1.小児アレルギーエデュケーター(PAE)の資格とは
小児アレルギーエデュケーター(PAE)は、一般社団法人日本小児臨床アレルギー学会が主催するアレルギー専門メディカルスタッフの認定資格です。
PAEはpediatric allergy educatorの略称です。
小児アレルギー診療に携わっている看護師やコメディカル(薬剤師、管理栄養士)が取得できる資格で、アレルギーについての専門的な知識と、患者や家族への指導技術を身につけられます。
高度な知識と指導技術で、アレルギー専門医をはじめとする多職種と協働してアレルギー疾患をもつ子ども達の QOL 向上に貢献していきます。
2.小児アレルギーエデュケーター(PAE)はどんな仕事?
小児アレルギーエデュケーター(PAE)の仕事は、アレルギーを持っている子ども達のサポートです。アレルギー専門病院や総合病院の小児科、調剤薬局などの場で、アレルギーに悩む子どもやそのご家族の相談にのり、一人ひとりの症状に合わせた指導、アドバイスを行います。指導やアドバイスの内容は多様で、例えば、喘息治療に用いる吸入器の正しい使い方、やアトピー性皮膚炎治療におけるスキンケア、食物アレルギー治療での除去食の作り方などについて時間をかけて丁寧に説明します。さらに「食物アレルギーを持つ子どもに食べさせてあげられるお菓子がない」とお悩みのご家族に対して、その子が食べられるお菓子を調べ、売っているお店を教えてあげるといったようなことも仕事のひとつです。小児アレルギーは長期的な治療を必要とするケースが多いことから、家族だけではなく、患者である子ども自身も前向きに治療に取り組むこと(アドヒアランス)がとても重要
だといわれています。そこで、治療管理に加えて、自宅での食事管理や生活管理、セルフケアの方法まで指導しサポートするのが小児アレルギーエデュケーターの役割になります。 3.小児アレルギーエデュケーター(PAE)になるには
●受験資格
1. 看護師、薬剤師、管理栄養士のいずれかの資格を持っている2. 5年以上の臨床経験がある3. 過去5年以内に、小児科のアレルギー専門医による2 年6 ヶ⽉以上の被指導歴がある4. 過去4年以内に、基礎講習会を1回以上受講している5. 過去6年以内に、対象学会の学術⼤会に3 回以上参加している6. 過去4年以内に、認定講習会受講資格試験に合格している※受験資格には、規定年数やその他条件がありますので、必ず公式ホームページを確認して下さい。<詳しくはこちら>日本小児臨床アレルギー学会●取得までの流れ
1. 日本小児臨床アレルギー学会に入会する2. 小児アレルギー疾患基礎講習会を受講する3. 認定小児アレルギーエデュケーター講習会受講資格試験を受験する4. 認定小児アレルギーエデュケーター講習会を受講する5. 認定小児アレルギーエデュケーター試験を受験する6. 認定小児アレルギーエデュケーターの認定証が交付される※認定証は5年ごとの更新が必要です。●学会の入会方法・講習会の申込方法
<学会の入会方法>日本小児臨床アレルギー学会に入会していない方は入会が必要です。ホームページの「入会申込サイト」より申し込み、その後送られてくる請求書で年会費を納付します。■年会費医師:9,000円コメディカル:7,000円賛助会員:10,000円※年会費は変動の可能性がありますので、必ず公式ホームページを確認して下さい。学会入会申込みページ<講習会の申込方法>■小児アレルギー疾患基礎講習会資格取得にあたって最初に受けなければならない講習会です。日本小児臨床アレルギー学会のホームページからWebで申し込みます。受講料:33,000 円(税込)※学会への入会後に申し込みできます。■認定小児アレルギーエデュケーター講習会「認定小児アレルギーエデュケーター講習会受講資格試験」に合格した人だけが受講できます。主に、行動医学に基づいた患者指導技術を学ぶ講習で、演習やグループワークが中心です。Webか郵送での申し込みです。受講料:33,000円(税込)●試験についての詳細
試験は「認定小児アレルギーエデュケーター講習会受講資格試験」「認定小児アレルギーエデュケーター試験」の2つの試験があります。■認定小児アレルギーエデュケーター講習会受講資格試験基礎講習会での内容など専門知識についての筆記試験です。毎年9月上旬ごろに開催されます。認定小児アレルギーエデュケーター講習会に参加するには、この試験に合格しなければなりません。参考図書に指定されているテキストなどを使ってしっかりと勉強し、試験に臨みましょう。受験料:11,000円(税込)■認定小児アレルギーエデュケーター試験この試験は例年、症例報告書での試験となっています。気管支喘息・食物アレルギー・アトピー性皮膚炎の3つの中から1つを選び、症例報告書を提出します。管理栄養士はそれに加えて症例に対する3日間の食事計画(献立)が必要です。症例は原則、認定講習会終了後から複数回の介入を行った症例が求められますので、講習会の前に提出する症例を考えておく事がよいそうです。※詳細は講習会で説明されます。●資格の交付と登録
認定小児アレルギーエデュケーター試験を合格し、手続きが完了すると学会より認定証が交付されます。認定審査料:11,000 円(税込)認定料:22,000 円(税込)●資格の更新について
認定証には有効期限があり5年ごとの更新が必要となります。資格の更新には、・申請書などの書類・規定の単位・認定更新審査料:11,000円(税込)・認定更新料:22,000円(税込)が必要です。4.小児アレルギーエデュケーター(PAE)をとるのは難しい?
小児アレルギーエデュケーター(PAE)の資格を取得するには講習会と試験の合格が必要ですが、その前段階でクリアすべきプロセスがいくつもあります。
まず受験資格(5年以上の臨床経験など)を満たすことから始まり、基礎講習会を受講し、講習会受講資格を得るための試験に合格しなければ、主要の講習会と試験を受けることができません。
資格取得までの道のりは長く、決して簡単とはいえないでしょう。
5.小児アレルギーエデュケーター(PAE)をとることのメリット・デメリット
小児アレルギーエデュケーター(PAE)の認定を受けるためには、非常に多くの専門知識と技術が必要となり、資格を取得した看護師の指導レベルは格段に上がるでしょう。
またノンアドヒアランス(服薬や治療のルールなどを遵守しない)患者の対応を任せてもらえるなど、業務の幅も拡がる可能性が高いです。
これまで専門的な指導ができなかった患者に対して、的確なアドバイスでサポートできるようになることは、資格を取得する大きなメリットといえます。
さらに小児アレルギーの治療に対する理解が深まることで、高度なチーム医療ができるようになり、スキルアップ、キャリアアップを目指す方にとっては、おおきなやりがいにつながるのではないかと思います。
デメリットは難易度が高く、学習時間の確保が必要なことです。
またクリアすべきプロセスが多く、資格取得までに時間がかかります。
特に若手の看護師やコメディカルは、受験資格として臨床経験が必要になることも念頭に入れて資格取得を目指しましょう。
6.小児アレルギーエデュケーター(PAE)の現状と今後
制度ができた2009年からこれまで(2021年10月時点)に500名以上の小児アレルギーエデュケーターが誕生しています。
資格取得者はアレルギー専門の病院や総合病院の小児科、クリニック、調剤薬局などさまざまな職場で活躍できます。
小児アレルギーといえばかつては小児ぜんそくが代表的でしたが、最近ではアトピー性皮膚炎や食物アレルギー、アレルギー性鼻炎の患者も増加傾向にあり、アレルギーを持つ子ども達の全体数も増えています。
繰り返しになりますが、小児アレルギーの治療には患者さんが症状や治療方針をよく理解し、自主的に正しい治療を継続する「アドヒアランス」の向上が欠かせません。
そのためには子ども達やそのご家族に対して、正しいケアやアドバイスができる指導者が必要です。
小児アレルギーエデュケーターの人数はまだ少なく、今後も需要が高まることが予想されます。難易度は高いですが、スキルアップを目指す看護師の方はぜひ前向きに取得を検討されてみてはいかがでしょうか。