1.体外受精コーディネーターの資格とは
体外受精コーディネーターは、不妊治療のひとつである体外受精のプロフェッショナル資格です。日本不妊カウンセリング学会が認定しています。不妊に悩むカップルに対して、体外受精や顕微授精などの高度生殖補助医療(ART:アート)に関する情報提供を行い、最適な不妊治療の選択ができるようにカウンセリングやケアを実践すること
が体外受精コーディネーターの役割です。同学会の認定資格に「不妊カウンセラー」資格もありますが、体外受精コーディネーターはそれよりもさらに専門的な資格で、医師やエンブリオロジスト(卵子や精子、または受精卵を取り扱う生殖医療の専門家)と同等の知識が求められます。難しい資格ではありますが、取得することで、不妊カウンセリング・ケアを行うために必要な高度生殖医療や不妊に関する深い専門知識を身につけることができます。 2.体外受精コーディネーターはどんな仕事?
体外受精コーディネーターの主な職場は不妊治療を行っている産婦人科や専門のクリニックなどが挙げられます。
不妊治療や生殖補助医療(ART)を検討している夫婦の悩みや問題の解決を図るために、さまざまな医療職種間と連携し、調整を行いながら、治療のサポートをしていくことが体外受精コーディネーターの仕事です。
体外受精や顕微授精のような生殖補助医療は大変複雑で、費用や時間もかかり、副作用の不安もあります。そういった懸念事項に対して医師からの説明が十分でない場合には、カップルにとって大きな不安やストレスになるでしょう。
そのような不妊カップルに対して、常に彼らの気持ちに寄り添い、精神面をサポートしていくこともコーディネーターの重要な役割です。
看護師としての専門的知識やスキルはもちろん必須なのですが、それ以上に不妊カップルの精神面のケア、安心して治療を受けられる環境を整えていくこと、最適な選択をできるように支援していくことが求められます。
3.体外受精コーディネーターになるには
●受験資格
・日本不妊カウンセリング学会の会員であること・不妊カウンセラー・体外受精コーディネーター養成講座を3回受講していること・講座の初回受講より5年以内であること・臨床経験は不要※不妊カウンセラーと受精コーディネーターの2つの資格認定を希望する場合は、2つ目の資格認定試験は1つ目の認定を受けた後に少なくとも2年以上をあけて取得することとし、加えてその間に1度は養成講座を受講すること●資格審査の申込方法
認定申請書を公式サイトからダウンロードし必要事項を記入し資料を添付したのち郵送で送付します。※書類審査で通過した方のみ試験がうけられます。書類の不備や、条件の未達などで受験できない場合があります。●試験についての詳細
・筆記試験・面接試験生殖医療やEBM(エビデンスに基づいた医療)、カウンセリング・ケアに関する知識や応用力が求められる試験です。体外受精コーディネーターは生殖補助医療(ART)の高度な知識も必要となっています。開催日:12月~3月開催地:大阪・福岡・東京・仙台受験料:15,000円※筆記試験で不合格の場合は同年度内2回まで受験可能、追加費用なし。※面接試験で不合格の場合は年度内の再受験は不可能。●資格の交付と登録
認定料は受験料に含まれるため必要ありません。●更新
・5年ごとの更新・日本不妊カウセリング学会の点数を30ポイント以上取得していること※ ポイントの詳しい内訳は日本不妊カウンセリング学会の公式サイトで確認できます。日本不妊カウンセリング学会公式サイト
4.体外受精コーディネーターをとるのは難しい?
体外受精コーディネーターの合格率は公表されていませんが、不妊カウンセラーと比べるとさらに難しくなっているようです。
理解しなければならない専門知識が多く、例えば生殖補助医療(ART)の実施法、インフォームドコンセント、染色体異常や遺伝子異常があるカップルへの対応などについてしっかり理解していなければなりません。
先述したように体外受精コーディネーターは医師やエンブリオロジストと同等の知識が求められますが、それを身につけることは簡単ではありません。
患者さんとさまざまな医療職種間をコーディネイトもできる能力も必要になってきます。講座を受講するだけでなく、自主的な学習が不可欠です。
5.体外受精コーディネーターをとることのメリット・デメリット
体外受精コーディネーターの資格を取得することは、まず自身のスキルアップにつながります。
不妊治療、とりわけ体外受精に関しては医師と同等の知識をつけることができ、医療施設や不妊治療専門のART施設などで重宝される存在になるでしょう。
さらに資格を取得していることで給与面でも待遇される可能性があり、スキルアップだけでなく年収アップのために資格取得を希望する看護師も多いです。
また専門クリニックであれば、資格取得補助制度を設けているところもあります。
未経験からキャリアアップしていきたい看護師の方は、そういったクリニックを選ぶのも一つの選択肢だと思います。
6.体外受精コーディネーターの現状と今後
不妊の原因はさまざまですが、加齢も不妊の要因のひとつであることは皆さんもご存じかと思います。日本では近年の晩婚化ともなって不妊治療を受ける人の割合も増加傾向にあります。
特に女性の場合は閉経があり妊娠できなくなるまでのタイムリミットが明確なため、早めに不妊治療を行って赤ちゃんを産みたいと考える女性が多いのです。
そんななかで体外受精を希望する人も増加傾向にありますが、現在体外受精コーディネーターの資格取得者は500名程度しかいません。
そのため体外受精コーディネーターの資格を取得している方は特に重宝されるのです。
世間一般的にはまだあまり馴染みのない資格です。
しかし晩婚化が進むなかで、今後も不妊治療を受けたいと考えるカップルは増えていくでしょう。
さらに2022年の4月から、不妊治療も保険適用となることが決定しています。
体外受精、顕微授精など、これまで全額自己負担だった治療も保険適用になる予定です。
そのため体外受精コーディネーターの需要は今よりも高まり、資格取得者も増加すると期待されています。