1.新生児蘇生法(NCPR)インストラクターの資格とは
新生児蘇生法インストラクターとは、新生児蘇生法に関する指導者に与えられる資格です。新生児の蘇生に関する技術や理論などを講習会で指導することができるようになります。2007年、「すべての分娩に新生児蘇生法を習得した医療スタッフが立ち会うことができる体制」を確立するために、新生児蘇生法(NCPR)普及事業がスタートしました。日本周産期・新生児医学会が中心となって実施しています。その一環として、新生児蘇生法(NCPR)インストラクター資格があります。新生児蘇生法「専門」コースインストラクター養成講習会(筆記テスト含む)の受講後、認定の手続きをすることで資格取得
となります。略称NCPRは「Neonatal Cardio-Pulmonary Resuscitation(新生児蘇生法)」の頭文字です。 2.新生児蘇生法(NCPR)インストラクターはどんな仕事?
出生時、新生児がもしも胎外呼吸循環をうまくできずに心肺停止になった場合、速やかに心肺蘇生処置を行わなければなりません。命の危機から新生児を救うためには、迅速かつ適切に心肺蘇生を行うことがとても重要になります。そのために必要な新生児蘇生法の理論や、気管挿管、薬物投与といった難しい技術を習得し、それを医療関係者に指導していくことが新生児蘇生法(NCPR)インストラクターの仕事
です。 3.新生児蘇生法(NCPR)インストラクターになるには
●受験資格
下記の4つを満たしている必要があります。1. 「専門コース」の修了認定者である2. 最新のガイドラインを履修済みである3. 公認講習会におけるインストラクター補助実績が2回以上ある(内、1回は専門Aコース必須)4. インストラクター1名以上の推薦がある●取得までの流れ
1. 新生児蘇生法「専門」コース講習会・筆記テストまずは専門コースの講習会と筆記テストを受けます。■日程・場所全国の病院で随時開催■対象者周産期医療従事者■受講料5,000~10,000円程度(講習会により異なる)■内容気管挿管、薬物投与を含めた「臨床知識編」「実技編」で構成される高度な新生児蘇生法の習得。講義・演習あわせて標準5時間。講習会後に行われる筆記テストを合格すると修了認定を受けられます。認定料:8,000円2. 新生児蘇生法「専門」コースインストラクター養成講習会・筆記テスト専門コースを受講し認定を受けたら、インストラクター養成コースに進めます。■日程・場所全国の病院で随時開催■対象者周産期医療従事者■受講料14,000円別途、「インストラクターマニュアル(4,000円税抜)」の購入が必要。■内容インストラクターとして講習会を開催するための知識・実技実習に関する指導法の習得。講習時間は5時間半。講習会で行われる筆記テストに合格すると、所定の手続きを経て認定証が発行されます。認定料:8,000円●資格更新について
3年に1度の更新手続きが必要です。e-ラーニングか講習会を受講の上、事務局へ認定更新申請書を送付してください。なお更新の条件として、有効期限内に、公認講習会において3回以上のインストラクターもしくは開催責任者を担当しなければなりません。■更新料・日本周産期・新生児医学会員の医師および助産師、看護師、その他コ・メディカル:5,000円・学会非会員の医師:10,000円所定の手続きを終えると古い認定期間が切れるまでに、新しい有効期限の修了認定証と認定カードが発行され、自宅に届きます。4.新生児蘇生法(NCPR)インストラクターの資格をとるのは難しい?
費用の目安:4~5万円取得期間:数ヶ月認定者数:2821名(2021年9月末現在)出典:日本周産期・新生児医学会新生児蘇生法インストラクターは、講習後の筆記テストに合格しなければ認定を受けることができません。新生児蘇生法には高度な手技と知識を要します。インストラクターはそれを教える側の立場になりますので、内容を隅々まで理解していなければ務まりません。難易度や合格率は公表されていないのですが、講習を受けるだけで簡単に取得できる資格とは考えない方がよいでしょう。講習の内容をしっかり理解するとともに、テキストで事前に学習しておくことが大切です。また最新のガイドラインについても把握しておく必要があります。 5.新生児蘇生法(NCPR)インストラクターの資格をとることのメリット・デメリット
●メリット
新生児蘇生法の技術・知識を身につけるなら専門コースを修了するだけでもよいのですが、インストラクターの資格を取得すれば自ら講習会を主催して、より多くの医療関係者に新生児蘇生法の重要性を伝え広めることができます。他のスタッフへ向けた勉強会などを任される機会も増え、職場でのキャリアアップに繋げることもできるでしょう。●デメリット
インストラクターとして講習会を行うために、スケジュール調整などが必要になります。講習会は自施設だけでなく、インストラクターがいない地域の出張講習会に出向かないといけない場合もあります。そのため職場のサポートが欠かせません。また、地域によっては資格を取得してもなかなか活かせない場合もあるかもしれません。6.新生児蘇生法(NCPR)インストラクターの現状と今後
新生児蘇生法(NCPR)インストラクター資格を「機会があれば受講したい」と意欲的に考えている方は大勢いますが、その一方で資格を取ったものの活かせていないという声もあります。
「新生児を蘇生させる技術を持った医療スタッフが全ての分娩で待機できるように」というキャッチフレーズを掲げて創設された資格ですが、インストラクターの数は全国に偏りがあり、地域によっては資格をせっかく持っていても活用する機会が少ないというのが現状です。
その結果、3年後ごとに必要となる認定更新では、未更新者が増えるのではないかという点も危惧されています。
今後も新生児蘇生法(NCPR)インストラクター資格を普及していくにあたって、地域格差をなくしていくことや、看護師・助産師のキャリアパスに有用な資格にしていくことが課題となっています。
そのために、看護職の視点で地域ごとに講習会を開催し、その特性を生かしたフォローアップをしていくことが必要となるでしょう。