保健所や保健センター、企業の医務室などで働く保健師という職業があります。
どうしたら保健師になれるのか、どんな仕事をするのか、皆さんご存知でしょうか?
本コラムでは、保健師という仕事に興味を持ちはじめた方に向けて、保健師の仕事内容や保健師になるための手順をご紹介します。
仕事の探し方、気になる給料についても解説しています。
ぜひ参考にしてください。
保健師とは?
保健師の主な仕事は、人々の心身の健康サポートです。
老若男女を問わず、さまざまな人の健康を守ることが保健師の役割となります。
具体的には、地域や企業における健康診断の実施、個別での健康相談や保健指導。
さらにはメンタルヘルス対策や感染症対策など業務内容は多岐に渡ります。
一般的に保健所などの行政機関で働くイメージが強い保健師ですが、行政機関だけでなく企業や病院、学校といった施設でも働くことが可能です。
保健師が活躍できる職場については、後ほど詳しくご説明していきます。
「保健師は将来性がある」といわれる理由
保健師の資格は年々取得者が増加しています。人気の理由は、正規雇用の求人が多いことや、安定して働けることなどがあげられます。保健師の約70%は行政保健師、いわゆる公務員といて勤務
しています。正規雇用率も高いことから非常に安定した職業といえるでしょう。「夜勤なし」「土日休み」などワークライフバランスもとりやすいのがメリットです。では、将来性についてはどうでしょうか。結論からいうと保健師は今後も需要が高まり、将来性がある仕事
といえます。その理由はいくつかあるのですが、最も大きな要因としては高齢化です。今後も加速する高齢化社会に伴い、介護領域での仕事が増えていくと予測されます。保健所、保健センターだけでなく、病院や施設で働く保健師が増えていくのではないでしょうか。 保健師になるには?必要な資格について
保健師になるには国家資格である保健師免許が必要です。そして保健師免許を取得するためには、看護師資格の取得が必須です。先に大学や専門学校で看護師資格を取得しなければなりません。まずは看護師免許を取得、次に保健師免許の取得の流れ
となります。資格取得のルートはいくつかありますので、順番にご紹介していきます。 ①看護師免許から取得する場合
まだ看護師資格を持っていない場合は、まず看護師免許の取得を目指しましょう。看護師免許を取得するには、看護学科がある大学や専門学校で授業を履修し、国家試験に合格しなければいけません。■4年制の大学、専門学校■3年制の短期大学■3年制の専門学校看護師養成校には4年制の大学や専門学校、3年制の短期大学、3年制の専門学校があります。それぞれに特徴や費用などがことなりますので、ご自身にあった学校を選んでください。看護師免許を取得できたら、保健師養成校に通うか保健師コースがある大学への編入が必要になります。保健師養成課程がある4年制大学や専門学校で学んだ場合は、看護師国家試験合格後に保健師養成校へ通うことなく、そのまま保健師国家試験へと進めます。
(※看護師国家試験に合格していることが必須条件です。)ちなみに上記の図では割愛していますが、「5年一貫性の看護師高等学校」や「准看護師からの看護師養成校」に通う方法でも看護師免許を取得できます。その場合も看護師免許を取得後、保健師養成校に通い保健師免許を取得しなければなりません。 ②保健師免許のみ取得する場合
すでに看護師として勤務されている方や、看護師免許を持っていて保健師免許のみ取得したいという方は、ここからのスタートになります。
指定されている保健師養成校にて1年以上履修したのち、保健師国家試験を受験し合格することで保健師免許取得となります。
1年制の保健師養成校には夜間制の学校もあり、ハードではありますが働きながら取得することも可能です。
学費は学校によって異なります。奨学金制度も利用できますので事前によくお調べください。
保健師の仕事内容と活躍する職場
多くの保健師が保健所や保健センターなどの行政機関に勤務していますが、保健師が働ける場所は行政機関だけではありません。
ここからは、保健師が活躍する職場と具体的な仕事内容とについて紹介していきます。
市町村の保健センター
保健センター勤務の保健師は行政保健師と呼ばれる地方公務員です。
保健師全体の約半数が保健センターに勤務しています。
保健センターでの保健師の主な業務は保健指導です。
健康診断や自宅介護の方の家庭訪問に加えて、他部署との連携・調整や事務的な仕事をすることも。
保健所よりも地域密着型の事業として、赤ちゃんからお年寄りまで地域住民の健康促進、病気予防に努めます。
保健所
都道府県や中核都市に設置されている保健所。
保健所で働く保健師も行政保健師(公務員)になります。
保健センターと同様の仕事もありますが、公衆衛生に関する専門的な業務が多いのが特徴です。
例えば難病や精神障害者への相談支援、地域のケアシステムの構築、都道府県の自治体に助言を行うなど政策に携わることもあります。
医師や薬剤師など保健所に配置される各分野のスペシャリストと連携しながら、非常に広範囲の業務を担当します。
病院・診療所
病院・クリニックで働く保健師を病院保健師といいます。
主に患者の健康指導、退院後の保健指導などを行います。
診療科目によって業務内容は変わってくるでしょう。
さらに病院保健師は看護師業務と兼務することも可能です。(勤務先による。)
昨今では感染症対策や院内感染対策なども病院保健師の重要な業務となっています。
地域包括支援センター
地域包括支援センターはその地域に住む高齢者やご家族のための相談窓口。
高齢者の医療・介護・生活に関することを地域全体で包括的にサポートするための施設です。
具体的には
・高齢者の体調管理や介護予防
・ご家族の相談や困りごとへの対応
・適切なケアプランの作成
などが保健師の主な役割です。
ケアマネージャーや社会福祉士と連携をとりながら高齢者のニーズに応えていきます。
高齢化が加速する今後はより一層、地域包括センターでの保健師の需要が高まるでしょう。
企業・事業所
企業や事業所で働く保健師を産業保健師といいます。
企業の医務室に常駐し、雇用者や従業員の健康をケア・指導する役割です。
職員の健康管理のために、健診、健康指導やストレスチェック、相談対応などの業務を行います。
近年ではメンタルヘルスに力を入れている企業も多いため、職員の心の病気に対応できるスキルも求められます。
他にも、労災対策や海外出張から戻った職員の感染症対策なども重要な業務です。
教育機関
私立の小中高、専門学校や大学の保健室で働く保健師を学校保健師といいます。
公立の小中高は養護教諭の資格を持っていなければ就く事はできません。
勤務している学校の生徒や職員の健康管理・指導を行います。
けがをした際の応急処置やメンタルヘルスケア、性教育なども業務に含まれます。
【種類別】保健師の求人を探す方法
参考までに、保健師の求人の探し方についてもご紹介しておきます。
職業は同じ保健師でも、勤務先によって求人の探し方は若干の違いがあります。
行政保健師
保健師の中で最も人数が多い行政保健師。求人数も最多です。
市区町村の保健センターや役所などの求人が多く、インターネット検索やハローワークでも仕事探しができます。
各自治体のサイトで募集されていることもありますのでチェックしてみましょう。
一点注意点としては公務員としての勤務となるため、まずは公務員試験を受けなければいけません。年齢制限にも注意しましょう。
募集要項、勤務条件をよく確認して応募してください。
安定した職場で働きたいという方に人気があり、プライベートを重視したい方にもおすすめです。
病院保健師
病院保健師の求人は総合転職サイトでももちろん探せますが、おすすめは医療系転職サイトの利用です。
医療系専門サイトの場合、もちろんですが業界に特化しているため一般の転職サイトよりも求人数が豊富です。
保健師に絞って求人を探せるサイトもあって便利です。
また医療業界に特化した転職エージェントを利用すれば、非公開求人を紹介してもらえる場合もありますのでぜひ利用してみてください。条件に合わせていくつかの求人をピックアップしてもらえますので忙しい方にもぴったりです。
業界に詳しいアドバイザーが親身に相談に乗ってくれますし、条件交渉などもしてもらえるのもメリットです。
産業保健師
基本的には土日が休み、夜勤なし、福利厚生が充実しているといった理由から大変人気があります。人気の職種でありながら求人数は非常に少ないため競争率は非常に高いです。産業保健師として転職するためには、転職エージェントの利用や知人の紹介などが最も有効です。採用枠も少なく、経験者を求めているところが多いため一般公開されにくい求人のためです。転職エージェントの非公開求人として紹介されていることが多いため、産業保健師の求人を探してもなかなか見つからないという方はぜひ利用してみてはいかがでしょうか?★産業保健師の求人を見てみる 学校保健師
学校保健師の求人は産業保健師同様に非常に少ない傾向です。
インターネットでの求人検索やハローワークを活用しましょう。
学校のホームページで募集されることもあるようです。
こまめに求人をチェックし、タイミングを逃さないようにしましょう。
なお、保健師免許しか持っていない場合は勤務先が私立の学校に限られます。どうしても学校保健師として働きたい場合には、養護教諭の免許を取得して応募できる求人を増やすのも一つの手です。
保健師の給料事情
保健師の給料は職種別で多少の差があります。■行政保健師の給料
公務員になりますので、在職年数、等級によって昇給していきます。平成30年4月1日地方公務員給与実態調査結果によると、看護・保健職の給料は月給は301,760円、地方手当なども含めた給料は321,227円となっています。年収は500万円程度の見込みです。ただし全国平均ですので、地域や在職年数などによる差はあるでしょう。出典: 第1表の1 団体区分別,男女別,会計別,職種別職員数及び平均基本給月額 (全地方公共団体 男女計)■病院保健師の給料
厚生労働省の発表によると、介護・福祉施設に勤務する看護職員(看護師、保健師、准看護師)の年収は、常勤:508万円、非常勤:234万円となっています。ただ職種、経験年数など全ての平均になりますので、あくまで目安としてお考えください。また看護師ワーカー編集部調べ(※)では、月収20〜25万円程度、年収350〜400万円スタートの求人が多いという調査結果でした。働く地域や病院の規模によって大きく差があるようです。出典:平成29年障害福祉サービス等経営実態調査|厚生労働省https://www.e-stat.go.jp/stat-search/files?page=1&toukei=00450091※求人検索エンジンデータより独自に算出■企業保健師の給料
企業保健師の給与額に明確な基準はなく各企業で異なります。企業によっては年収600万円以上というところもあり、行政保健師、病院保健師よりも高収入を実現できる可能性があります。■学校保健師の給料
年収は、調査の結果(※)他の3職種の保健師と比較すると低い傾向です。地域によって差がありますが、月収は20〜25万円あたりが相場。年収にして350万円〜400万円程度が見込めるでしょう。※求人検索エンジンデータより独自に算出 保健師に向いている人は?
では最後に、どんな人が保健師に向いているのかお伝えします。下記の特徴をぜひ参考にしてみてください。保健師に向いている人の特徴
・人とコミュニケーションが得意・子どもが好き・思いやりがある・問題解決力がある・責任感がある・根気強い保健師の仕事に求められるのは、コミュニケーション力、観察力です。お年寄りから赤ちゃんまで幅広い年代の人たちの健康指導を行っていかなければならない保健師。うまくコミュニケーションをとりながら、日々のちょっとした変化に気づけるかどうかが非常に重要なポイントです。また責任感と、自ら課題を発見し解決のための道筋を立てられる能力が求められます。病気予防や健康促進といった保健師の仕事は、データを収集・分析しながら中長期的に取り組んでいく必要があるため、根気強さや粘り強さも必要になります。 まとめ
◆保健師になるには
・まずは看護師免許の取得・その後、保健師免許の取得という流れになります。 看護師免許を取得後、保健師養成校で履修、国家試験に合格することで保健師免許を取得できます。看護師資格から目指す方には少し遠い道のりになりますが、仕事内容だけでなく、ワークライフバランスや収入面でも魅力的な保健師の仕事。ぜひ、前向きに検討してみてください。関連記事