒の新卒看護師 212,950円
勤続10年の看護師 266,700円2017年
(出典:日本看護協|看護職の給与データ(2017年版))
まとめ
小規模病院の特徴やメリット・デメリットを大規模病院と比較しながらご紹介しましたが、いかがでしたでしょうか。
同じ看護師でも組織の規模が違うと働き方はガラッと変わってきます。
小さい病院には小ささゆえのデメリットもありますが、大規模病院では得られない経験を積むことができます。
「新卒看護師は大規模病院で経験を積むべき」と言われ続けてきた看護師業界。
ですが、自分なりの考えや明確な目的を持ち、新卒で地域密着の小さな病院に入職する看護師もいます。
今後どんな看護をしていきたいのか、どんな人生を歩んでいきたいのか、ぜひじっくり考えてみてくださいね。
「一人ではなかなか方向性を決めきれない」
そんな方は転職支援のプロ、看護師ワーカーにご相談ください。
これまでの支援実績を基に、あなたに最適な道を一緒に考え、見つけていきます。