1.手話通訳士とは?
手話通訳士は、聴覚に障害をもつ人が周りの人と円滑にコミュニケーションを図れるよう「手話」を活用し、言葉を目に見える形に変換する「通訳」を行います。
現在国家資格ではなく、手話通訳そのものは特別な資格を保有していなくても自身に知識があれば行うことが可能です。
しかし、公的な場面で手話を行う場合は厚生労働省が認定する手話通訳士の資格が必要です。
都道府県の「手話通訳者」や、市町村の「手話奉仕員」として活動している人もいますが、あくまで厚生労働省が認定した試験に合格し、登録した人のみが「手話通訳士」として名乗ることを許されています。
2.手話通訳士の仕事とは?
聴覚障害をはじめ、様々な人が受診する外来では聴覚障害のある方と筆談でコミュニケーションを図る病院が多いですが、それだけではうまく意思疎通ができない場合も多く、近年の課題となっています。
手話通訳士は、聴覚障がい者の方が円滑に医師から診察を受けられるように手話を通じて、サポートします。また、入院中の患者さんへも手話をつかって会話できることで相手に安心感を与えることができます。
聴覚障害や言語障害の患者さんに対しての心のケアや治療説明、他にも聴覚障害をお持ちの方向けへセミナーや講習会を実施する際の通訳として活躍を期待されている仕事です。
3.手話通訳士になるには?
【受験資格】20歳(受験日の属する年度末までに20歳に達する者を含む)以上の者。 【試験会場】東京・大阪・熊本(学科、実技共に各試験地の同一会場で実施)【資格取得までの流れ】(1) 受験申込書の記入・受験手数払込み(ATM可)《受験手数料:18,000円》(2) 受験申込書受付・郵便局の窓口にて簡易書留郵便で送付・学科試験の免除申請をする場合もこの間に提出(3) 受験票受け取り(4) 試験学科試験/実技試験(5) 合格通知後 登録申請《登録手数料:8,000円》【試験内容について】《学科試験》・すべて四肢択一方式・障がい者福祉の基礎知識(20問)・聴覚障がい者に関する基礎知識(20問)・手話通訳のあり方(20問)・国語 (20問)《実技試験》・聞き取り通訳(音声による出題に対して手話で解答)・読み取り通訳(手話による出題に対して音声で解答)【資格団体】社会福祉法人 聴力障害者情報文化センター(HP→ http://www.jyoubun-center.or.jp/) 4.手話通訳士をとるのは難しい?
手話通訳技能認定試験(手話通訳士試験)は、そのほかの手話通訳関連の資格に比べ難易度の高い試験といわれています。
合格率は近年10~20%と低い結果になっています。
しかし、通信制の学校や講習などさまざまな勉強の場がありますので、自分のライフスタイルに合わせてしっかり勉強して挑むことをおすすめします。
20歳以上であれば誰でも受験できますが、実際は数年の実務経験を経てから挑戦したほうが確実でしょう。
5.手話通訳士をとる事のメリット・デメリット
難易度が高い資格で手話通訳士の全体人口はまだまだ少なく「事例が少ない」という点では苦戦することもあるかもしれません。
手話通訳士の資格だけで仕事に就くのは現状難しいでしょう。
しかし医療現場に勤めていれば、聴覚障害や言語障害のある方へのセミナーや講習会といった手話が必要な場面に出くわすこともあります。
その際には手話通訳士の存在が必要になります。セミナーや講習の開催側として携わることで学べる知識も倍増するでしょう。また、患者さんとのコミュニケーションツールとしても活用できます。
医療や介護の現場では何かと手話通訳士の資格が重宝されるので、そのような機会に積極的に能力を発揮することで周りからの評価もあがり、昇格につながりやすい場合もあります。
6.手話通訳士の現状と今後
時代と共に障がい者の社会参加が進む現在、正しい知識とスキルをもつ手話通訳士の需要は確実に高まっています。
その一方で、手話通訳士の資格取得は簡単なものではなく、資格を得るためには難関を突破しなくてはなりません。
そのため、日本では手話通訳士人口はまだまだ少なく、待遇面でも厳しい業界であるのが現状です。また、近年では音声をリアルタイムにテキスト変換できるような技術が開発されています。この技術が広まることにより、手話通訳士の仕事にどう影響をもたらすのかは未知の領域です。
しかし、手話は耳の不自由な人にとって唯一自由に扱うことのできる言語です。
手話によるコミュニケーションがなくなることはまずあり得ないでしょう。
手話通訳士は患者と接する機会が多い看護師のスキルアップの1つとしておすすめの資格であり、医療従事者だけではなく様々なシーンで必要とされる資格です。
聴覚障がい者の社会参加がどんどん広がる中で看護師が手話通訳士の資格を取得することは患者さんと接するだけでなく、聴覚障害を持っている人が医療業界で仕事をするための道を切り開くことにもつながるのです。
聴覚障がい者が生活しやすい環境づくりがすすめられている今、将来的に活躍がおおいに期待できる資格です。