1.登録抗酸菌症エキスパート/認定抗酸菌症エキスパートの資格とは
看護師や薬剤師などの医療従事者を対象とした抗酸菌症(結核および非結核性抗酸菌症)治療の専門知識と技術向上が目的の資格で、日本結核病学会によって認定されます。
2014年に設立された資格制度のため取得者数は少ないですが、結核病床を有する病院の看護師に限らず多くの人が抗酸菌症の治療に携わるためにも取得が望ましい資格です。
2.登録抗酸菌症エキスパート/認定抗酸菌症エキスパートはどんな仕事?
抗酸菌症治療に携わる医療チームの一員(看護師、准看護師、保健師、理学療法士、栄養士・管理栄養士、薬剤師、診療放射線技師、臨床検査技師など)が抗酸菌症の理解を深めて治療にあたることで、経過が長くかかることによる治療脱落の防止や菌の耐性化率低下、発症の可能性がある患者の抗酸菌症の早期発見を期待されています。
3.登録抗酸菌症エキスパート/認定抗酸菌症エキスパートになるには
資格試験はありません。申請資格を満たし、日本結核病学会が指定した講習会や学術集会に参加して必要な単位を取得し申請すれば資格が取得できます。
【申請資格】
・看護師や准看護師として3年以上の職歴があること
・登録抗酸菌症エキスパートは日本結核病学会の会員でない場合、申請時に学会への入会が必須。
必要単位数は50以上
・認定抗酸菌症エキスパートは日本結核病学会の会員歴が5年以上、必要単位数は80以上
【取得までの流れ】
申請の受付期間:5月上旬~ 9月末日まで
◆資格申請の申込方法
以下4点を日本結核病学会の認定制度審議委員会に提出します。
(1)登録/認定 エキスパート新規申請書(ホームページよりダウンロード)
(2)看護師免許証もしくは准看護士免許証のコピー
(3)単位取得証明書(ホームページよりダウンロード)
(4)申請料5,000円を振込のうえ振込受領書のコピー
申請書と証明書のダウンロード、振込先・送付先については一般社団法人日本結核病学会のホームページを参照。
◆資格の交付と登録
登録・認定されると登録証もしくは認定証が交付され、学会誌とホームページに名簿が掲載されます。認定料5,000円が別途必要です。
登録・認定期間は資格を認定された年度の3月1日から5年間で更新料が5,000円です(更新条件あり)。
4.登録抗酸菌症エキスパート/認定抗酸菌症エキスパートをとるのは難しい?
申請資格をクリアし、単位を取得して申請すれば資格が得られるので比較的簡単といえます。登録抗酸菌症エキスパート資格に必要な50単位は、生涯教育セミナー1回と日本結核病学会の学術集会に1回参加すれば取得できます。
認定抗酸菌症エキスパートは学会の会員歴が5年以上必要なため時間はかかりますが、どちらも要件を満たせば取れる資格だけに他者との専門性の差がつきやすいです。
“抗酸菌症治療の専門知識と技術向上”という本来の目的を忘れず、単位を取るためだけのセミナー参加にならないよう真剣に取り組むことが重要です。
5.登録抗酸菌症エキスパート/認定抗酸菌症エキスパートをとることのメリット・デメリット
メリットは抗酸菌症を学ぶ機会が少ないため、上記のようなセミナーや学会へ参加できることです。抗酸菌症の専門医や呼吸器内科医がいない病院で患者が結核を発生すると、対応法がわからず混乱することが予想されます。
看護師が抗酸菌症に関する知識や技術の習得、病態への理解を深めることで的確な対応を取ることができます。
資格の取得で抗酸菌症治療チームのリーダー的役割を担うことも考えられます。メンバーに正しい知識や対応方法を指導することでチーム全体のレベルアップにつながります。また病院や施設によっては資格手当が支給される場合もあります。
デメリットは特にありません。
6.登録抗酸菌症エキスパート/認定抗酸菌症エキスパートの現状と今後
結核の発生件数は大流行していた時代に比べれば劇的に減少しています。
しかし罹患率や死亡率は先進国の中でも依然高い状態で、現在でも年間18,000人程度の新規患者が発生している重大な感染症です。
結核病床を有する病院のみならず一般病院でも結核を正しく診療することが求められています。
加齢による免疫力の低下から結核患者に占める高齢者の割合が高まっていることも指摘されています。今後も続く高齢化社会において、登録/認定抗酸菌症エキスパートの資格を取得することは看護師としての活動の場を広げるためにも有効です。