自分の強みがないことへの不安や待遇面での不満、結婚や出産と言ったライフイベントがあったときの働き方など、ある程度経験を積んだ看護師の方々がキャリアについて悩む理由はさまざま。
その中には今後のキャリア形成のために、専門看護師や認定看護師の資格を取ろうと考えている方もおられると思います。
しかし、
「本当に資格を取って給料が上がるの?」
「実際のところ資格を取るのにお金と時間はどれくらい必要なの?」
「将来的にも役に立つ資格なの?」
と気になっていることがたくさんあるのではないでしょうか。
そこで今回は、専門看護師・認定看護師の資格を取得するのに必要な時間とお金、資格を取ってから給料をアップさせるポイントや資格取得費用の自己負担を軽くする方法までを詳しく紹介します。
専門看護師と特定認定看護師の資格は今後のキャリアアップに有利になる?
「専門看護師」「特定認定看護師」の資格を取得することでどのようなメリットが生じるのでしょうか。基本的には以下のようなことが挙げられます。
✓高度な知識とスキルを身につけることができる
✓やりがいが増えて活動範囲が広がる
✓資格取得することで昇進、昇給が見込める
✓転職、再就職の際に有利に働く
どちらの資格も取得することでさらなるキャリアアップに繋げることができます。「小児看護専門看護師」「集中ケア認定看護師」といったように各看護の分野名を名乗ることができますし、大きな病院であれば身につけた知識とスキルを活かして看護技術の提供や患者さんと家族のケア、病棟の環境づくりにも貢献できることでしょう。
さらに、医療機関によっては昇進・昇格・手当が支給されるところもあり、それにより給料アップが見込めます。
資格を取るために必要な費用と時間
専門看護師の場合
専門看護師資格を取得するには修士課程を修了することが要件となっているため、2年間大学院に通い単位を取得します。(もちろん、まずは大学院入試に合格するための勉強もしなければいけません)
入試検定料のほか、入学金・授業料などで年間約100万円強、2年間で200万円ほどの費用が必要となると考えておきましょう。
さらに専門看護師認定審査を受けるにあたり、認定審査料・認定料がそれぞれ5万円、5年ごとの更新にも5万円の審査料と認定料がかかります。
特定認定看護師の場合
専門の教育機関にて6~8か月程、特定認定看護師教育を受けます。特定認定看護師教育を実施している機関は医療・看護センターや教育センターがほとんどですが、こちらも入学試験があるので検定料を支払わなければいけません。そこに入学金と授業料が加わり、約70~80万円の費用支払いを見込んでおいた方が良いでしょう。さらに2020年に移行する特定認定看護師のカリキュラムには、特定行為研修が追加されます。指定研修機関や特定行為区分により異なりますが、費用は約30万円~100万円程度かかる見込みです。専門看護師も特定認定看護師も、実習費が授業料に含まれているかどうかは大学院・各所教育機関によって違います。含まれていない場合は年間約10万円~実習費がかかりますので、希望する分野の授業を実施している大学院・機関の募集要項をよく確認して備えておきましょう。どちらの場合も、入学金・授業料以外に“各々の状況に応じてかかる費用”というものがあります。例えば、指定の大学に通うため遠方から引っ越してくる場合、家賃や引っ越しの費用のほか宿泊費などがかかります。ほかにも参考書籍代やノートパソコン、試験を受けるための交通費など、現在の状況に応じて何が必要かあらかじめ洗い出しておきましょう。どちらもかなりの高額となりますが、病院によっては支援制度や各種奨学金が利用できるところもあるので一度勤務先に確認してみましょう。
一番気になる!資格を取ってからの給料と将来性
資格を取得したら、待遇面で何が変わるの?
ここまで多くの費用と時間をかけて取得するなら、資格を取ったあとの待遇は格段に上がってほしいもの。しかし、下記のデータによると、2015年時点で6割前後の専門看護師・認定看護師が「資格を取得した後、待遇に変化はなかった」と回答しています。(参考:公益社団法人 日本看護協会 労働政策部「協会ニュース Vol.570(2015.1.15)」) 実は、専門看護師・認定看護師ともまだ新しい資格であるため処遇が確立されておらず、給料面での評価は追い付いていないのが現状。しかし、特定の分野に長けた看護師を必要としている病院であれば待遇が良くなる可能性は高く現に国立病院機構や医療法人系の病院では手当の支給率が高くなっています。(出展元:日本看護協会「2012年 病院勤務の看護職の賃金に関する調査報告書」) 現在の勤務先にどの分野の資格が必要とされているか、待遇の変更はあるかなどを事前に確認しておくか、専門分野の科を有する病院へゆくゆくは転職を考えるのが良策といえるでしょう。
共に登場してまだ20年ほどの資格ですが、医療の細分化がより進むこれからの時代において必要とされる役割なので、今後の処遇の改善が期待されます。
分野によって手当の支給額は変わるの?
この図から、訪問看護や治療法が確立されていない認知症・脳卒中などの病状に携わる認定看護師の分野では手当の平均支給額が比較的高くなっていることがわかります。
もし、そういった患者さんのケアに関心を持っている・力を入れたいと思っているなら早めにこれらの分野の認定看護師資格を取得しておくことがおすすめです。
また、専門看護師の場合、地域との連携や研究といった業務柄、日勤時間帯に活動することが多くなるので勤務先によって夜勤が免除されることもあります。
看護師を長く続けたいけれど働き方を見直したいという方にとっても、専門看護師はキャリアアップとライフワークバランスの両方が叶う資格であるといえます。
現役看護師が資格取得を目指すには…
働きながら資格取得は目指せるの?
専門看護師であれば、2年間、認定看護師であれば半年のあいだ日中に教育を受ける必要があるため、実際のところは病院勤務をしながら資格取得をすることは困難です。
また、大学院・教育機関ごとに取得できる分野が決まっており、中には受講できる場所が全国に数カ所しかない分野も存在します。
取得したい分野の大学院や教育機関が地元になかった場合は近隣へ引っ越しをして通わないといけません。
病院の通常業務から離れることを前提として考えた方が良いですが、病院によっては出張・休職扱いで給料の支給や身分の保障(社会保険料の負担など)を支援する“資格取得支援制度”を実施しているところがあります。
「資格取得支援制度」ってどんなもの?
資格取得時に必要な費用を捻出するのが難しいという方のために、授業料や入学金の一部を補助する「資格取得支援制度」を設けている病院があります。
例えば、
【A病院の場合】
研修中の給与、賞与の保障は無いが最高200万円を無利息で貸し出す
職免で身分を保障する
【B病院の場合】
基本給の3分の2を支給し、授業料の2分の1を助成する
研修中は休職扱いにする
【C病院の場合】
研修中の給与、賞与は変わらず支給する
入学金、授業料助成し最大10万円まで費用を援助する
といったように、各病院によって制度の内容が異なります。
一方で、「資格取得後5年は支援を受けた病院で勤務すること」「支援を受ける病院において必要な分野であると判断されること」などの条件が課されることが多いですが、自己負担金を減らせるのは大きなメリットです。
また、病院によっては5年ごとの更新にかかる費用を補助してくれる制度もありますので、それらも含めて勤務先に確認してみましょう。
資格を取るのに、奨学金は使える?
学費の貸付を行なう奨学金も資格取得の際に利用できますが、教育機関や分野により利用できる奨学金が違ったり、複数の奨学金の併用が不可のものもありますので注意が必要です。
病院独自の奨学金もありますが、資格取得支援制度と同様ほとんどのものに「取得後2年間は勤務する」などの条件があります。
日本看護協会や自治体などが運営する奨学金の中には、一定条件を満たすと返還不要となるものや給付型のものもありますので、ぜひ自分に合った奨学金を探してみてください。
貸与型例)【日本看護協会 認定看護師教育課程奨学金】応募資格下記の要件をすべて満たしていること・保健助産師看護師法により保健師・助産師または看護師の免許を有すること・認定看護師教育課程に在籍していること(受講許可も含む)・認定看護師教育課程修了後、保健医療分野の現場に2年以上就業する意思があること・他の奨学金を利用していないこと貸与額総額120万円以内貸与期間認定看護師教育課程の正規最短修業期間を限度とする返還認定看護師教育課程を修了した翌月から起算して3カ月後から一括または割賦により全額を返還。返還期間は24カ月以内。※令和2年度応募要綱(令和2年10月現在)(公益社団法人 日本看護協会ホームページ 「認定看護師教育課程奨学金」より)☑複数の奨学金制度と併用できない☑認定看護師教育課程を修了した翌月から3カ月後に返還スタート。2年間で全額返還しなければならない
このように、奨学金は返還期間や資格取得後の就業期間が定められている場合が多いので、自分の将来のライフプランをよく考えて利用を検討するのがベストです。
「専門看護師」「特定認定看護師」どちらの資格を取るべき?
「せっかくだから自分が活躍できる資格を取りたいけれど、どちらを取った方がいいのかわからない」という方は、資格や仕事に対する考え方とそれぞれの資格取得の条件を整理してみましょう。■専門看護師【向いている人】✓時間や費用がかかっても、看護・医療福祉全体に携わりたい✓将来的に講師や看護学の教員など、教育指導の役割を担いたい✓多くの人と関わることを研究して論理的に考えることが苦ではない【取得に必要な期間】2年間【取得場所】大学院【取得費用】約200万円※大学院によっては、実習費用が授業料に含まれるかが異なるので要確認。■特定認定看護師【向いている人】✓短期間で専門資格を取得したい✓主任・師長などの指導の役割を目指したいが、現場も離れたくない✓幅広い部署を経験するよりは、ひとつの分野を極める方が向いている【取得に必要な期間】6~8か月+e‐ラーニング【取得場所】医療・看護関係の大学または医療センターなどの教育機関【取得費用】約200万円※大学によっては、実習費用が授業料に含まれるかが異なるので要確認。★この記事もおすすめ★
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専門看護師・認定看護師ともに、今は収入アップなどの物理的なメリットよりも、「看護師として成長したい」「高いスキルが欲しい」といった思いや「自分がなりたい看護師の姿」「看護師としてやりたいこと」を第一にして取得してほしい資格です。
あなたが得たスキル・知識は患者さんだけではなく、看護職や医療・福祉の現場全体の質を底上げさせることができるので、きっとモチベーションや将来的な評価へと繋がっていくでしょう。
どちらの資格においても費用面がネックであるのなら、資格取得支援制度や奨学金を積極的に活用していきましょう。
もし勤務先の協力が得られなければ、資格取得支援制度がある病院へ転職するのも一つの手です。
今以上のやりがいが得られるほか、今後の勤務先の選択や働き方の幅を広げることができる専門看護師・認定看護師の資格。
キャリアアップやライフプランを考えるなら、ぜひチャレンジしてみてください!